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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第29話:Antlion

 
前書き
次はダチョウだ。 

 
西暦21XX年:5月15日未明。

一発の超巨大爆弾が一つの国を死滅させた……。

だが、この爆弾の発射場所の発見は世界中のあらゆる防衛組織を以てしても不可能であった。

しかし、唯一イレギュラーハンターだけはその場所の確定に成功していた。

『エックス、聞こえる?マップデータを送信したけどそこは砂嵐が酷くて視界は最悪よ。岩などの障害物に気をつけて!!通信妨害がされているのか、電波状況も段々悪くなってきてるから通信も出来なくなるわ』

「分かった。気を付けるよエイリア」

エックスはケインの指示でチェバルに乗り込んで爆弾が発射されたオム砂漠を駆けていた。

「凄い砂嵐だな…問題の場所はこの砂嵐の先なわけだが、砂嵐が酷すぎて新しいヘッドパーツのレーダー機能も役に立ちそうにないな。」

ライト博士からの説明は無かったが、プログラムの送信と共にヘッドパーツの能力の詳細が電子頭脳に送られており、エックスはヘッドパーツの能力を理解することが出来ている。

ヘッドパーツにはエネルギー感知器の精度を大幅に強化したエネルギートレイサーが搭載されており、かなりの距離が離れていてもそのエネルギー反応を逃さない。

しかし、砂嵐によって強化されたエネルギートレイサーも役に立たない。

「酷い砂嵐だが、このチェバルの機動力なら突破出来るはずだ!!」

機動力を大幅に強化したチェバルならどれだけ酷い砂嵐でも突破は可能なはずなのでエックスはチェバルで突撃した。

一方、シグマの基地ではゼロの調整が行われている部屋で2人のレプリロイドが会話していた。

「この計画が成功すればこいつも用なしだな。」

「何だよ、そんなに強いボスがいるのかよ?」

「知んねえのか?オストリーグさっ」

「なるほどな」

その名を聞いた瞬間、ゼロが僅かに反応したことに2人は気付かなかった。

「奴は親友のイーグリードをエックスに惨殺されたと吹き込まれてるから生半可な執念じゃねえぞ」

「実際はイーグリードはゼロに破壊されて、最初はシグマ様に歯向かっていたことも知らずにな」

「「“馬鹿と鋏は使いよう”って奴かーーーっ!?」」

2人が笑いながら言った瞬間にゼロは完全に意識を取り戻してケーブルを外した。

「良いことをおしえてやろう。」

「ゼ…ゼロおぉっっ!!?」

「“馬鹿”には使い道があるが、貴様達みたいな“屑”には無いんだよな。」

そう言った瞬間、ゼロの拳が叩き込まれた。

そして一方、オム砂漠にいるエックスは凄まじい風速に振り回されていた。

「くっ…何て風速だ。流されてしまう。チェバルのレーダーがおかしくなり、ヘッドパーツのエネルギートレイサーも正常に機能しないとなると、この砂嵐は自然発生の物じゃないな……ん!?」

砂嵐のせいで良く見えなかったエックスは目の前に障害物らしき物があることに気付くのが遅れてしまった。

「くっ!駄目だっ!避けきれない!!」

急いで曲がろうとするが、元々ターン性能に難があったチェバルでは回避出来ずに激突してしまった。

エックスは激突の直前に脱出したので無事であった。

「しまった…チェバルが壊れてしまったこれでは移動が難しくなって…ん?」

しばらくすると、砂嵐が止んで澄みきった青空がエックスの目に映った。

「空だ…そうか、これは砂嵐を起こすための装置だったのか…こんなに青い空を隠すなんて……もしルインがいたら、あの空戦用のアーマーで飛び回っていただろうな」

そんな彼女の姿を想像してエックスは思わず笑みを浮かべて砂嵐発生装置を見遣ると、あることに気付いた。

「これは基地?どうやらこの装置は基地に繋がっていたようだな」

エネルギートレイサーで近くに敵がいないかを確かめると、基地へと飛び降りた。

場所は戻ってシグマの基地ではゼロが相手を殴り飛ばしてオストリーグの居場所を吐かせていた。

「さっさと言わないから痛い目に遭うんだよ。オム砂漠か…この基地からだと此処から5~6時間か…あいつの怒りを受けなければならないのは俺だ。あいつの為にもオストリーグは俺が止める!!」

飛行艇を奪うために駆け出すゼロだが、目の前の光景に足を止めた。

「そんな簡単に行かせてはくれないか。何せ俺はエックスに対しての切り札みたいな物だからな」

レプリロイドとメカニロイドの大軍がゼロに迫ってくるが、ゼロは不敵な笑みを浮かべて背部のバックパックから新装備であるビームサーベル・Zセイバーを抜いた。

そしてオム砂漠の地下基地に侵入したエックスはメカニロイドを返り討ちにしていた。

「これで粗方片付いたな…流石に基地の中はガードが固いな…次が発車される前に爆弾を破壊しなくては」

ダッシュからの跳躍で飛び越えようとするが、ファーストアーマーを纏っていたことが災いし、潜んでいたメカニロイドがエックスの前に現れた。

「ぐはあっ!!」

そして狙撃されてしまい、エックスは鋭利なトゲ床に落ちそうになる。

「ストライクチェーン!!」

咄嗟にストライクチェーンを使うものの、ほんの僅かだけ届かない。

「まずい、このままでは…くそっ!!」

このままでは串刺しになってしまう。

しかしその時、ファーストアーマーが解除され、エックスのフットパーツが変化した。

フットパーツに増設されたバーニアによって空中であるにも関わらずにダッシュ移動が行われた。

「くっ!!」

突然のことに驚きながらもエックスはストライクチェーンでメカニロイドを破壊した。

「このフットパーツは…?」

『エックスよ…』

「ライト博士!?」

突如聞こえてきたのはライト博士の声で、どうやら彼がエックスにフットパーツを与えて助けてくれたようだ。

『戦いを拒むお前をパワーアップするのは忍びないが……しかし許しておくれ…お前が正しい心を持ち続けていれば、きっとその“力”がお前を導いてくれるじゃろう。そのフットパーツを装着したことで空中でのダッシュ移動…エアダッシュが出来るようになり、機動力が大幅に向上する。これにより今まで進むのが難しかった場所への移動も可能になるはずじゃ。辛いかもしれぬが今は耐えて欲しい…エックス』

ライト博士の説明が終わるのと同時にエックスにメカニロイドの軍勢が迫る。

即座にファーストアーマーに換装するとラッシングバーナーを発射して薙ぎ払う。

「分かっていますライト博士……俺は絶対に道を誤りません。あなたとの約束のために、そして俺の信じる“正義”の名の元に!!」

一方、ゼロの方でも激闘が繰り広げられていた。

セイバーでメカニロイドを薙ぎ払いながら周囲を見回すと溜め息を吐いた。

「全く、俺1人に続々と戦力を投入しやがって。気持ちは分かるがな、そんなに俺が怖いなら甦らせるんじゃない!!」

強化されたことでより強力になったアースクラッシュを炸裂させる。

そしてエックスも巨大爆弾のある場所に辿り着き、発射されそうな爆弾に取り付いて破壊を試みる。

「ここで2発目を発射させてたまるか!!絶対に止めてみせる!!」

チャージショットを放って爆弾を破壊すると、爆弾は大爆発を起こしてエックスは外に弾き飛ばされる。

「くっ!!」

ファーストアーマーを纏っていたことで爆発によるダメージは最小限に抑えられたエックスは閉じていた目を開くと視界に広がる大空に目を奪われる。

「(これは凄いな…青くて、広く。力強さと優しさが感じられる…成る程、空戦に特化したレプリロイドが何より空を飛ぶのを好む理由が分かった気がする)」

そして地面に落下したエックスは清々しいくらいに晴れ渡った青空を見て守ったことに誇らしげな笑みを浮かべたのであった。 
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