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徒然草

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113部分:百十三.四十にも


百十三.四十にも

百十三.四十にも
 四十を過ぎたいい歳をした人が恋の泥沼の中にそのままのめり込んでしまってそのことを自分の胸の中にだけこっそりと秘めてしまっているのなら仕方がありません。ですがそのことをわざわざ口に出してそのうえで男の女のことや他人の噂についてあれこれと話しているのは傍から見ていてもいやらしくかつとても気色の悪いものであります。
 その他にも世間でありがちな聞くに忍びなく見ていて甚だ見苦しいことといいますともう年寄りと言ってもいい年齢の人が若い人の間に入ってそのうえでうけを狙った話をすること、それに有象無象の人が世間によく知られた高名な人をさも友人のように語るっこと、あまりお金がないというのに宴会を好んでそれでお客さんを読んで贅沢な宴を開くこと。こうしたことは聞いていて気分のいいものではありませんし見ていても見苦しいことこのうえありません。こうしたことをする人は気付かず何か得意になっていることが常なのですがこれもまた聞いても見てもいいものではありません。そうしてことをせずに静かにしていることこそが最も格好がつき世間もよく見てくれるものですがそのことがどうしてもわからないことのようです。わからない人というものは何を言っても何を見せてもわからないものでありますからどうしようもありませんが。そうしたことを見るのも聞くのもこれまた実に嫌なものであります。全く以って困ったことであります。


四十にも   完


                 2009・9・4
 
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