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徒然草

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78部分:七十八.今様の


七十八.今様の

七十八.今様の
 世間でその時に最も流行っている事柄を追い掛けてそうしてその珍しい事柄の宣伝をしてそのうえでそういったものを有り難がることもこれまた嫌なことであります。そんなことをする位ならそうした流行のものが廃れるまで知らない方が格好がいいというものです。
 何かに対して不慣れな人がいる場合においてそこに居合わせた人々には馴染みの動きやものの名前を知っている者同士がその仇名で呼び合いそうしてその不慣れな人がわかっておらずおろおろさえしているのを見て仲間内だけで目配せをしてそのうえで笑い合っているのも、また何かを食べている時にその味がわからない者を不安な気持ちにさせるといった好意も世の中のことがわかっていない愚か者が如何にもやりそうなことです。
 流行りのものを追い掛けるのもまたいいことです。しかし過度に有り難がったりするというのはやはりいいものではありません。そして不慣れな人や味がまだわからない人を見てそれを仲間内だけで笑うというのもこれまたいいものではありません。自分がやられたらどう思うのでしょうか。もっともそうした人こそそうなってしまった場合には殊更その相手を憎むものでありますが。本当に自分のことがわかっていません。懲らしめられてもそれがわからないということはそれだけで不幸なことであります。また不幸は重なって続いてしまうことですがそれでも気付かないというのはまことに悲しいことであります。


今様の   完


                   2008・7・31
 
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