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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第66話:Understanding

機能停止寸前のドップラーのメインプログラム復旧は流石のケインの技術力を持ってしてもやはり容易ではないようだ。

「ケイン博士、大丈夫かな?」

「爺を信じろ、俺達にはそれくらいしか出来ん」

「ケイン博士なら大丈夫だよ。あの人はカウンターハンター事件の時も凄い早業でワイヤー・ヘチマールの修理を終えた人だし」

ルインはドップラーの乗っていたメカニロイドの残骸を回収して使い、ゼロの応急処置をしながらケインの修理を見守る。

ゼロもエックスもケインなら大丈夫だと信じて、静かに見守る。

[ミー]

サイバーエルフはケインの隣に移動し、ドップラーに力を使って傷を癒し始める。

「お、すまんな。助かるぞい」

「驚いたな、あんな治療能力まであるなんて」

「うん、でもまだ赤ちゃんだから強力な力は使えないの…よし、ゼロ…これで終わりだよ」

「ああ…すまん。これで自分の身を守るくらいは出来そうだ。ただ、動力炉に異常が出ちまったからかバスターが使えん…」

同時にバスターと同じ回路を使っていたアースクラッシュも使えなくなったようだ。

しばらくはZセイバーのみの戦闘になるだろう。

ケインの修理を見守ったエックス達だが、やがてドップラーのメインプログラムの復旧が終わり、ドップラーが再起動した。

「やった、再起動したよ」

「そのようだな」

「気が付いたかの、ドップラーよ」

再起動により、意識を取り戻したドップラーが目を見開く。

「ケイン……?貴様、何故生きておる…わしは……死んでなかったのか……?」

ドップラーが自分の体を見ると、ようやくケインに修理されていることに気付いた。

「ぐっ!!修理をしておるのか!!」

「ジーロン弾作動前にお主のメインプログラムを復旧させるのは骨じゃったわい」

「ふっ!貴様も科学者の端くれなら完全回復は99%不可能と分かるだろう。無駄なことを…わしの命令1つでジーロン弾は作動するのに…」

「分かっとる。けどお主はせんなあ~~~」

ドップラーの言葉にケインはさらりと言い放つ。

そしてドップラーはジーロン弾の作動はしないとも言う。

「何故だ!?」

「今のお主ならわしらの困る姿が楽しくって仕方ないじゃろうからな、フン」

「ちっ!そうだ!!その通りだ!!愉快だ!!愉快だな!!もっともっと楽しませてもらうぞ!!」

ドップラーの目が光ったのと同時に大量のメカニロイドが飛び出してきた。

「うわあ、出て来たよ」

「チッ、数だけはいるようだな」

あまりの数にルインとゼロは表情を顰めた。

「そやつらの動きを阻止出来るかな」

「お主、ドップラーを寝かせてくれんか」

[ミー]

「むぐう」

ドップラーの顔面にサイバーエルフが体当たりを喰らわせて強制的に寝かせる。

「あ~、お主らすまんが一時凌いでくれや」

「はい」

「後で美味しいお菓子をご馳走して下さいね」

ケインの言葉にエックスとルインは即答して、ゼロの方を見遣る。

「ゼロ、君はケイン博士を頼むよ」

「もしそっちに行ったら対処お願いね」

「………俺は爺のお守りか」

エックスとルインに頼まれたゼロは微妙な表情でケインとドップラーの前に立つ。

「久しぶりだね、一緒に戦うの」

「ああ、そうだな。1体も博士に近付かせないようにするんだ…病み上がりの君には悪いけど…」

「大丈夫大丈夫、何もしない方が却って辛いこともあるしね」

エックスはシュリンプァーのスピニングブレードを選択し、ルインはPXアーマーに換装するのと同時に構えた。

「スピニングブレード!!」

「十字手裏剣!!」

エックスのチャージスピニングブレードとルインの巨大手裏剣がメカニロイド達を薙ぎ払うように斬り裂いていく。

上空のメカニロイドにはルインがLXアーマーに換装するのと同時にハルバードをチャージする。

「フリージングドラゴン!!」

氷の龍が投下された爆弾を全て防ぎ、エックスもビートブードから得た特殊武器を展開した。

「バグホール!!」

上空で展開したチャージバグホールによる小型ブラックホールはメカニロイドを吸い込み、消滅させる。

「ダブルチャージショット!!」

Xアーマーに切り替え、バスターのチャージを終えるとチャージショット二発をメカニロイドが密集している場所に発射した。

「ルイン、そのアーマーは?」

「私の新しいアーマーだよ。エックスと似ているからお揃いだね」

「あ、うん…」

「?」

何故か照れ臭そうなエックスの表情にルインは疑問符を浮かべた。

「トライアードサンダー!!」

チャージトライアードサンダーを使い、電撃を纏わせた拳で地面を殴ると衝撃と電撃の二段攻撃で地上のメカニロイドを粉砕していく。

「エックスもアースクラッシュやグラウンドブレイクみたいなことが出来るようになったんだね」

「特殊武器のチャージだからあまり燃費は良くないけどね」

「これは私も負けられない。プラズマサイクロン!!」

HXアーマーに換装するとダブルセイバーのチャージ攻撃を繰り出す。

「………」

圧倒的な力でメカニロイドの大軍を相手にするエックスとルインを見つめるドップラーだが…。

「駄目じゃぞい。お主、今起きてエックスとルインのデータを集めようと考えたじゃろ。ほれ、ちょいと手を退かせ、動いていてはこの子の治癒能力も無意味になるしの」

[ミーミー]

ケインの言葉を肯定するようにふよふよと上下するサイバーエルフ。

「ぐっ、生意気な。人間の指図など…」

[ミーーーーッ!!!!]

「な…?」

反論しようとしたドップラーを黙らせるようにサイバーエルフが叫ぶ。

「ふーむ、何となくじゃがこの子の言いたいことが分かるのう。“動くな”と言いたいんじゃな」

「ぐっ…何故だ…」

「う~~~ん?」

「さっきもわしの考えを読み、今もまた…何故人間の貴様にわしの考えが分かる?」

「ふん~~~どっこいしょ。」

一度立ち上がり、位置を変えて再びドップラーの修理を再開する。

「おい、爺。パーツが必要なら言え。今ならパーツが簡単に手に入るからな」

エックスとルインが倒したメカニロイドの残骸を指差すゼロ。

「うむ、すまんのう。さて…お主の質問に対して答えるなら、友達じゃからかの~~~」

「笑わせるな!!貴様の友だったわしはもういない!!」

「まあの~~~昔のお主は人の不幸を楽しみはせんかったものな~~~。と言うことはじゃ、昔のお主の逆と考えればええわけじゃ。お主のことを分かっとれば造作もないことじゃ。それに研究熱心なとこと幼子に対して強く出られんとこも同じじゃなぁ~~~まあ、ここはわしらみたいな年寄りの共通の弱点みたいなもんじゃが」

チラリとサイバーエルフを見遣りながらケインはからかうように言う。

「チッ!!」

言い返せないからか、ドップラーは顔を逸らす。

「パラスティックボム!!」

「エディットバスター!!」

エックスとルインは特殊武器と各アーマーの武器をフル活用してメカニロイドを迎え撃っていた。

「フォッフォッフォッ、エックスの奴…ルインが帰ってきたからか張り切っとるのう…ルインも大分戦闘の勘を取り戻したようじゃな」

「お前と同じだ。無駄なことをやっておるわ」

「あれこそ“若さ”じゃよ。それに無駄かどうかはまだ分からんぞい」

笑いながら言うケイン。

ケインの顔から流れる汗が修理中のドップラーのボディに落ちるとジュッと音を立てて蒸発した。

「…?ジュ?」

音に気付いたドップラーは顔を動かすと自身の修理をしているケインの手の変化に気付いて、その腕を掴んだ。

「こ、これ!何すんじゃい。痛いぞい!!」

「うるさい!!」

掴んだケインの手を見ると、その手は火傷をしていた。

「あちゃ」

「火傷かっ!!そんなに害虫が惜しいか!死にたくないかっ!!」

「当然じゃい!!人類を失いたくない!やりたいことも沢山あるわい!!ようやくまたあの3人が揃ったんじゃ!それなのにそんな簡単に終わらされてはたまらんわい!!それにのぉ、よっと…友も一緒に助かる!お得この上なしじゃ」

立ち上がり、明るい笑顔と共に言われた言葉にドップラーは目を見開く。

「わしも……一緒に……」

「特殊武器はエネルギー切れか!!バスターだけでも凌いでみせる!!」

「私だってまだまだやれるよ!!」

エックスとルインがそれぞれのバスターでショットを連射しながらメカニロイドを破壊していく。

2人がバスターのチャージをしようとした時、メカニロイドは突如停止した。

「「え?」」

「メカニロイドが止まっただと?」

「何じゃと?」

エックス達は目を見開き、メカニロイドを止めたであろうドップラーの方を見遣る。

「………」

「ドップラー…」

ドップラーは無言でパーツを外して内部を見せる。

「中の赤い線だ………」

「え?」

「早く切れ…」

ケインはドップラーの言う通りに赤い配線を切った。

「そうだ……それでいい…もう、ジーロン弾は作動しない……」

そのドップラーの言葉が全員の耳に入り、エックス達は思わず顔を見合わせた。

ジーロン弾の作動が無くなったことで全員が安堵し、エックスはドップラーに歩み寄る。

「………ドップラー……博士……」

「わしのことを…まだ博士……と呼んでくれるのか……わしを………こんな………わしを……」

「まだ立ってはいかんぞい!!」

立ち上がるドップラーを止めようとするケインだが、ドップラーはエックス達の方を向いて口を開いた。

「わしは…わしは生き残って良いのか?人類を苦しめ、同胞を利用して………そして友を悲しませたこのわしが……そんなわしが……やり直すために生き残って良いのか………?」

「………それは……あなたが自分の“心”に従って決めることだ」

「自分の“心”!!そうだな……わしが決めることだな……」

微笑みを浮かべたドップラーに全員が安堵した。

今まで倒してきたイレギュラー達を考えれば、完全にとはいかないが、ハッピーエンドと呼べるだろう。

「後はシグマのボディを破壊すれば全て終わりだね」

そう言った直後、地面が大きく揺れて、突風が起きた。

「何だ!?この地鳴りと突風は?」

「おい、ドップラー。これは何だ!?」

「いや!わしも何が起きたか……」

ドップラーでさえ分からない事態はまだ続き、次は周囲の塔が飛んで行く。

「見てみい!!塔が飛んで行くぞい!!何じゃあ!!……塔が……合体しちょるぞ!!」

塔が一ヶ所に集まり、合体して1つの禍々しい外観の建造物に姿を変えた。

「これが…シグマの城!!」

「うああああ!!」

その時、背後からケインの悲鳴が聞こえてエックス達が振り返る。

「爺!!」

「うががががあっ」

何とケインが頭をドップラーに鷲掴みされていた。

「ドップラー博士!?」

「キヒヒぃぃぃ、死ね~~死ね~~柘榴のようにかち割れろぉ」

「やめろーっ!!」

「ぐが!!」

即座にエックスがドップラーを殴り飛ばしてケインを救出する。

「ドップラー博士、どうして!?」

「ルイン、恐らくあの城からドップラーに影響を及ぼす何かが発せられとるんじゃ」

「ドップラーはシグマウィルスに侵されている。シグマからすれば簡単に操れると言うわけか!!」

「ふおおおおっ!!」

エックスに飛び掛かるドップラー。

それに対して反射的にバスターを展開するエックスだが。

「ドップラー!!」

「っ!!あ、ぐ、ぐぐ……ぅ…ケイン………駄目…やり……直せ……ない。わしはシグマウィルスに侵され過ぎ………た…戻……れ…な……い……」

ケインの声に何とか理性を取り戻したドップラーだが、シグマウィルスに侵され過ぎたことで簡単にシグマの操り人形にされてしまう状態になっていたのだ。

「何を言う!!」

「ケイン博士、もうドップラー博士は…」

ドップラーは完全に手遅れなのだと悟ったルインはケインをドップラーから離そうとする。

それよりも先に城から悪質な電波が飛び、ドップラーに再び影響を与える。

「ぐあああっ!!」

頭を抱えて苦しむドップラー。

「ドップラー!!」

「いかん!!離れろ爺!!」

セイバーを抜いてケインの前に立つゼロは何時でもドップラーの動きに対応出来るように構えた。 

「ぐあああっ!!」

「っ!!」

ドップラーの腕が此方に伸ばされたかと思いきや、ドップラーは自分のメインプログラムを掴んでそれを破壊した。

「ドップラー博士…!!」

「そんな…」

「自分でメインプログラムを破壊したのか……シグマに利用されんために“死を”選んだ訳じゃな。これでお主を縛るものは無くなった訳じゃ……自分の……“心”に従っ…た……訳じゃ…な………ド………ドップラーーーーーー!!!!」

ケインの悲しみの咆哮が響き渡り、そして地面に何度も拳を叩き付けた。

「おおおおお!!」

「ケイン博士!!?」

「おい、爺!何をしている!?止めろ!!」

「放せぇーーー!!放せぇーーー!!!」

ゼロがケインの腕を掴んで自傷行為を阻止するが、ケインは暴れる。

「何故、“死”を選んだーーーっ!!お主の“才能”で償いをすべきじゃろうがぁ!!」

「爺!ドップラーはドップラーなりにシグマに抗ったんだ!!そんな言い方では無駄死にだろう!!」

「おー!!無駄じゃ無駄じゃよ!何故闘わん!!シグマウィルスと!!そんな弱虫じゃったのかーーーっ!!馬鹿もんーーーっ!!馬鹿もん!!」

ゼロが何とか止めているが、ケインは暴れることを止めない。

大事な友人を失った悲しみがケインを支配していた。

「どうして…ドップラー博士…これからだったのに…」

涙ぐむルインを見て、サイバーエルフはふよふよとドップラーの亡骸に近付いて治癒能力を使った。

「おい、チビ。無駄だ、ドップラーが死んだ以上治癒しても無意味だ」

ケインを止めながらゼロはサイバーエルフに治癒を止めるように言う。

[ミ~~~…]

直せないと言われたサイバーエルフは悲しそうな表情でドップラーを見つめる。

「……………」

エックスはシグマの城を見つめながら拳を握り締め、シグマの城に向かおうとした時である。

サイバーエルフの小さな体から光が放たれ、それにより全員の視線がサイバーエルフに釘付けになる。

『ドップラー博士、君は死なない。今はレプリロイドではなく電子生命体として生き延びるの…』 

ルインは自分の電子頭脳に響き渡る声に目を見開くが、それどころではなく光を浴びたドップラーの亡骸が消えていく。

「ドップラーの体が…」

「消えていく…!!」

「ど、ドップラー!!」

消えていくドップラーに慌てて駆け寄るケインだが、手が触れる前に弾かれてしまう。

「ぬう!?」

「ケイン博士、大丈夫です多分…多分ドップラー博士は…」

「ああ…暖かい…何と暖かい光じゃ…」

光と共にドップラーの亡骸は消滅し、代わりに現れたのは半透明のホログラムのようなドップラーであった。

「ドップラー…?」

「年寄りが泣いても可愛げがないな」

顔をぐしゃぐしゃにしたケインをからかうように言うドップラー。

「だ、誰が年寄りじゃあ!!そ、それよりもドップラー…お主…」

ドップラー「詳しい原理はわしにも分からんが、どうやらわしは電子生命体になったらしい。この子と同じようにな…ケイン…どうやらわしはやり直すチャンスを与えられたらしいな」

「…っ、当然じゃあ!!お主の才能で償いをすべきなんじゃ!死んで楽しようなど許さんからのう!!」

「ふふふ…厳しいな。わしはボディを失ったが、ボディが新しく出来るまでは今出来る範囲のことで償いをしよう」

「お主のボディなどわしがパパっと造ってやるわい!!僅かな時間でも楽はさせんわい!!」

「…………奇跡だ」

一部始終を見たエックスがポツリと呟いた。

「ああ、ここまで常識外れだと奇跡と言うしかないな」

「でも良かったよ。ドップラー博士が幽霊みたいな状態でも生き残って…あれってレプリロイドの魂なのかな…もしそうなら、私達レプリロイドにも魂は宿るんだね」

「“魂”?非科学的にも程があるぞルイン」

「良いじゃないかゼロ…俺は信じたいよ。俺達レプリロイドはただの機械じゃない、この世界で生きている生命体の一種なんだってことを…」

「………そうだな」

泣きながら笑うケインを見てゼロも思わず微笑んで空を見上げた。

残る問題はシグマである。 
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