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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその十三

「だが行き来はじゃ」
「限りますか」
「堺や横浜でも決まった場所、決まった湊にじゃ」
「定めて」
「港は増やすこともあるが」 
 この考えもあるがというのだ。
「しかしじゃ」
「耶蘇教のことは」
「許さぬ、ただ交易だけをな」
 ただそれだけをというのだ。
「やっていく」
「そうされますか」
「必ずな、交易の利は得るが」
「耶蘇教は別にしますか」
「あと南蛮の学問もな」
 こちらもというのだ。
「やはり耶蘇教は駄目じゃが。教え自体はどうでもよいが」
「それでもですな」
「学問はじゃ」
「どんどん取り入れる」
「エスパニアのものもポルトガルのものもな」
「そしてですな」
「南蛮の他の国のものもじゃ」
 エスパニアやポルトガルに限らないというのだ。
「取り入れる」
「そうされますか」
「うむ、学問はせねば国自体が遅れる」
 信長はこうも考えていた、学問が国を発展させるとだ。
「これまでもそうだったな」
「本朝にしましても」
「そうじゃな、それでじゃ」
「学問は仕入れていきますか」
「そうする、学者達にはどんどん学ばせる」
 このことはだ、信長ははっきりと述べた。
「お主も学びたいならな」
「学んでよいですか」
「国は休むことなくじゃ」
「学びそうして」
「大きくなるべきじゃ」
 信長はこのことも確かな声で述べた。
「だからな」
「それで、ですな」
「うむ、だからじゃ」
「書はですな」
「入れよ、南蛮舶来の品もな」
「仕入れていきますな」
「付き合いは長くしていきな」
 今度はだ、信長はこう述べた。
「そのうえでじゃ」
「利は得たいですな」
「こちらも売るがな」
「本朝にしましても」
「買う」
 そうすると言うのだった。
「若し売ってこちらだけが利を得てはな」
「相手は離れます」
「そうじゃ、お互いが得をして損をする」
「それが商いです」
「その通りじゃ、わしは商いはわかっているつもりじゃ」
 武家でもというのだ。
「幼い頃から商いを見てきたからな」
「尾張のご領地で」
「それで銭の大事さも学んできたが」
 それだけでなく、というのだ。
「そこでじゃ」
「商いのこともですな」
「学んだ、利益はな」
「お互いが得てこそです」
「続く、だからな」
「南蛮の方にも」
「儲けてもらう、あと銀や金が多く出ることはな」
 このこともというのだ。
「考えておこう」
「そして多く出さない様にしますか」
「出るのなら入れることもな」
「されますか」
「そういえばエスパニアは銀を多く持つそうだな」
「その様ですな」
「それならな」
 まさにというのだ。
「こちらが入れることもな」
「考えておきますか」
「そちらもな、出さぬ方がいいが」
「出るのならば」
「入れる、そうしていくぞ」
「わかり申した」 
 十字軍の話だけでなく交易の話もしてだった。信長は利休の茶を飲んだ。天下の政はさらに進めていっていた。


第三十話   完


                    2018・12・16 
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