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珍獣の子供

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第三章

「僕にくれたんだ、最初はお父さんもお母さんもいいって言ってたけれど」
「それがでやんすか」
「動物園に預けなさいて言うんだ」
「この島の動物園でやんすか」
「何か政府が出来たから」
 男の子は太平洋を統一した有島達もその中心にいる統一政権のことをこう呼んだ。
「村長さんから政府の偉い人にお話してもらって」
「それで、でやんすか」
「この子を動物園に引き渡せって言うんだ」
「そうでやんすか」
「お家じゃ飼えない子だってわかったからって」
「それで今困ってるのね」
「僕ホワイトとずっと一緒にいたいんだ」
 この気持ちをだ、男の子は有島そして宮沢に話した。
「凄くね」
「それで、でやんすか」
「今どうしようかって考えているけれど」
「その子は見たところ」
 ホッキョクミズライオン、男の子は知らないその名前を心の中で呟いてだ、遠藤はそのうえでこう言った。
「大人しいでやんすね」
「凄く大人しいよ、僕にも懐いてね」
「それででやんすな」
「ずっと一緒にいたいんだ」
 これが男の子の考えだった。
「本当にね」
「その子に噛まれて引っ掻かれてもいいでやんすね」
「よくそうされるけれど友達だから」
 それでとだ、男の子は有島に答えた。
「いいよ」
「そうでやんすか」
「それ位は。猫だってそうだし」
「わかったでやんす、じゃああんたがじっくりと」
「じっくりと?」
「考えて。そして色々な人から聞いて」
 そうしてとだ、有島は目の底に深い考えを隠して男の子に話した。
「決めるでやんす」
「色々な人からなんだ」
「お父さんお母さんに学校の先生や村長さん、役場の人達にもその子を見せて聞いて」
 そしてというのだ。
「考えるでやんす」
「僕がだね」
「そうするでやんす
「もう僕の考えは決まってるよ」
 必死の声でだ、男の子は有島に答えた。
「もうね」
「その子と一緒にいたいでやんすね」
「死ぬまでね」
「けれどじっくりとでやんす」
「ホワイトを皆に見せてお話をして」
「それでお爺さんはどうしてるでやんす?」
 有島は男の子にホッキョクミズライオンを渡したその老人のことも聞いた。
「それで」
「寿命で死んだよ」
「そうでやんすか」
「ホワイトを僕にくれてから」
「ならその人からは聞けないでやんすな」
「そうだね」
「なら他の大人の人達に聞くでやんす」
 考えが決まっていてもとだ、有島は言うのだった。
「それがあっし達があんたに言うことでやんすよ」
「どうしてもかな」
「絶対にそうすべきでやんす」
「じゃあ」
 男の子は熊のその顔を頷かせてだった、そのうえで。 
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