夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その十五
「それで」
「今信じるか信じないか」
「どうする、今は無理でもだ」
自分を信じることがとだ、日毬は幸田に返した。
「何れでいい、私は待っている」
「それで信じられる様になったらだな」
「そうだ、江戸城に来ることだ」
自分がいるその城にというのだ。
「門を護る兵達にも言っておく」
「全部の門にだよな」
「その時は桜田門から来ると思うが」
江戸城の代名詞にもなっている門だ、この城の正門と言っていい見事な門であり彼等の世界では桜田門外の変も起こっている。
「しかしだ」
「全部の門にだな」
「伝えておく、何時でも来るといい」
「またでかいな」
「少なくとも私も大器になりたいとだ」
「思ってるんだな」
「そうだ、小器になるなぞだ」
それこそとだ、日毬は幸田に答えた。
「私の考えにない」
「そうなんだな」
「そうだ、それでは今判断出来ずともな」
「何時でもだな」
「来るといい、用件はそれだけだ」
「わかったぜ、じゃあな」
幸田は日毬の話をここまで聞いてだ、彼女に笑って話した。
「今すぐに答えるぜ」
「まさにか」
「おう、そうさせてもらうぜ」
「そうか。、わかった」
「あたしも吉君の決断についていきます」
麻友も日毬に言ってきた。
「吉君とはずっと一緒にいますから」
「そういえば二人共随分懇意の様だな」
「おいらが一つ上だが幼馴染みでな、ずっと一緒にいてな」
「高校でもだな」
「ああ、神戸の高校だがな」
八条学園高等部に通っていてもというのだ。
「一緒なんだよ」
「ずっと一緒にいるつもりです」
麻友は日毬に明るい笑顔で述べた。
「そうしていきます」
「わかった、そうした間柄だな」
「ですから」
「この者の決断についていくか」
「そうしていきます」
幸田を見て問うた日毬にすぐに答えた。
「何があっても」
「覚悟がいいな」
「覚悟がですか」
「何があっても信じた者についていく」
麻友のその決意と行動はとだ、日毬は彼女自身に答えて話した。
「それはだ」
「普通はですか」
「出来ない、見事だ」
「おいらもそう思うぜ、だからおいらもな」
幸田にしてもというのだ。
「信じてるんだよ」
「そのこともわかった、ではな」
「これから言うぜ、おいらの決断」
「うむ、聞かせてもらおう」
「それじゃあな」
幸田は日毬に対してにやりと笑ってだ、そうしてだった。
日毬に自分の決断を話した、それは一言だった。
第八十三話 完
2018・9・23
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