邪眼の少女

　　　　　　　　　　　　　　　邪眼の少女
　萩原宮子と石川雪路は宮子の神託で今は日本の佐賀から少し離れた村に来ていた、雪路はここでこんなことを言った。
「佐賀城にも行ったしね、こっちの世界でも」
「雪路ちゃんの地元だすな」
「いやいや、私は長崎よ」
　そこはだ、雪路は断った。
「佐賀じゃないから」
「だからなのね」
「そう、佐賀城を見てもね」
　それでもというのだ、先程二人でその見事な天守閣にも登っている。
「地元とはね」
「思わないのね」
「長崎はグラバー園よ」
「そこだというのだ。
「あくまでね」
「そうなのね」
「ええ、それでだけれど」
　雪路の方から宮子に話した。
「これからね」
「私の神託についてだすな」
「今からそれだけれど」
「この村だすか」
　神託に従ってここまで来たがとだ、宮子は雪路に述べた。
「そうだすか」
「そうかもね、じゃあね」
「それならだすな」
「この村の中を歩いて」
　そうしてとだ、今度は雪路が宮子に述べた。
「調べようね」
「神託のことを」
「そうしようね、昔ながらの村ね」
「ええ、この辺りのね」
　宮子は雪路と共に村を見回してから応えた、広い田畑に木造の家や物置があり農民達が働いている。人こそ人間以外にも様々な種族がいるがだった。
　如何にも日本の村だ、だがここで宮子はこうも言った。
「東北とは違うだすな」
「ああ、東北は雪が多いから」
「だからね」
　それでというのだ。
「家や物置の屋根の形が違うのよ」
「三角ね」
「雪が積もってもその重さでお家が潰れない様に」
　まさにその為にというのだ。
「その形よ」
「そうよね、東北は」
「秋田もだすよ、けれどこうした村もね」
「いいわね」
「その景色も楽しみながら」
「神託の情報を集めていきましょう」
「それじゃあね」
　こう話して二人で村の中を巡っているとだった、すぐにだった。
　村長の娘を異変が襲っていると聞いた、それで二人は冒険者であると偽ってそのうえで村長初老のミノタウロスの彼から話を聞いた。
　村長は二人を自分の屋敷の中に案内してその一室で茶とお菓子を出しつつ話した。
「実は娘がです」
「とんでもないことになってると聞いただす」
　宮子は出された饅頭を出しつつ応えた。
「それは本当だすか」
「はい、そのことですが」
　どうにもという顔でだ、村長は宮子の問いに答えた。
「誰が声をかけてもです」
「返事がないだすか」
「黙ったままで」
「そうだすか」
「それで起きて最初に見たものを寝るまで離しません」
「寝るまでだすか」
「はい、石でも猫でも草でも」
　それこそ何でもというのだ。
「起きて最初に見たものを」
「そうですか」
「今は布団をです」
「起きて最初に見て」
「それを抱き締めてです」
　そのうえでというのだ。
「じっとしています」
「ならです」　
　雪路がそう聞いて述べた。