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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第48話 刮目しろ、最強の存在。美食連合軍VS一龍

 
前書き
 祐斗が今回使う『飛飯綱』は原作の技と違い斬撃を飛ばす技に変更していますのでお願いします。 

 
side:小猫


 こんにちは、小猫です。一龍さんと模擬戦を行う事になった私達は、空を飛んで一龍さんを追っています。というのも一龍さんは海の上をまるでトランポリンで跳ねるようにピョンピョン跳んでいるからです。


「ねえイッセー、あれも一龍さんの能力なの?」
「あんなの親父からすれば呼吸するくらい当たり前の能力ですよ」


 私たちの下からイッセー先輩の声が聞こえてきて部長にそう言いました。イッセー先輩とアーシアさん、イリナさんとゼノヴィアさん、ルフェイさんとテリーはゴムボートで移動をしておりイッセー先輩がボートを漕いでいます。


「あんなのは序の口です。そんなことで驚いていたら親父と対峙したら心臓が止まってしまいますからね」
「うぅ……今からあの人と戦うのよね。大丈夫かしら……」


 先程ほんの少し感じた一龍さんのプレッシャー、それはまだ5%も力を出していないだろうにその重さはまるで魔王様を思い浮かべるような恐怖が私達を襲いました。


「イッセー君は今まで何回一龍さんと模擬戦をしたのですか?」
「軽く2桁は言っていますが全部遊ばれて終わっています。俺の本気も正直親父からすればじゃれあいにしかならないですから」
「そこまでなのか……」


 朱乃さんがイッセー先輩に今まで何回模擬戦をしたのか聞くと、先輩は2桁はいっていると言いました。
 ですが先輩の本気でも一龍さんからすれば文字通りお遊びのようなものらしく、先輩の実力を知るゼノヴィアは最早驚きを超えてある意味納得する表情を浮かべます。


「俺が皆にアドバイスすることができるとしたら、絶対に動きを……思考を止めないで向かっていくという事ぐらいですね」
「どういう事かしら?」
「コカビエルの時もそうでしたが、攻撃を防がれたりすると驚いて動きを止めてしまうことがありましたよね。親父相手に0.1秒でも動きを止めたらもう負けだと思ってください」
「なるほど、こちらの攻撃は端から通用しないと思って直ぐに行動に移さないと駄目なんですね」


 先輩のアドバイスに私はなるほどと思いました。思い返してみれば私達は敵に攻撃を防がれたり効かなかったりすると、驚いて一瞬動きを止めてしまうことがありました。一龍さんの前でそれをすれば即座に負けてしまうというわけですね。


「ふむ、この島ならいいじゃろう」


 そして私達はこのあたりでも比較的大きな島に降り立ちました。


「はぁはぁ……親父早すぎるぜ」
「なんじゃ、もう息が上がっとるのか?」
「そりゃ結構な距離を漕いできたからな」
「お前も水の上の渡り方を覚えればいいじゃろうに。何だったら今教えようか?」
「そんな自転車の乗り方を教えようとするノリで言うなよ。まあ今回は遠慮しておくよ、親父と遊ぶ時間が無くなっちまうからな」
「遊びになればいいがのう……ほ~れイッセー、お前の好きな猫じゃらしじゃぞ~」
「ぐっ、今日こそは目にもの見せてやるからな!」


 一龍さんは自分の髭をヒョコヒョコと動かして、イッセー先輩に向かって挑発をします。それを見たイッセー先輩は少しムッとした表情を浮かべました。


「さてと……」


 一龍さんは島の真ん中に向かうと、自身の足で線を描き始め一龍さんを囲むような綺麗な円を描きました。


「今回も今までと同じルールじゃ。ワシをこの円から出したらお前さんらの勝ち、出せなかったらワシの勝ちじゃ」


 なるほど、あの円から一龍さんを出せば私たちの勝ちって事なんですね。でも言葉でいうのは簡単ですが実際にやろうとすれば相当な難易度になりそうですね。


「ほれ、どこからでもかかってくるがいい」
「なら遠慮なくいかせてもらうぜ」


 イッセー先輩は上着を脱いで戦闘態勢に入りました。私達もそれぞれの武器を出して構えます。


「……行くぞ!」


 まず最初に動いたのはイッセー先輩と祐斗先輩と私でした。真正面から一気に一龍さんとの距離を縮め懐に入り込みました。


「ナイフ!」
「龍鎚閃!」
「フライング・レッグ・ラリアート!」


 下、上、真ん中からの同時攻撃を放ちましたが一龍さんは片手ですべての攻撃をいなしました。


「はあっ!」
「やあっ!」
「ガアア!」


 一龍さんの背後から現れたゼノヴィアさんとイリナさんとテリーも攻撃を仕掛けましたが、もう片方の腕でそれらの攻撃も防いでしまいました。


「ほう、中々に鍛えられているじゃないか。異世界の戦士たちもやるもんじゃな。それにこのバトルウルフ、子供ながらにして凄い気迫じゃな。流石は伝説の血を受け継いでおるだけのことはある」


 余裕の表情で私達5人と一匹の攻撃をすべていなしていく一龍さん。これがこの世界でも最上位の実力者の力……底が見えません。


「滅びよ!」
「雷よ!」
「メラミ!」


 そこに遠距離から部長、朱乃さん、ルフェイさんの滅びの魔力、雷の矢、火球が放たれて一龍さんに向かっていきます。
 私達に当たらないように小さいですがかなりの速さで放たれた魔法は一龍さんに当たりそうになります。


「喝ッ!」


 ですが一龍さんはそれら全てを気合でかき消してしまい、同時に私達も吹き飛ばされてしまいました。


「どうした、向かってこんのか。まだまだいけるじゃろ?」


 髭を動かしながら挑発する一龍さん、するとイッセー先輩と祐斗先輩が立ち上がって再び攻撃を仕掛けます。


「龍巣閃!」
「ナイフ・コース!」


 祐斗先輩は一龍さんの急所を狙い連続攻撃を仕掛け、イッセー先輩は両手でのナイフで流れるような連撃を繰り出しましたが一龍さんは指一つで祐斗先輩とイッセー先輩の攻撃を止めてしまいます。


「ぐッ!」
「このっ!」


 祐斗先輩は持っていた聖魔刀を捨てて、新しい聖魔刀を生み出して攻撃をしかけイッセー先輩も右足からの蹴りを放ちましたが、一龍さんは爪楊枝を折るように聖魔刀を折ってしまいイッセー先輩の蹴りも腕を振るって起こした突風で体制を崩させて空振りさせました。
 そして二人にデコピンを放つと二人はまるでロケットのように吹き飛んでしまいました。


「ぐうぅ……!さすが親父だ!」
「強すぎる……!」


 何とか空中で体制を立て直す二人ですがその顔には疲労が浮かんでいました。


「喰らえ!月牙天衝!」
「喰らいなさい、紅き滅殺の魔閃光!!」


 ゼノヴィアさんはデュランダルを振り下ろし巨大な聖なる斬撃を放ち、部長は必殺の紅き滅殺の魔閃光を繰り出しました。ですがそれらは一龍さんの両腕に受け止められ挙句には握りつぶされて四散してしまいました。


「なっ……!?がふっ!」
「滅びの魔力を素手で……きゃあ!?」


 驚いて動きを止めてしまったゼノヴィアさんと部長は、何かに撃ち抜かれたかのように頭を仰け反らせて吹き飛びました。一龍さんの方を見てみるとデコピンをするような動きをしていました。


「ふにゃ!?」
「ぐはっ!?」
「きゃあ!?」


 すると私達の体に衝撃が走りアーシアさん以外の全員が地にふせてしまいました。


「親父の奴、空気を弾いて衝撃弾にして飛ばしてきやがった……前に戦ったグリンパーチの息も凄かったが親父はそれを遊び感覚で放ちやがった。マジで化け物だな……」


 イッセー先輩の言葉を聞いて私達は改めて一龍という人物の強さに戦慄を覚えました。円に近づかなければ何とかなるかもしれないという甘い考えがちょっとありましたが、それは間違いでしたね。


「皆さん、援護します!スクルト!」
「私もバイキルト!」


 アーシアさんとルフェイさんの援護で私達の能力がアップします。身体能力が上がった私は大きく跳躍して両膝を合わせた膝蹴りを放ちました。


「テキサス・コンドルキック!」


 しかしその一撃も難なく受け止められてしまいましたが、続けて手刀を放ちます。


「ベルリンの赤い雨!」


 繰り出した一撃もまた受け止められてしまいます。でも諦めません!


「二重の極み!」


 前にGTロボの核アンテナを破壊した必殺の一撃を放ちました。


「ほう、衝撃を二段階に分けて与えることにより物体を完全に破壊する技か。高度な技も使えるようじゃの」


 それを簡単に受け止めた一龍さんは、感心するような笑みを浮かべました。攻撃の際に仙術で氣の流れを乱そうとしましたが全く効果はなさそうですね。


「スパイラルフォーク!」
「牙突!」
「グォォォォ!」


 そこにイッセー先輩と祐斗先輩が乱入して、回転を加えたフォークと聖魔刀での突きを一龍さんに放ち更にその背後からテリーが遅れて攻撃を仕掛けました。ですが一龍さんは腹筋に力を入れて二人と一匹の攻撃を受け止めてしまいます。


「ふんっ!」


 そして気合で私達を再び弾き飛ばしてしまいます。


「ビクトリールインソード!」
「3000万V、雷鳥!雷獣!」


 私達と入れ替わるように部長が滅びの魔力で作った剣を構え、朱乃先輩が繰り出した雷鳥と雷獣が部長を守るように前に出て一龍さんに向かっていきます。
 しかし雷鳥と雷獣は指の一突きでかき消されてしまい、部長の一撃もまた指一本で止められてしまいます。


「円舞『霧風』!!」


 そこにイリナさんの繰り出した竜巻が一龍さんを飲み込みました。そして上空に跳び上がったゼノヴィアさんが再び月牙天衝を繰り出しました。
 技の名前も叫んでいないことから、竜巻で視界を封じて不意打ちの一撃を食らわせるつもりなんですね。上手い戦い方です。


「すうぅぅぅぅ……」


 一龍さんは大きく息を吸い込んで竜巻を飲み込んでしまいました。そして向かってきた月牙天衝を腕で受け止めると吸った息を勢いよく吐き出します。
 それはイリナさんの放った霧風が霞むほどの竜巻となってイリナさんとゼノヴィアさんを飲み込みました。


「きゃああああっ!?」
「ぐうっ!?」


 竜巻に飲まれた二人は海に落ちていきました。


「つ、強すぎる……まるでお兄様と戦っているみたいに思えてきたわ」
「完全に遊ばれていますわね……」
「底が全く見えない……まるで宇宙と戦っているみたいだ」
「これがこの世界最強の一角……認識が甘かったです。今まで戦った猛獣も存在も全てが小さく見えます……」


 部長、朱乃先輩、祐斗先輩、私はつい弱音を吐いてしまいました。
 強いとは思っていましたが次元が違いました。この人は一人で魔王様とその眷属はおろか冥界全てを相手取っても勝ててしまうんじゃないかと思うくらい強いです。


「おいおい、俺達はまだ全てを出し切ったわけじゃないだろう?」


 諦めそうになってしまった私達に、イッセー先輩が声をかけてきました。


「先輩……」
「親父は強い、今まで何回も遊ばれてその度に俺は一生親父には勝てないんじゃないかって思うこともあった。でも今の俺には皆がいる、だから諦める気はない。みんなはどうだ、ここで諦めちまうのか?」


 先輩の言葉を聞いた私達は、さっきまでの後ろめいた考えが消えていきました。そうですよね、ここで諦めたらGODを手に入れるなんて不可能です。私もイッセー先輩や皆がいる限り諦めたりはしません!


「……ごめんなさい、イッセー。私としたことが諦めかけていたわ」
「ここで諦めたら、それこそもう立ち上がれませんわね」
「GODをみんなで手に入れるためにも……」
「何度だって立ち上がって見せます!」


 私達は気合を入れなおして一龍さんに向き合います。


「ふっふっふ。ここで諦めたらGODはおろかグルメ界に入ることすら禁止しようと思っておったが、要らぬ心配だったようじゃな」
「俺は諦めねえ。親父を超えてその先に向かう、この皆とな。そのためにも……」


 イッセー先輩は目を閉じると一瞬で赤龍帝の鎧を纏いました。


「持てる全ての力を持って親父に挑む!」
『ふっ、今日こそはお前に吠え面をかかせてやる』
「面白い。だったら見せてもらおうかの、お前の言う力をな!」


 ドライグもやる気満々ですね、私達も負けてはいられません。


「でもイッセー、このまま戦っても勝てはしないわ。一体どうするの?」
「俺に作戦があります。この時のためにある秘策を考えていたんです」
「秘策?」
「ええ、ですがそれでも勝率はかなり低い……その可能性を少しでも上げる為に皆にも協力してほしいんです。お願いできますか?」
「当然よ。私達にできることがあるなら何でもするわ!」
「じゃあ作戦を言います……っとその前に海に落ちた二人を回収してこないと」


 イッセー先輩は海からイリナさんとゼノヴィアさんを連れてくると、作戦を説明してくれました。一龍さんは何をするわけでもなく待っていてくれています。


「俺の言う秘策とは釘パンチの威力を倍加の力で更に上げるという事です」
「えっ?イッセー君は倍加の力で釘パンチを出していたんじゃないのかい?」


 イッセー先輩の言葉に祐斗先輩はそう返しました。


「今まではな。でもジュエルミートを食ってからは自分の力だけで釘パンチを使えるようになった。さらにコカビエル戦の時に会得した力の引き出し方によって10連も一発だけだが自力で打てるようになった」
「なるほど、今までは衝撃を増やす為に使っていた倍加を今度はイッセー君の自力で放つ10連釘パンチに使うってことだね」
「そういう事だ」


 イッセー先輩の切り札でもある10連釘パンチ……それに倍加の力が加わるということは相当な威力になりそうですね。


「だが10連で腕に相当な負担がかかる、それを倍加するってことは負担もさらに増えるってことだ。下手をすれば腕が耐え切れず破裂してしまうかもな」
「そ、そんな……危険ですよ!使っちゃ駄目です!」
「大丈夫だ、破裂しないように調整をしてきた。二倍までなら腕は耐えれるようだ。でも一回使うと三日間は腕が使い物にならなくなってしまうから文字通り最後の切り札だな」


 私は腕が破裂するかもしれないと聞いてイッセー先輩を止めようとしましたが、イッセー先輩は限界のラインを調べていたらしく二倍までなら耐えられるそうです。ですが使うと三日間は腕が使えなくなってしまうらしく正しく最後の切り札なんですね。


「でも普通にそれを使っても親父には防がれてしまうだろう。だからこれを当てるために皆の協力を得たいんだ。まずは……」


 そしてイッセー先輩の作戦を聞いた私達は、待っていてくれた一龍さんの元に向かいました。


「どうやら準備はできたようじゃな」
「ああ、今から繰り出すのは俺達の最後の一撃だ。気合入れて受け止めろよ、親父!」


 イッセー先輩、祐斗先輩、ゼノヴィアさんが前に出て攻撃を放ちます。


「フライングナイフ!」
「飛飯綱!」
「月牙天衝!」


 三人の繰り出した斬撃が一つとなり、その大きさは浮島を抉り取るほどの大きさになっていました。それが真っ直ぐに一龍さんに向かっていきます。


「むうっ!」


 一龍さんは腕を交差させてその巨大な斬撃を受け止めました。


「んん……りゃあっ!」


 そして斬撃を霧に変えてしまいましたが、辺りは斬撃の影響で巻き起こった砂煙で視界が見えなくなってしまいます。


「目つぶしが目的か……」


 そこに砂煙の中から雷龍が出てきて一龍さんに向かっていきます。一龍さんはそれを腕でかき消そうとしましたが、雷龍は一龍さんの目前でバチバチと大きな音を立てながら光を放ちました。


「バギクロス!」
「リンさん、ごめんなさい!えい!」


 そこにルフェイさんが巨大な竜巻を巻き起こして、アーシアさんが何かを竜巻の中に放り込みました。


「この匂いは……リンが使っておる香水か?」


 そう、アーシアさんが投げ入れたのはリンさんがくれた香水でした。
 匂いのきつい場所や猛獣に出会ってもケアできるようにとリンさんが私達女子に定期的に送ってきてくれるんですが、今回はそれを嗅覚を封じる為に竜巻の中に投げ入れたというわけです。
 リンさん、申し訳ございません。


「雷と竜巻で視覚と聴覚、更にリンの香水で嗅覚を封じ込めに来たか」


 さあ準備はできました。後は攻撃をするだけです!


「イッセー先輩、行きますよ!」
「おう!頼むぜ小猫ちゃん!」


 私はイッセー先輩の足をつかむと、グルグルと回転します。そして回転が最高スピードになった瞬間、イッセー先輩を一龍さん目掛けて投げ飛ばしました。


「喰らえ!」
「甘いぞ、イッセー!」


 高速で放たれた一撃、ですが一龍さんはその一撃を受け止めてしまいました。しかしその途端にイッセー先輩の身体が土に代わり中から滅びの魔力が出てきました。


「むう、これは……」
「滅びの魔力だけじゃないのよ、私は」


 そう、さっきのイッセー先輩は部長の魔力で作った土人形です。声は朱乃先輩のお札にイッセー先輩の声を封じ込めてカセットテープのように流していた徹底ぶり、更にオマケで滅びの魔力も入っていました。


「狙いは後ろか」


 一龍さんの言う通り、先輩は既に彼の背後に回り込んでいました。振り返ろうとした一龍さんでしたが足元から出てきたテリーが足首に噛みつき動きを封じました。


「地面を掘ってきたのか」


 動きが止まった一龍さんにイッセー先輩が向かっていきます。そして途中でジャンプすると、そこにイリナさんが現れてイッセー先輩の両足の裏に自分の両足の裏を合わせました。


「いくよ、イッセー君!」


 そして空中でイリナさんがイッセー先輩を蹴り飛ばして更に加速しました。


「喰らえ!これが俺と皆が放つ最高の一撃だ!」


 そしてイッセー先輩の一撃が一龍さんの背中に放たれました。


「10×2で20連!ブーステッド・釘パンチ!!」


 凄まじい衝撃が一龍さんを駆け巡りその影響で島が半壊するほどの余波が生まれました。一龍さんは暫く動きを止めていましたがニコッとほほ笑むとイッセー先輩の方に向き直しました。


「強くなったな、イッセー。ここまで成長したとは……ワシも嬉しく思うぞ。ご褒美に水面の走り方を教えてやろう」


 そう言った一龍さんはイッセー先輩の顔を軽くパンチしました。その一撃でイッセー先輩の赤龍帝の鎧は粉々に砕け散り、イッセー先輩は水面を跳ねながら遥か遠くの浮島まで吹っ飛ばされてしまいました。


「……」


 私達は唖然とそれを見ている事しかできませんでした……




―――――――――

――――――

―――


「いてて……」
「大丈夫ですか?イッセー先輩?」


 浮島から一龍さんの別荘に戻ってきた私達は、一先ずの休息を取っています。朱乃先輩に膝枕をされているイッセー先輩の鼻に薬を塗ってガーゼを張った私は、氣を流して先輩の疲れを取っていきます。反対側にはアーシアさんがいて回復の力でイッセー先輩を癒していました。


「ふふっ、至れり尽くせりじゃなイッセー」
「うるせ……大体親父、あの土人形が俺じゃないって最初から気が付いていたんだろう?」
「無論気が付いておったよ。五感の内3つを封じ込めにきたのはいい作戦じゃったがワシには通用せん、土人形も生気を感じなかったから直ぐに偽物と気が付いたわい」
「じゃあ何で攻撃を喰らったりしたんだ?」
「そりゃあそこで軽く防いだりしたらワシあまりにも空気読めん奴になってしまうではないか。それに成長したお前の一撃がどれだけ鋭くなったか試してみたかったんじゃよ。それとイッセー、最後に使ったあの技は出来るだけ使わないようにしろ。威力は凄まじい物じゃが反動が大きすぎる、今回はワシがお前の分の負担も取り込んだから大丈夫じゃったがヘタをすれば腕がふっとんでしまう」
「通りで腕がしびれる程度で済んだと思ったよ。しかし俺の分の負担も体に取り入れてノーダメージか、かなわねえなホント……」


 結局一龍さんには全てお見通しだったって事ですね。私達もまだまだです。


「……なあ、親父。俺に、いや俺達に足りないのは実力だけか?」
「実力もそうじゃがお前達に足りてないのは環境への適応力じゃな。グルメ界に立ちふさがるのは何も屈強な猛獣だけじゃない、特殊な気候や気象、様々な自然災害が絶え間なく襲い掛かってくる。それら全てに適応しなければグルメ界では生きていけん」


 特殊な気候や気象、自然災害ですか……私達も洞窟や密林、火山などに行きましたがグルメ界はそれらを凌駕する環境なんですね。


「お前達に足りえないのはその適応力……様々な環境に瞬時に適応していかなければならん。そこでワシがお前達に依頼を出してやろう」
「親父自ら……?」
「うむ、グルメ界に入るためのテストだと思えばいい。修行もできるし美味い食材も手に入る、まさに一石二鳥じゃろ?」


 一龍さん直々の依頼……いったいどんな食材を取ってくることになるのでしょうか?


「まあ楽しみにしておいてくれ」
「何だよ、別に今すぐ言ってくれてもいいんだぞ?」
「お前、やっぱり忘れておるな。もうすぐ節乃の店の予約した日じゃろ?行かんのか?」
「節乃お婆ちゃんの……あぁ―――――ッ!そうだった!!」


 朱乃先輩に頭を撫でられていたイッセー先輩は、ガバっと勢いよく起きると頭を抱えて叫びました。節乃とは誰なのでしょうか?


「皆!こうしちゃいられない、今すぐにグルメタウンに向かうぞ!とびっきりの美味いご馳走を食べるためになぁ!」


 グルメタウン?一体どんなところなのでしょうか。何はともあれまた新しい冒険が始まりそうな予感がしますね。

 
 
 

 
後書き
 小猫です。次に私達が向かうのは満腹都市『グルメタウン』です。至る所に美味しいものがあるこの町はまさに食の聖地ですね。
 しかしこの町のどんな食材よりも美味しいご馳走とは一体何なのでしょうか?
 次回第49話『やってきましたグルメタウン、美食人間国宝節乃登場!』でお会いしましょうね。にゃん。 
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