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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその九

「殿も既にですか」
「聞いておった、ここでも南蛮の者達が関わっておるか」
「あちらにも奸民がいますな」
「それも奸民の中でもな」
 まさにとだ、信長は利休に話した。
「南蛮、スペインやポルトガルの者達は性質が悪いのう」
「民を奴隷として売り飛ばすこともです」
「しておるな」
「その様です、本朝でもしておる様ですし」
「領内で全ての者達に命じておる」
 それも厳しくだ。
「他の国の者達にな」
「誰も売ってはならぬと」
「売れば火炙りか鋸引きじゃ」
 つまり極刑に処すというのだ。
「そうする」
「そうするからですな」
「そうじゃ、民は奴婢にさせぬしな」
「既に奴婢になった者達は」
「急いで買い戻す」
 そうすると言うのだった。
「そうして救い出す」
「そうされますか」
「さもないとじゃ」
「天下人ではありませぬか」
「民を守ってこその天下人であろう」
「まさに」 
 その通りだとだ、利休も答えた。
「若しそれをせねば」
「その時点でな」
「天下人ではありませぬ」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「このことはな」
「これよりですな」
「売られた民達を全て買い戻す」
「南蛮の者達に話して」
「そうする、全員救い出す。このことは猿がな」
 先程話に出した羽柴がというのだ。
「重臣達を集めて話した中でな」
「特にですか」
「何時になく怒りを見せてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「わしに是非共じゃ」
「言われましたか」
「そうしてきたわ」
「では羽柴殿は」
「民をむしろわし以上にじゃ」
「奴婢にしたくないのですな」
「他の者も断じてと言っておったが」
 それでもというのだ。
「他の誰よりもな」
「強く言われていて」
「真剣にじゃ」
 まさにというのだ。
「わしにも言ったわ」
「左様でしたか」
「それを見るとな」
「殿にしましても」
「猿が民をどう思っておるのかわかった、竹千代もじゃ」
 家康もというのだ。
「それは何があろうともとな」
「言われていましたか」
「うむ、やはり民はな」
「一人も奴婢にさせぬ」
「本朝の中もそうじゃが」
「外の国々でも」
「それはさせぬわ」
「天下人として」
「わしは絶対に守る」
 何としてもというのだ。
「そのことお主にも言うぞ」
「はい、私めもです」
 利休は目を閉じ信長に静かに述べた。
「民を奴婢にされるなぞ」
「絶対にじゃな」
「何があろうとも」
 まさにというのだ。 
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