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悪魔の書

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第三章

「泉燗ていうらしいで」
「泉いうたら美奈代ちゃんか?」
「あの娘か?」
「あの娘のことかいな」
「いや、泉鏡花や」
 由香達が起きている世界で明治から昭和まで活躍した作家である、代表作は高野聖や天守物語が挙げられる。
「あの人やで」
「ああ、あの作家の」
「あの人かいな」
「誰かって思ったら」
「あの人何でも熱したのを食べてて」
 極端な細菌恐怖症故にそうしていたという。
「それでや」
「お酒もやねんね」
「沸騰させるまで熱して」
「それで飲んでたんやね」
「そうらしいで、それでお豆腐好きやったらしいけれど」
 今自分達が食べているそれもというのだ。
「これも湯豆腐やったらしいわ」
「ああ、今うち等が食べてる」
「これか」
「じゃあ今のうち等まんま鏡花さんやな」
「そうなるな、ほな明日な」
 ここでこうもだ、由香は飲みつつ言った。
「文学コーナーも行ってみるか」
「詳しくな」
「そうしてみるか」
「明日は」
「今日は通り過ぎただけやけど」
「そうしよな」
 こうしたことを話しつつだ、四人は夜は湯豆腐と熱燗を楽しんだ。そうして次の日はまた図書館に行った。
 そうして文学のコーナーに行ってみるとだった。
「?」
「何か通った?」
「今横な」
「通ったで」
 四人共自分達の横に何かを感じた、それで由香は言った。
「ちょっとこの辺り調べよ」
「そやね、何かおるみたいやし」
「それが神託かも知れんし」
「それやったら」
 こう話してだった、四人でだった。
 文学コーナーを中心としてその辺りを手分けして歩いて先程の横を通った何かを探した。するとだった。
 影がいた、その影はというと。
「ちっちゃい天使の影やったな」
「そやったな」
「この図書館におるモンスターか?」
「そうなんか?」
 四人は昼に図書館のロビーにある食堂で話しながら話した、メニューはサンドイッチに牛乳である。サラダもある。
「何らかで図書館に忍び込んできた」
「出て来たんか?」
「うち等の横通ったか」
「そうなんやろか」
 四人で一つの席に座ってサンドイッチを食べつつ話す、ハムサンドに卵サンド、野菜サンドにカツサンドと種類も量もかなりだ。
 そのサンドイッチを食べつつだ、由香は三人に考える顔で言った。
「ここは図書館の人に聞こうか」
「ああ、竹立さん」
「あの人に聞こうか」
「何でも聞いてくれって言ってたし」
「そうしよか、ここは」
 こう言って実際にだった。
 四人は食後その司書の人に聞いた、するとだった。
 すぐにだ、司書の人は四人にこう言った。
「まさかと思うますが」
「あっ、心当たりあります?」
「その天使の影に」
「竹立さんも」
「はい、図書館は様々な蔵書があり」
 そしてというのだ。 
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