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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百七話 イギリス文学と日本その十一

「その鬱がね」
「酷くなったのね」
「もうどうしようもなくなってたみたいだよ」
「辛いイギリス留学だったのね」
「あの人癇癪持ちでいてね」 
 坊ちゃんみたいに喧嘩か何かで川に飛び込んだこともあったらしいし息子さんをステッキで殴り回したり奥さんを殴ったりとそうした話もある。
「被害妄想で」
「鬱だったの」
「躁鬱病っていうのかな」
 癇癪を躁と考えてのことだけれど違うかも知れない。
「そうした気があって」
「それでなの」
「イギリス時代はその鬱が酷くなった結果ってことで」
「大体わかってきたわ」
「そうだね、まあとにかくね」
「ロンドンの夏目漱石さんは食べものどころじゃなかった」
「結論としてそうなるね」
 そうとしか思えない、鬱になったのは日本の食事から離れたことも一因だったかも知れないけれどそれでもだ。
「あの人については」
「留学もよし悪しね」
「そうよね」
 モンセラさんもテレサさんもこの結論に至った。
「そうなるなら」
「私達は幸せにやってるけれど」
「それでもね」
「夏目漱石さんみたいな場合もあるのね」
「うん、八条荘の皆はいい感じだと思うけれど」
 管理人の僕が見る限りそうだ。
「けれど本当にね」
「その人それぞれで」
「よし悪しで」
「私達みたいに楽しく過ごせる人もいれば」
「夏目漱石さんみたいになる人もいるのね」
「そこはそれぞれだよね、しかし」
 ここで僕はこうも思って言った。
「漱石さんが行った時のロンドンは最盛期だったからね」
「ああ、大英帝国の」
「文字通りそんな時期で」
「当時の日本は」
 その大英帝国と比べたらだ。
「ほんの小国だったんだよね」
「今じゃ日本の方が上だけれどね」
「それも相当に」
「日本ってイギリスとフランス、イタリアを合わせた位の国力あるから」
「もうイギリス超えてるわね」
「今はね。けれどその時は」
 明治の漱石さんが留学した時なんてだ。
「もうね」
「全然違って」
「日本の方が小国で」
「そんなとこから留学に来た」
「じゃあおのぼりさんみたいだったのかしら」
「そうかもね、それで東郷平八郎さんも行って」
 海軍の将来を担うべき人材としてだ。
「この人はかなり凄いものを学んでね」
「日本に帰ってきて」
「それで戦争にも勝てたのね」
「日清戦争、日露戦争って」
「どっちの戦争にも勝てたのね」
「若しあの人がいないと」
 東郷平八郎という人がだ。
「ちょっとわからないところがあるね」
「特に日本海海戦ね」
「あの海戦よね」
「いや、黄海海戦だね」
 日本海海戦の大勝利は確かに大きいけれどだ。
「凄かったのは」
「そうだったの」
「そっちの海戦の方が凄いの」
「何しろ撃った砲弾が」
 海戦の時のそれがだ。
「ロシア海軍の先頭の船の艦橋を直撃して」
「あっ、運がいいわね」
「直撃なんて」
「しかもね」
 たまたま先頭の船の艦橋に当たっただけでも凄いけれどだ。 
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