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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と回想、I・アイランド編
  NO.102 回想《7》 メリッサの研究室にて

 
前書き
運営さんが更新が直ったというので更新します。 

 



出久はメリッサの研究室へと招かれていた。
 
「ここは私のアカデミーの校舎で、そして私専用の研究室なの。色々散らかっているけどごめんね」
「ううん。大丈夫です」
「ありがと」
 
それで出久は研究室を見回しながらも感嘆の声を上げながらも、
 
「すごいですね……。こんな一つの研究室をもらえるだなんて、メリッサさんは本当に優秀なんですね!」
 
様々な道具や資料が乱雑に置かれていて、そしてなにより目についたのはいくつも置いてあるトロフィーや盾。その数はかなりのものがあり、メリッサの優秀さの証ともいえるものだ。
それでもメリッサはそれを自慢することもなく、一つの倉庫の扉を開きながらも、
 
「……実はね、私はそんなに成績が良い子じゃなかったの。だから他の生徒のみんなに負けないように、パパに誇れるように一生懸命勉強をしたわ。どうしてもヒーローになりたかったから」
「プロヒーローに……?」
 
それで出久は驚きの表情をする。最初から科学者を目指していなかったのかなと……。
メリッサはそれでどこか諦めの顔をしながらも、
 
「ううん、ヒーローに関してはすぐに諦めたの。だって、私無個性だし」
「ッ!?」
 
メリッサのなんでもないかのような告白に、しかし出久は自身の過去を照らし合わせて深くショックを感じた。
 
「無個性なの……?」
「うん」
 
メリッサも出久と同じように5歳を過ぎても個性が発現しない事を不思議に思い、医者に診断してもらったところ、発現しないタイプだと宣言されてしまったのだという。
それは当時の出久と同じ境遇だったであろう。
出久はそれはもう、オールマイトの映像を見ながらも絶望を胸に抱いたものである。
メリッサも同じ境遇の人だったことに共感を覚えてしまっていた。
 
「す、すいません、なんかその……」
 
出久の突然の謝罪の言葉にメリッサは不思議そうに首を傾げながらも、
 
「どうしたの?」
「いえ、周りの人たちが当然のように持っているものを持てなかったというのは、ショックだったと思いまして……」
 
ここで出久も一年前までは無個性だと思っていた事など語る気にはなれなかった。
結果論だが、それでも今はこうしてフォウとオールマイトのおかげで個性が発現していて将来を目指せるというのに、そんな自身の過去を語るのは、同時に無個性であるメリッサの事を下位にしてしまうかもしれないからと思ったからだ。
そんな、内心を隠しつつも自身の事を気遣ってくれる出久の言葉に、メリッサも当時の思いを思い出したのか、
 
「うん。正直言っちゃったらショックは大きかったの。でも、私のそばには目標の人がいたから……」
「目標……?それって……」
「パパの事」
 
そう言いつつ棚に飾られているいくつもの写真を見るメリッサ。
そこにはどれもメリッサに対するデヴィットの惜しみない愛情が伝わってくる。
 
「パパはね、ヒーローになれるような強い個性は持っていなかったけど、それがどうしたと言わんばかりに科学の力でマイトおじさまやヒーロー達のサポートをしているの。だから間接的にだけど、平和のために戦っているの……」
「ヒーローを助ける存在……」
「そう。それが私が目指すヒーローのなり方」
 
それで出久は考える。
もしも、自身もそんな考えを持てたらメリッサのように科学者の道を選んでいただろうかと。
しかし、その考えはすぐに無くした。
もしものIFを考えても、それは所詮あったかもしれない事だからだ。
それにいまさらそんな事を考えてしまったら個性を譲ってくれたオールマイトに対して不謹慎が過ぎてしまう。
それに、自身のヒーローを諦めきれなかった想いが実を結んでフォウを助ける事もできた。
だから、それを誇りにすればいいじゃないかと出久は考えていた。
そして、そんな希望の光があったからこそ、メリッサもすぐに立ち直れたのだろうと、そう感じた。
そんな事を考えていた出久をよそにメリッサは一つの箱を持ってきた。
それをテーブルの上に置いて、それを開けるとそこからはなにかのベルトのようなものが顔を出してきた。
 
「これは……?」
「このサポートアイテムは前にマイトおじさまを参考にして作ったものなの」
「オールマイトを?」
「デクちゃん、ちょっと腕を捲ってもらってもいいかな?」
「あ、はい」
 
それで出久は肘まであるサポート製の腕具を外した。
そこにメリッサは出久の腕にそれを巻いた。
 
「ここのパネルを押してみて」
「あ、はい」
 
出久は不思議そうに思いながらも、そのパネルのボタンを押した。
すると突然ベルトが輝いて、次々と展開していって腕に巻きついていき、ぴっちりと出久の腕に巻きついていく。
その変化に出久は驚愕しながらも、やっぱり科学の進歩はすごいなぁと思っていた。
 
「これは……?」
「名付けるなら……“フルガントレット”かな?」
 
自慢そうにそういうメリッサ。
 
「デクちゃんと初めて会った時にはそんなに違和感は感じなかったんだけど、あの時に参加したアトラクションの時にね、デクちゃんはどこか個性をセーブしているように感じたの。もしかしたら強すぎる個性にまだ体が追い付いていないんじゃないかなって……」
「すごい……。あのたった数分だけのアトラクションだけで気づくだなんて……。やっぱりメリッサさんはすごいですね……」
「あ、やっぱり当たっていたんだね。私の勘違いじゃなくてよかったわ」
 
メリッサの言う通り。
まだワン・フォー・オールは100%は発揮したら試したことがないがきっと腕が破損してしまうし、フルカウル状態でもまだ15%がそこそこで全力だなんて夢のまた夢だ。
フォウの身体強化・怪力を併用して現状でそれなのだから、まだ個性を存分に発揮するためには修行が必要になってくる。
 
「このフルガントレットね、マイトおじさま並みの拳を放っても、私の計算では三回までなら耐えられる強度があるわ。だからきっと、デクちゃんの本来の力を発揮できると思うの」
「……僕の、力を……」
 
そんなにすごい力が秘められているのかと、出久はとても感動そうにそのフルガントレットを眺めていると、そこでメリッサはすごい事を言い出した。
 
「それ、デクちゃんが使って」
「え、でもっ……とても大切なものなんじゃ……」
「だから使ってほしいの。きっとフルガントレットも使ってもらえるのを喜んでいると思うし……」
「…………」
 
それで出久はもう一度フルガントレットを見た。
どことなく主を見つけて光り輝いているように感じるのはきっと気のせいであろうか。
 
「困っている人達を助けられる、素敵なヒーローになってね」
「メリッサさん……はい!」
 
ある種のメリッサからの応援だと受け取った出久は素直にそれを受け取ることにした。
大事にしないとね、と出久が思っているときに、ふと携帯が鳴っているのを感じたのでそれに出てみると、
 
『なにをしている緑谷君! 集合時間はとっくの昔に過ぎてしまっているぞ!』
「あっ……」
 
それで出久は顔を青くする。
 
「ど、どうしよう! 今からじゃ部屋に戻ってドレスを着ている時間もない!?」
「あ、それじゃデクちゃん。私のを貸そうか? 私も参加予定だから一緒に着替えましょう」
「え、でも……」
 
それで出久は顔を赤くする。
そんな出久の反応にメリッサは首を傾げながらも、
 
「どうしたの……?」
「その、ありがたい話なんですけど……メリッサさんに話していなかったのも問題なんですけど、信じてもらえないと思うんですけど、僕って実は一年前に個性が発現するまでは男だったんです」
「え……?」
 
それでメリッサはポカンとした顔になる。
初めて聞く話ともなれば誰でもそんな顔をするだろうと出久は思った。
むしろ、すぐに受け入れてもらえた1-Aのみんなには感謝をしないといけないであろう。
だけど、だからといってメリッサもすぐに受け入れてもらえるだろうかと、出久は不安に感じたのであるが、
 
「……個性の発現とともに性転換をしてしまった……? そんな個性もあるんだね、それに一年前だとするとデクちゃんもそれまでは無個性だったって思い込んでいたって事……?……ううん、こんな時じゃなかったらもっとデクちゃんの個性について色々聞きたい、そしてきっとマイトおじさまにも目を掛けてもらっているんだからかなりの強個性…………ブツブツブツ…………」
 
メリッサの中の科学者としてのスイッチが入ったのか、いつもの出久に負けず劣らずブツブツと色々と呟きだしてしまっていた。
それで出久は(普段は僕もこんな感じなのかなー……)と思っていたり。
 
「あ、あの……メリッサさん?」
「はっ!……ごめんね、デクちゃん。でも、そうなると一緒に着替えるのは恥ずかしいかな?」
「少し……。なんとかクラスのみんなとは一緒に着替えられるようにまでは慣れましたけど、雄英に入るまでは時期も関係して女子制服は購入しても無駄になるだろうと思って男性制服で過ごしていましたから……」
 
あはは……と空笑いをする出久に、メリッサは「苦労したのね……」と思いつつ、
 
「私は大丈夫だから、一緒に着替えましょう。デクちゃんもそこを気にして私に正直に話してくれたんでしょ? だから私も気にしないわよ」
「ありがとうございます……」
 
それで出久はみんなに告白した時の事を思い出しながらも、メリッサも自身の事をすぐに受け入れてくれたことに素直に感謝の思いであった。
それから出久とメリッサの二人は一緒にドレス姿に着替えたのであった。
ただ、出久はやはり気慣れないモノなので苦労していたので、メリッサが丁寧に着替えさせていて、照れていたのはご愛敬である。


 
 

 
後書き
最後は結局もともとは無個性だったと告白してましたね。 
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