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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第23話:Wiseman

 
前書き
Dr.ケインは人格者ですよね。

ゲームでは影薄いけど 

 
最強最悪のイレギュラー・シグマの復活はハンターベースを震撼させた。

誰もがシグマの脅威に恐怖を抱く中、エックスは懸命にシティ・アーベルで暴れているイレギュラーを処分していた。

「まさかシグマが復活するなんて…」

オペレーターとしての一仕事を終えたエイリアが、ドリンクを飲みながら呟いた。

あれだけの犠牲を出して掴んだ平和が簡単に崩されたことにエイリアは虚しい物を感じた。

「うむ、シグマのことも色々と考えねばならんが…やはり一番の問題はエックスじゃのう」

「エックスが?」

ケインの言葉にエイリアは疑問符を浮かべる。

エイリアから見てエックスは大丈夫そうに見えたが、ケインからすれば違うのだろうか?

「エックスは一度シグマを倒しておる。じゃから周囲は自然にエックスに期待してしまう。エックスは真面目過ぎるからのう…その重みに押し潰されてしまう可能性も無くはない」

「っ!そう…ですね。それを失念していました…多分エックスは無意識にそれを感じているんでしょうね…自分に向けられている期待に」

真面目過ぎる性格のためにエックスは平和のために戦おうとするが、周囲の期待に気付かぬうちにプレッシャーを感じているのかもしれない。

「まあ、わしらはわしらの出来ることをしようではないかエイリア。」

「はい、私もエックスのオペレートを頑張ります」

「まあ、それも必要じゃろうが…一番大切なのは笑顔で帰ってきたエックスを迎えてあげることじゃな」

「笑顔…ですか?」

ケインの言葉にエイリアは首を傾げるが、ケインは笑みを深めながら説明する。

「誰でも笑顔で出迎えてくれれば嬉しいもんじゃよ。それだけでも帰って来れたと安心出来るし、特にお前さんは美人じゃからのう。美人のお出迎え程、男が喜ぶものはないわい。カッカッカッ!!」

「からかわないで下さいDr.ケイン…でも…そうですね。エックスが帰ってきたら笑顔で迎えようと思います」

呆れながら言った後、エイリアは優しく微笑んでドリンクの紙コップを捨てる。

「うむ、それがええ…それにしても…」

窓から見える外ではここ数日、異常気象が起こっている。

急激に温度が上がったかと思えば大雨が降るなど全く安定していない。

「エックスは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫じゃよ。これくらいの熱さと雨で参るような奴ではない。それよりエイリア」

「はい?」

キリッとした表情を浮かべるケインにエイリアの表情も自然と引き締まるが、次の言葉で崩れることとなる。

「釣りにでも行くか」

「はあ?」

疑問符を浮かべるエイリアの手を引っ張って外に連れ出すケインであった。

そして時は数日前に戻り、エックスはイレギュラーの掃討を終えてハンターベースに帰投しようとしていたのだが、灼熱地獄とも言える熱さに汗を流しながら街を駆けていた。

「何て暑さなんだ!!」

周囲を見渡すと、あまりの暑さに倒れている人間もいるくらいだ。

「(それでも今はまだいい…だが、このままこの暑さが続けば高熱で道路とレールが歪んで大事故が起きる可能性も出てくる…早くこの急激な温度上昇の原因を突き止めなければ…ん?)」

顔にかかった水滴にエックスが足を止めると、雨が降り始めた。

「雨だっ!!」

「助かったぞーっ!!」

人々が歓喜する中、エックスは違和感を感じていた。

雲一つ無かったと言うのにいきなり雨が降ってきたことに。

エックスの不安は的中し、猛暑に続く雨は豪雨となってシティ・アーベルは大洪水に見舞われる。

事態を重く見たエックスはハンターベースに戻らずに原因究明のためにあちこちの気象関係の施設を駆け回り、ようやく原因を突き止めた。

「あの山頂のドーム…気象コントロールセンターがシグマの手に落ちていたのか!!…うわあっ!?」

流れていく車を足場にして先に進んでいくが、雨で濡れていた為に足を滑らせて水の中に落ちてしまう。

「大丈夫?エックス!?」

「え?」

エックスに向けて差し伸べられた手と慌てたような聞き覚えのある女性の声に顔を上げると杖を釣竿代わりにしているケインと傘を広げてケインに雨水がかからないようにしながらエックスに手を差し伸べているエイリアの姿があった。

「ケイン博士…オペレーターのエイリアを巻き込んで何をしてるんですか…?」

「見て分からんか?釣りじゃ釣り!!釣りは良いぞ~昔の娯楽と言うことでやる者はいなくなったが、心が落ち着くからのう」

杖に違和感を感じて引き上げると釣れたのは機能停止したメカニロイド…メットールであった。

「食えるもんは釣れんがの~ほれ、エイリア。お前さんにやろう」

「ど、どうも…(要らない…)」

メットールを受け取ったエイリアはメットールをどうしようかと頭を悩ませるのであった。

「おおっ!大物じゃ!!」

次に釣れたのはかなりの大きさのメカニロイドである。

「って、どうするんですかそれ!?流石に私は持てませんし置き場所が…」

「あ、あの…博士。俺は急いでいるので失礼します。ごめんエイリア」

「え?ちょっとエックス!!」

釣ったメカニロイドの扱いに困っているエイリアに悪いと思いつつも気象コントロールセンターに向かうエックス。

「何じゃい!行ったのか。せっかちな…まっ…ここは一つお手並み拝見と行くかの~」

「あの、Dr…それ…どうするんですか…?」

メカニロイドを指差すエイリアにケインは表情を引き締めながら振り返る。

「ふむ…エイリア…」

「リリースして下さい」

押し付けられそうな気がした為にリリースさせるエイリアであった。

気象コントロールセンターに辿り着いたエックスは施設内に潜入する。

施設内では警備用メカニロイドが好き勝手に暴れ回っていた。

「好き勝手にやってるな…どけえっ!!」

外の状態を考えて全てを相手にしていたら間に合わなくなるためにエックスはメカニロイドを無視して先に進む。

「ん?急に霧が出てきたな……」

しばらく進むと霧が出てきて視界が悪くなり、更に進むと豪雨となる。

「このドーム内の天候はそのまま街の天候そのものだ……早くコントロールタワーを解放しなくては!!」

気象コントロールセンターの心臓とも言えるコントロールタワーの入り口をショットで穴を開けて潜入すると、コントロールルームに向かう。

「コントロールルームはどこだ…?エイリアに…おっと、エイリアはケイン博士に巻き込まれていたんだった……ん?あそこか」

しばらく走り回るとコントロールルームに辿り着くが、扉が開いていることに気付いた。

「(開いてる…?誰かが暴れているぞ…)」

室内の様子を伺うと、植物のヘチマを模したレプリロイドが踊っていた。

「ダン・ダン・ダぁぁぁぁぁンス!!ダン・ダン・ダぁぁぁぁぁンス!!……おや~?」

踊ってる最中にエックスの気配に気付いて動きを止めるレプリロイド。

「チッ」

急いで身を隠してバスターを撃てるようにするエックス。

「お客さんかな~?こっち来てあんたも踊らねえかい?描いてある絵の通りに天気が変わる魔法のステージよっ!!おっと、自己紹介がまだだったっけ?俺はワイヤー・ヘチマール。シグマ様に用意してもらったこのステージでダンスしてるんだよ。ころころ天気が変わって楽しいぜっ!!あんたが踊んないなら俺が踊っちまうぜ~~~っ!!」

ヘチマールが踊り出した瞬間、エックスはショットで壁を吹き飛ばす。

「自分は踊りながらやっていることは質の悪い破壊活動か……」

「踊らねえで戦うってのかい?言っとくが俺は強えぜーっと」

ポーズを決めるヘチマールにエックスはチャージしたバスターを向けると、即座にチャージショットを放った。

「貴様は自分のしたことが分かっているのか!!」

「な~んだ、普通の戦い方でやるの?芸がないね」

ヘチマールは先端に刃がついた蔓を回転させてチャージショットを防いだ。

「(くそっ、あの蔓は防具だったのか)お前を倒してシグマの居所を聞き出す!!」

「おっ!ギャンブルってわけかい?乗った!!」

次の瞬間、ヘチマールが蔓を放ってきた。

「え!?」

エックスは蔓を間一髪でかわし、放った蔓を元に戻すとヘチマールはもう1本の蔓を出す。

「さぁ~~~今度はこっちの番だっ!!」

今度は2本の蔓を放ち、エックスはそれを素早くかわしていく。

「この蔓は攻防一体の武器なのか!だが、攻撃に転じている今なら防御出来ないはず!!」

攻撃をかわしながらチャージショットをヘチマールに放つ。

「は~ん?」

ヘチマールは軽快な動きでエックスのチャージショットをかわしていく。

「ちょこまかと…動くな!!」

着地の瞬間を狙ってチャージショットを放った。

「おっ!?」

「やったか!?」

タイミング的にかわしようがなく、チャージショットによる爆発でヘチマールに直撃したと思ったエックスだが…。

「なーにやってんだか、分かってねーなー。大事なのはリズム!リズム!!今からダンスのレクチャーをしてやるぜっ!!」

当たる直前に蔓を天井の植物の蔓に絡ませて上に移動することでチャージショットを回避していたのだ。

そして頭部の球体をばら蒔いて複数の先端が尖った蔓を生やす。

「くっ!!邪魔だ!!」

このままでは満足に動けないためにチャージショットで蔓を一網打尽にする。

「避けろよなぁ~~っ」

「ぐあっ!!」

攻撃の隙を突いてヘチマールはエックスにのし掛かって床に叩き付ける。

「弱っちーなぁ……ん?」

「ぐっ…何処までもふざけたような真似を…」

ふらつきながらも立ち上がるエックスにヘチマールは再び蔓を放った。

「ほれっ」

「同じ手を喰らうかっ!!」

蔓をかわすエックスだが、ヘチマールの狙いはそれではない。

先端が壁に深く突き刺さり、蔓を元に戻すとエックスに向かって凄まじい勢いで向かってくる。

「ひょほ~~ん」

そのままヘチマールの体当たりを喰らって吹き飛ばされるが、何とか体勢を立て直してバスターを向ける。

「くそっ…負けない…負けられない!!」

チャージショットを放って壁に刺さった蔓の先端を外して隙を曝していたヘチマールに直撃させた。

「どああああっ!!」

まともに受けたヘチマールは床に叩き付けられ、転がっていく。

「はあ…はあ…はあ…」

ようやく一撃を与えて荒く息を吐くエックスだが、ヘチマールは震えながら起き上がる。

「酷いよ……本気出すなよーっ!!くそぉ~~~…くそぉーーっ!!馬鹿ーーーっ!!」

ヘチマールのボディが赤く染まったかと思ったら、室内に雷撃が降り注ぐ。

「うわっ!!ヒステリーめっ!!」

いくつか掠りながらも雷撃をかわしてヘチマールに足払いをかけて転倒させると、ZXセイバーの切っ先を向けた。

「終わりだ。さあ、シグマの居所を教えろ…」

次の瞬間、背後から狙撃されてエックスは吹き飛ばされた。

「ぐっ…だ、誰だ…」

「ちょ!?Dr、何しているんですか!?」

「おー、すまんすまん。ちいーっと威力が強過ぎたかのう?」

「当たり前です!!エックスでなかったら大破してましたよ!?ファーストアーマーがあったからあの程度で済みましたけど!!」

恐ろしい会話を聞きながら狙撃された方向を見遣ると、そこにはケインとエイリアの姿があった。

「ケイン博士、それにエイリアも…どうしてここに…」

「どうして?随分と情けなくなったのうエックス。ヘチマールを良く見てみいや」

ケインに促されてエックスはヘチマールを見遣ると、ヘチマールは怯えた表情をしていた。

「(怯えている…?いや、騙されるな!こいつはシグマの…)」

シグマの部下であることがエックスに警戒心を抱かせるがそれを見たケインが一喝する。

「戯けっ!!先の戦いでゼロとルイン達を失いながらお主が学んだのは殺すことだけなのか!!?」

「っ!!」

「…………」

ケインの言葉に俯くエックス。

そんなエックスを心配そうに見つめるエイリアだが、ケインがヘチマールに歩み寄るのを見て慌てる。

「Dr!!危険です!!」

「大丈夫じゃよエイリア。こいつはただ善悪の区別が付いとらんだけじゃ。ほれ、大丈夫じゃからわしに体を見せてみろ」

怯えているヘチマールを安心させるように笑うと、警戒を解いたヘチマールはスリープモードに移行した。

「こいつはただ遊びたかっただけなんじゃよ。少々やり過ぎてしまったがのう。」

「え?遊んでただけ…?」

「そうじゃよ、誰だって自分の意思で生まれてくるわけではない。レプリロイドなら尚更じゃ、ヘチマールがこのように善悪がつかないように生まれてしまったのはヘチマールのせいではないんじゃよ。お主が先の戦いで学んだことを見せてもらおうとエイリアを巻き込んで来てみたんじゃが、怒りに駆られおって真実を見失ってしまうとはなぁ…ぬうぅ…ほわちゃああああっ!!」

「おうっ!?」

杖から工具を取り出してヘチマールの修理を開始するケインの修理速度に思わず引いてしまうエックスであった。

「エックス、以前のお主ならきっとヘチマールが善悪の区別がつかない子供であることに気付けたはずじゃ。それが今ではシグマの部下であることを理由に撃とうとした…先の戦いで両手一杯の“物”を得て……同じくらいの“物”を失ったからかのう」

その言葉にエックスは拳を握り締めた。

ゼロやルイン、先の戦いで失った仲間達の姿が脳裏を過ぎったからだ。

「あ、そうじゃ…ほれ!」

「え?」

「ヘチマールのDNAデータじゃ、これでヘチマールの武器が使えるようになる。お主が持っといた方が良かろう…よし、終わりじゃ…エイリア~肩揉んでくれ~」

「は、はい!!」

肩揉みを要求してきたケインにエイリアは肩を揉む。

エックスにはそれが孫娘に肩揉みを頼む祖父のように見えて微笑んだ。

「(少しだけ肩の力を抜こう…真実を見失わないように…)」

その後ヘチマールは保護され、ケインとエイリアをハンターベースに送った後に再び出動したエックスの表情は気を張っていた物とは違い、とても穏やかな物であった。 
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