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夢幻水滸伝

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第八十三話 江戸っ子その十二

「うちは道場じゃないぜ」
「そうだよね」
「それで頼もうかい」
「何か変だね」
「ああ、変でもな」
 それでもと言うのだった。
「お客さんみたいだな」
「うちにお客さん来るなんてね」
「はじめてだな」
「そうだよね、けれどね」
「お客さんならな」
 それならと言うのだった。
「それじゃあな」
「ああ、今からね」
「お客さん招いてな」
 そのうえでというのだ。
「会うか」
「そうしようね」
 二人で話してだ、そのうえで。
 幸田が家の門に出てそこを開いて客と会った、客は虚無僧の姿をしていた。だが幸田はすぐにだった。
 その虚無僧を見てだ、こう言った。
「あんた虚無僧じゃないよな」
「わかるか」
 女の声だった、凛として澄んでいてそして強い響きの十代の女の声である。
「やはり」
「雰囲気でな、普通の奴じゃないな」
「安心しろ、刀は持っていない」
「刀かい」
「それでわかったか」
「ああ、それでおいら達と話をしに来たんだな」
「そうだ、だから来た」
 女は幸田に即座に答えた。
「ここにな」
「わかったぜ、じゃあな」
「今からだな」
「中に入ってくれ」
 幸田は女に微笑んで答えた。
「そしてな」
「話をだな」
「しような」
 こう言って虚無僧を入れてだった、そのうえで。
 幸田は麻友と共に屋敷の応接の間で向かい合った、女は二人の前に正座して座しているが彼女の方から言ってきた。
「では今からだ」
「ああ、その被りものをな」
「取らせてもらう」
 自分から言うのだった。
「今からな」
「部屋の中で被ったらいけねえからな」
「そして私の顔も見せたい」
「そうしてだな」
「私が何者か見せよう」
「ああ、けれどだな」
「安心してくれ、私は不意打ち等はしない」
 女は幸田達にこのことも断った。
「決してな」
「あんたはそうした人だな」
「そう思ってくれるのなら有り難い」
「あれっ、吉君この人が誰かわかってるんだね」
 麻友は幸田と女のやり取りからそれを察して彼に問うた。
「そうなんだね」
「ああ、迎えてすぐにわかったさ」
「あたしは誰かわからないよ」
「そうか、けれど気配は感じるだろ」
「それはね」
 麻友にしてもだった。 
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