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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第54話:Parasite

ハンターベースのケインの部屋でエックスがケインの発言に思わず声を荒げる。

「俺は反対です!!彼らの頭部を開けて電子頭脳を検査するなんてあまりにも乱暴過ぎます!!」

ケインの発言に声を荒げる理由は、電子頭脳は言うまでもなくレプリロイドの頭脳で大切な部分の1つである。

もし万が一のことがあれば、記憶やデータがデリートされてしまう可能性も無くはないのだ。

「記憶やデータがデリートしてしまう可能性があるからか?だが、ホーネック達もそれを承知しているんだ。いくら調べてもドップラーがホーネック達に施した処置が分からないんだ。ならば電子頭脳を検査するしかないとな」

どれだけボディの検査をしてもドップラーのイレギュラー化させる原因が見つからないのなら最早、電子頭脳を調べるしかないのである。

「エックスよ…わしを誰だと思うとる?わしはDr.ケインじゃぞ。心配するな!!」

自信を持って言うケインにエックスは何も言えずに、検査が始まった。

「それでは今より4人の電子頭脳の検査手術を開始するぞい!!よし、ドライバーN・N」

数人の助手の手を借りながら、ケインはまずメンテナンスベッドに寝かされているホーネック、バッファリオ、マサイダー、タイガードの頭を外し始める。

「みんな…頑張ってくれ…」

「………」

何も出来ないエックスとゼロは成功を祈るくらいしか出来ない。

「何処じゃ…一体何処にドップラーの手が掛かっとるんじゃ…」

どれだけ電子頭脳を調べたところでドップラーの施したイレギュラー化の原因は見付からない。

「(ケイン博士ともあろう人があんなに苦しんでいる…)」

何も出来ない自分に無力感を抱きながらも、ケイン程の科学者ですら見つけられないような処置を施すドップラーに戦慄を覚える。

「…………最早、これしかあるまい」

ケインは台に置かれた治療用具を見つめていたが、意を決して1つの道具を手に取る。

「(あれはアロファー波照射機!!確かにあれは異物探索に絶大な効力を発揮する。けどその反面、僅かでもアロファー波の照射位置がずれるとシステムも破壊してしまう!!)止めさせなくては…!!」

止めようとメンテナンスルームに入ろうとするエックスをゼロが止めた。

「黙って見ていろ…爺を信じるんだ。普段はボケ爺だが、やる時は必ずやる男だ…俺達の知るDr.ケインはそう言う男だろう?」

「ゼロ………うん」

ゼロとて自分を慕ってくれる部下をこの検査手術で失うかもしれない可能性があることに何も思っていない訳じゃない。

だが、ケインを信じているからこそやらせるのだ。

そしてケインがタイガードの電子頭脳にアロファー波の照射を開始し、照射位置がずれないように慎重に動かしていく。

そしてチップの所にアロファー波が照射された際に異変が起きた。

「「「!?」」」

チップが突如生物のように動き出し、まるでムカデのような姿となる。

「な…これがドップラーの呪いの正体なのか…純正パーツに擬態して寄生した相手をイレギュラー化させ、凶暴化させる変形チップ…」

寄生チップはタイガードが機能停止しているためか、他の宿主になりそうなレプリロイドに飛び付く。

それはケインの背後にいた助手レプリロイドの1体のレプリロイドだ。

「はぐっ!?」

口に当たる部分でボディに穴を開けると、そのまま内部に侵入した。

「ふぐぅぬ~~っ!!」

そして電子頭脳に到達し、そのまま寄生すると助手をイレギュラー化させ、電気メスを持たせてケインに襲い掛かろうとする。

「その電気メスをどうするんじゃ!!」

「フ…ヒェヒェヒェ。解剖だぁ~科学の進歩だぁ~」

ゼロがガラスを突き破ってZセイバーを抜くと、寄生された助手を一刀両断した。

それにより寄生チップも破壊される。

「全く…とんでもないチップだ…だが、これで頭部に衝撃を与えると一時的に正気に戻る理由も分かったな…こいつらは生物のように思考・動いて寄生出来るくらいに精密なせいで他のイレギュラー化チップよりも衝撃に弱いんだ」

「ゼロ!何も倒さなくても良かったんじゃ…」

「こんな奴は1秒たりとも野放しに出来るか」

駆け寄りながら言ってくるエックスにゼロはチップの破片を踏み砕きながら言う。

「……あ…野放し…?」

タイガードの寄生チップは排除されたが、ホーネック、バッファリオ、マサイダーの寄生チップは取り除かれていない。

つまり…。

「どわひぃぃぃっ!!」

他の宿主となりそうなレプリロイドに寄生してケインに攻撃を仕掛ける。

「ケイン博士!!」

「世話のかかる爺だ。伏せてろ爺!!」

エックスが飛び出し、ゼロがバスターを構えてショットを放って助手達の頭部を破壊する。

「全く、迷惑なチップを造りやがって…なあ、エックス…」

「うわああああっ!!!」

振り返ったゼロが見たのは寄生チップに取り憑かれたエックスの姿だった。

「エックス…お主…寄生チップに取り憑かれたのかーっ!!?」

「(取り憑かれた…エックスが…)」

ゼロはセイバーの柄を握り締めると、光刃を発現させて構える。

「ゼ、ゼロ…何のつもりかの…?」

「エックスを処分する…俺は何時も言い続けた。俺達はイレギュラーハンターだ…と…その言葉に甘えは…ない!!」

「そんなプログラムされた信念は犬にでも食わしゃいいんじゃい!!お主が信じるのは共に苦楽を乗り越えてきたエックスとの絆じゃ!!あんなチップ如き、エックスの“良心”っつうワクチンに掛かればイチコロじゃい!!」

その言葉にゼロは足を止める。

「俺が今…信じるもの…か…(そうだな…エックスは俺を信じてくれた。なら今度は俺が信じる番か…)エックス!!負けるんじゃないぞ!!」

「う…ぐぐ…」

「頑張れエックス!!頑張るんじゃあ!!」

寄生チップの洗脳に必死に抗うエックスにゼロとケインは叫ぶ。

「(エックスがチップ一匹でこんなに苦しむなんて…しかし、その気になればこいつらは何時だって俺達に寄生出来たはずだ…なのに何故今になって……まさか!?)」

嫌な予感を感じたゼロはチャージショットで壁に穴を開けると外に向かう。

「なっ!?これは…ハンターベースが火の海になっているだと!?」

あまりの惨状に驚愕するゼロだが、元凶であろう2体のレプリロイドが姿を現した。

「ワーム数匹で大あらわだな。我らの侵入にエースが全く気付かなかったとはな。あの寄生チップ“ワーム”は取り憑いた相手を凶暴化し、その能力を大幅にアップさせる。そしてそのチップは我らの素体となっているのだ。」

侵入者の片割れの手が変化し、エックス達に取り憑いたチップを集めたような状態になり、次の瞬間にら元に戻った。

「そう言えば自己紹介をしてなかったな。我が名はナイトメアポリスのヴァジュリーラFF」

「同じくマンダレーラBB!!」

細身で標準サイズのレプリロイドと大型のレプリロイドがそれぞれの名を名乗る。

「ナイトメアポリス?悪夢警察とは面白い芸名だな。爺、エックスを任せたぜ。俺は奴らを倒してエックスの悪夢を覚まさせてもらう!!アースクラッシュの一撃で沈めてやるぜ!!」

まずはマンダレーラBBに狙いを定め、アースクラッシュのエネルギーを纏わせた拳を叩き込もうとするが、マンダレーラBBに容易く掌で受け止められた。

「勝ちを急ぎおって、実力差を考えてみろ」

「うわあっ!?」

マンダレーラBBはゼロを地面に叩き付けると、勢い良く放り投げて建物に叩き付ける。

「(待っていろエックス…こいつらを倒して少しは楽にしてやる…)」

ゼロは2対1と言う絶望的な状況の中、エックスを信じて戦い続ける。

そしてエックスの意識は夢の中の、争いの無い平和なシティ・アーベルの花畑の真ん中に静かに佇んでいた。

「ここは…シティ・アーベル?でも、どうして?」

『ここはあなたが苦しい戦いの末、成就した理想郷なのです』

何故か心に響くような声にエックスは納得したように口を開いた。

「そうか…俺の戦いは…終わったのか…」

一方、現実の世界ではケインがエックスに取り憑いたワームの活動を抑えることに成功していた。

「ふぃ~やっと小康状態になったわい。これで一安心じゃな。しかし解せん、エックス程の戦士がいとも簡単に寄生されるとは…え~い、早く帰ってこい!エックス!!」

エックスに叫ぶとケインは腕を振りながらホーネック達の元に向かう。

「よっしゃあ!!わしはもう一仕事じゃい!!」

そして外ではゼロが奮闘していた。

実力は完全に向こうが上回っているために何とか2体同時を相手にするのを避けるために壁蹴りを駆使して距離を取るが、ヴァジュリーラFFはゼロの真上を取ってビームサーベルを振り下ろしてくる。

「チッ!!」

セイバーでそれを受け止めるが、そのまま落下していき、真下にいるマンダレーラBBが落ちてくるゼロに拳を振り上げようとする。

しかしホーネックがゼロを抱え、マサイダーとタイガードがヴァジュリーラFFを押さえ込み、バッファリオはマンダレーラBBの攻撃を受け止める。

「お前達…全く…悪運が強いな俺達は…」

笑みを浮かべる加勢者達にゼロは笑みも浮かべた。

そしてエックスの夢の中では、エックスは舞い散る桜の花弁を見つめていた。

通り過ぎていく子供達の笑顔を見て、エックスは微笑む。

「みんな幸せなんだな…」

『そうです。あなたが苦しみに耐えて戦ってきた結果がこの理想郷なのです』

「こんなに平和なら…俺はもう戦わないで済むんだ…」

エックスの夢とは正反対の事態が現実の世界で起きていることなど知らないまま、現実のゼロ達とナイトメアポリスとの戦いは激化していくのであった。 
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