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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
3章 穏やかな日々
  29話 あの日の出来事

 
前書き
 どうも、白泉です!最近更新速度が…これから早くしたいというのが願望なのですが、部活で死ぬほど忙しくなるので、あまり期待はされないほうがいいかもしれません…

 いよいよ新たな生活が始まる4月です!異動になったり、進級や進学したり、色々な方がいると思います。僕は当たり前のように極度のコミュ障なので、本当にこの時期はいやですねww大概半年ぐらいは友達ができないのでwまあ、部活の誰かしらとは一緒になるので、今年はあまり心配はしていませんが。

 さて、今回は黒猫団の話です!リアとツカサはいったいこの話の何処に絡んでくるのか?

 では、さっそく、どうぞ! 

 
 あのデュエルから一週間ほどが経ち、アインクラッドは再びいつも通りの日常へと戻っていた。特にない日々。かくいうリアとツカサもその中の人間であり、普通の朝を迎えていた。だが、全員が全員、そういうわけではなく、普通ではなくなった人間もいるわけで、それは2人にとって身近な人物だ。もちろんのこと…

「キリト、まだエギルのところにいるのかな?」
「じゃないか?なんかすでにあの家は自分の物みたいになってるからな」

 穏やかな朝食の席で、ツカサはリアの淹れた、恐らくこの世界ではとんでもなく価値のあるコーヒーをすすった。もしこれをオークションにかけたら、いったいいくらするのか、ツカサも見当がつかない。


「そろそろどんな暮らしをしてるのか覗いてみますか!」
「まるで母親だな」
「まま、いいじゃんいいじゃん、どうせ暇なんだし」


 こうして、今日の予定はエギルの店の二階に現在住む住人を訪れることになった。



―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―


「こんにちは、エギル」

 リアがそう言いながら扉を開けると、カウンターの奥には巨漢黒人スキンヘッド、この店の店主であるエギルがいる。彼はこうして店を営んでいるが、攻略組の盾装備(タンク)部隊に欠かせない人物でもある。

「よぉ、リア、ツカサも。久しぶりだな。あのデュエル以来か」

「だね~」

 リアの後ろにいるツカサも手を上げてエギルに挨拶をした。

「キリトのやつはまだ二階にいるのか?」

「ああ。今アスナも来てるぞ」

「「……」」

 リアとツカサは無言で顔を見合わせた。

「ありがと、エギル」


 リアはそう言い残すと、2階へと続く階段へ足を踏み入れた。



 部屋のドアを数回ノックする。

「キリト、アスナ、リアだけど」

 扉がすぐに開き、目の前に立っているのはアスナだ。いつも通り、おめでたカラーの制服に身を包んでいる。

「リア、久しぶり。…ツカサさんも」
「まだ一週間ぐらいしか経ってないけどね」
「…やあ」


 だが、部屋の中には、一部の人の間で黒尽(ブラッキー)くめと呼ばれるほど、いつも真っ黒なあの人物はいなかった。いるのは入って左奥に或る簡素なベッドに腰を掛け、頭を抱える一人の黒髪少年。着ている服は、アスナと同じ血盟騎士団の制服のようだ。


「…もしかしてだけど」
「…もしかしてだが」

「「…キリト?」」

 見事にシンクロしたリアとツカサに、その人物は顔を上げる。途方もない仕事の残業を終わらせた後のような、ひどくげっそりとした顔だ。


「めちゃくちゃタイミングよく来るよな…」

 キリトはほぼ溜息といっても過言でない言葉を発した。その中には若干の呆れも混じっている。だが、そんなキリトをよそに…

「ちょ、キリ、キリト、それ…っ!お、可笑しすぎ…っ‼‼」
「違和感がありすぎて…っ!」


 リアは腹を抱えて笑い転げ、ツカサも抑えきれない笑いが漏れ、最終的には吹き出した。こんなに大笑いしている2人は今の今まで見たことがなかったため、キリトとアスナはきょとんとするが、やがてキリトは頬を膨らませた。

「リア姉もツカサもそんなに笑うことないだろ!?」

「ご、ごめん…面白すぎて…っ!」
「これで笑うなとか…無理があるって…っ」

 リアは笑いをこらえるためしゃがみこみ、ツカサは口元に手をやった。あまりにキリトに似合わないその恰好は、リアとツカサのツボにドンピシャだったようだ。2人が再び話せるまで復活したのは5分後のことである。


―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―

 ようやく2人の笑いが収まり、キリトはベッド、アスナは窓枠、リアとツカサは椅子に座り落ち着く。

「そっか…またギルドに入るのか…」

 ぽつりとリアがつぶやく。

「ああ…」

 相槌を打つキリトの横顔が、少しだけこわばる。ツカサもやや心配そうな目でキリトを見ている。それもそうだ、リアもツカサも、キリトの前を知っているからこそ、キリトがギルドに入ることをあまりよく思っていなかった。溺愛すれば、過保護にもなる。ほぼイコール関係にあるそれは、リアにも確かに備わっている。

 この中で、唯一その出来事を知らないアスナは、頭にはてなを浮かべた。


「え…またって、キリトくん、ギルドに入ってたことがあるの?」

 
 アスナが知らないのも無理はない。もう一年ほど前のことで、アスナとキリトは仲が良くなかったから知るはずはないのだ。だが、その出来事は、今のキリトを構成するうえで、大きな割合を占めている、彼にとって大きなものだ。…悪いほうの意味で。


「一度だけ、な」

 キリトはそういって、床からアスナへと視線を移す。

「あまり気持ちのいい話じゃないんだけど…」
「そ、そんな無理に話さなくてもいいよ?」

 アスナの気遣いから遠慮するが、キリトは首を振った。

「いや、アスナには、聞いてほしい…」


 アスナも真剣な目になり、ゆっくりとうなずいた。


 語られるキリトの言葉とともに、リアの頭にも、その時の情景が浮かぶ。




―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―

 その時は、まだまだ攻略速度が安定していない時だったし、新しい生活になれない人も少なからずいたため、毎日攻略と仕事で寝る時間もあまりとれていない時期だった。リアとツカサ自身も、精神的にも神経をすり減らし、かなり辛い時でもあった。そのため、キリトにあまり会う機会はなく、ギルドに入ったと知ったのも、かなり後の、ボス攻略会議で会ったときに初めて知ったぐらいだ。



 そして、その後のボス攻略会議で、初めてキリトの入っていた彼を除くギルドメンバー全員が死亡したことを知った。恐らく、あの時のキリトの様子は、一生忘れないと思う。一番大切なものが見えてなかった自分に、死ぬほど腹が立ったことを憶えている。それはツカサも同じで、結局考え抜いたが、二人が自分たちにできることといえば、そばにいてやることしかできなかった。死んだ人間は返ってこない。それはリアとツカサがよくわかっている。だからこそ、「死んだとは限らない」などという、現実逃避の甘い言葉は口が裂けてもかけられなかった。


 だが、それから約半年後、ある情報が出回っていた。

「…ツカサ君はどう思う?」
「俺は…もちろん、デマだと思ってる。だけど、絶対に嘘をつかないといわれるNPCが言うんだから…って考えも、一応ある」

「だよね…」

 ある情報というのは、12月24日24時丁度、どこかの森にある樅の巨大な木の下に、“背教者ニコラス”なる伝説の怪物が登場する。もし倒すことができれば、怪物が担ぐ大袋の中にある財宝を手にすることができる。そして、その財宝の中には、命の尽きたものの魂を呼び戻すほどの神器さえもが隠されているという情報だ。

 腕利きの情報屋、鼠のアルゴから、キリトがこの情報を買い、キリトが買ったということをクラインが買い、クラインが買ったという情報をまたキリトが買い、そしてその全部の情報をリアとツカサが買ったという、なんとも奇妙なことになっているのだが…。

 ともかく、キリトがこの情報をもとに、このボスを狙っていることはわかった。だが、リアとツカサは、この情報に対して半信半疑だった。

「死んだ人が、帰ってくるわけない」

 リアは小さくつぶやいた。唇をかんでいるリアを見て、ツカサもこぶしを握り締めた。


「それは…あたりまえだ」

 リアの右手は、胸元にあるなにかを握りしめるような形をしていた。現実世界に置いてきた、大切なものを。


「だけど…このまま放っておくことはできない」
「わかってる。キリトは、絶対に来るから…行かなきゃ…」


―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―

 自分でもわかってた。頭の隅では。死者が生き返るはずはないのだと。それでも、一ミリの希望があるのなら、俺はそれにすがりたかった。いや、すがることで、今この瞬間生きている意味を見出しているのかもしれない。


「キリト!」

 俺の名前を呼ぶのは、風林火山のリーダー、クライン。その後ろには風林火山のメンバーもいる。俺の跡をつけていたクラインは、一緒にボスモンスターを倒し、アイテムはドロップしたもの勝ちでいいだろうといった。一人で挑むのは危険だから、と。

 だが、それではだめなのだ。アイテムのことも、そして一人でボスを倒すということでさえも、今は彼らへの謝罪になるような気がしてならなかった。

 俺はクラインたちを無視していこうとする。が…それは阻まれた。

「キリト」

 ゆっくりと振り返る。そこには、この世界で誰よりも頼れる存在の2人が、白銀の雪の上にたたずんでいた。



「私たちもついていくよ」

「リア姉…ツカサ…」

 リアの優しい声と言葉に、胸の奥から何かがこみ上げ、すべてをぶちまけたい気持ちに駆られる。だが、俺はすんでのところで踏みとどまった。

「それじゃあ、意味ないんだよ…独りでやらなきゃ…」

 ひどくかすれた声だった。

「独りで抱え込むなよ」

 胸の奥がほっと温まるツカサの声。

「ドロップしたアイテムは何もかもお前にやる。だから、俺たち二人だけでも、連れて行けよ」

「でも…」



 その時…

 俺とリアがバッと後ろを振り返ったのはほぼ同時だった。索敵スキルに、後ろから近づく集団を感知したのだ。姿を現したのは…


「整竜連合…」

 クラインが呟く。攻略を担う巨大ギルドの一つであるが、今の状況ではあまりよくない。彼らもキリトと同じようにボスを狙ってきたのだろうが、一人で倒したいキリトと、メンバーで倒したい整竜連合。会うはずがなく、その先にあるのは対立のみ。

 だが…

「くそっ!くそったれがっ‼」

 クラインの叫び声が響き、彼は腰から曲刀を引き抜いて怒鳴った。

「行けッ、キリト!ここは俺らが食い止める!リアもツカサも、キリトについてってやれ!言っておくが、死ぬんじゃねえぞ!死んだらぜってぇ許さねえからな!」


「…ありがとう、クライン。このお礼はいつか必ず。…行こう、キリト、ツカサ君。もう時間がない」
「…ああ」
「……」

 3人で顔を見合わせてうなずき、ワープポイントへと足を踏み入れた。






  
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?割と長くなりそうなので、いったんここで切ります。

 こんな感じの設定で行きたいと思います。この件でかかわったのは、背教者ニコラスのところだけということで。

 そしてお気づきの方がいらっしゃるかはわかりませんが、僕の小説で初めて一人称が出てきました…!僕は一人称というのにものすごく苦手意識があったのですが、最近一人称の小説を読むことが多くなって、いいなぁと。いつか、最初から全部一人称視点のものも書きたくなりましたね。…需要があるかは別ですがw


 なんてことは置いといて、次回は、黒猫団完結編!お楽しみに! 
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