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約束と予言

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第二章

「存分に」
「ならわかるな」
「戦はすべきですか」
「戦をしてだ」
 そうしてというのだ。
「そなたの予言がどう言っていてもだ」
「それでもですか」
「ここはだ」
 何としてもと言うのだった。
「テーバイを攻めなくてはならない」
「では」
「攻めるからには勝つ、そしてそなたにもだ」
 ギリシアの勇者しか選ばれなかったアルゴー号の遠征に参加したこともあるアムピアラオスにもというのだ。
「参加してもらうぞ」
「そうですか」
「いいだろうか」
「ですが私の予言ではです」
 その顔を暗くさせてだ、アムピアラオスはアドラストスに言葉を返した。
「アルゴスは敗れ多くの者が死に」
「まさかそなたもか」
「はい、死ぬとです」
 まさにというのだ。
「出ていますので」
「だからか」
「私としては」
「この度の戦に反対か」
「何としても。私自身の出陣も」
 自分の予言で自分が死ぬと出ているのだ、それなら尚更だった。
 彼はテーバイ攻めは反対だった、こうした意味で賛成せざるを得ない王と諍いが起こった。だがここで。
 この度の戦に積極的なポリュネイケスという者がどうにかして戦をしたいと考えてだ、色々と考えていた。その中で。
 彼は自分に仕えている者達にだ、この話をされた。
「アムピアラオス殿が反対されていてです」
「テーバイ攻めの話が進まないな」
「はい、しかしあの方は」
「そうだったな、王との間に何かあれば」
 ポリュケイネスもこの話を思い出した。
「その時はな」
「はい、王の妹君でありあの方の奥方である」
「エリピュレ殿の言葉には従う」
「そうしなければならないのです」
「その約束があったな」
「ですから」
「ここはだな」
 ポリュケイネスはその目を鋭くさせて言った。
「奥方からか」
「戦に持っていきましょう」
「そうだな、戦車を動けなくするにはな」
「車輪か馬をですね」
「攻めるといい、ならばだ」
「はい、この度は」
「奥方をどうにかしよう」
 そして彼女に行ってもらおうというのだ。
「そうしよう」
「それでは」
「丁度私はいいものを持っている」
 ポリュケイネスは楽し気に笑って言った。
「あれをな」
「ハルモニアの首飾りですね」
「あれをエルピュレ様に差し上げ」
「戦のことをお願いしますか」
「そうしよう、あれならな」
 ハルモニアの首飾り、彼にとって切り札であるそれはというのだ。
「奥方も頷く」
「はい、あれだけの宝を差し上げますと」
「奥方も頷いてくれますね」
「それでは」
「あれを差し上げよう」
 こう言ってだ、実際にだった。
 ポリュケイネスはエリピュレにそのハルモニアの首飾りを渡した、そのうえで戦のことを頼むとだった。
 アムピアラオスも従わざるを得なかった、だが彼は妻にこう言った。 
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