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この素晴らしい世界に文明の鉄槌を! -PUNISHMENT BY SHOVEL ON THIS WONDERFUL WORLD!-

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五丁

「くるるる」

「みゅー…?」

にゃんにゃんは頬をつつかれる感触で目を覚ました。

「もぅ朝か…」

「くるる!」

体を起こし伸びをしたにゃんにゃんの頭にフェイベルが当然のように乗った。

とは言え生まれたばかりなうえ手のひら程の大きさだ。

寝ぼけ眼のにゃんにゃんは気付かない。

目をくしくしと擦りながら居間に行くと、リーアが朝食を作っていた。

「あら、なかなか似合ってるじゃないにゃーちゃん」

「んー?なにがー?」

リーアが自分の頭をさす。

にゃんにゃんが頭に手をやり、のっていたフェイベルを手に取る。

「おー…おはよ…フェイベル…ふぁぁ…」

「きゅる?」

「あら、寝惚けててもフェイベルの事はわかるのね」

「ぅゆ…?」

「なんでもないわ」

朝食を取る事になるのだが、にゃんにゃんはふと思い至る。

「……フェイベルって何食うんだ…?」

「………取り敢えず肉類…あるわよね?」

「ああ、冷蔵庫にあるが…。
やっぱり生肉がいいのだろうか…?」

なおこの家には最初期の方式ではあるが冷蔵庫がある。

密閉した箱に氷(魔法製)と共に入れておくタイプだ。

「きゅるぅ」

フェイベルがにゃんにゃんの朝食を前足でつつく。

「食うか?」

「くゅる!」

にゃんにゃんが箸で一撃熊のベーコンをつまんでフェイベルの口元に持っていくと、パクりと噛みついた。

「ふーん…。にゃーちゃん、取り敢えず一通り食べさせてみたらどうかしら?」

「賛成」

二人は自分たちも朝食をとりながら、フェイベルに一通り食べ物を与えてみた。

その結果として、フェイベルは何でも食べる事がわかったのだった。

「んー…雑食ってことでいいのかな…」

「いいんじゃない?それにしてもよく食べるわね…。
体積の半分は食べたかしら?」

「くるる…けふっ…」

「んー…竜だし」

「でも純粋な龍種ではないのでしょう?」

「なんとも言い難い」

「所で今日は土曜日なのだけど、どうするの?」

「んー?めぐみんとゆんゆんのレベリングに付き合うけど?」

リーアがフェイベルを指差す。

「どうするの?」

「生まれたばっかりだし、戦闘はまずいだろ」

「そうね…。いいわ、私が面倒を見ておくから、行って来なさい」

「ありがと、リーア」

にゃんにゃんがにっこり笑って言った。

「ふふ…貴方と私の仲でしょう?」

「そだな」

にゃんにゃんにとって、リーアは誰よりも長く深い時間を共に過ごした存在だ。

共に支えあっていた分、前世の親よりも深い信頼がある。

今生の親は、言うまでもない。

リーアがフェイベルを撫でる。

「くるる!」

「フェイベルって、ある意味で私達二人の子供よね…」

「ぶっふぉぁぅ!?」

食後の紅茶を飲んでいたにゃんにゃんが盛大に吹き出して、噎せた。

「げっほ!げっほ!げふっ!いきなり何を言うかお前は!?」

「鼻から紅茶漏れてるわよ」

「誰のせいだ誰の!?」

『クリーン』をかけながらにゃんにゃんが怒鳴る。

その後にゃんにゃんは無言で装備を整え、家から出ていった。

「あらまぁ照れちゃって…。
フェイベル、あの可愛らしいのが貴方のお父さんよ」

「きゅるぅ!」

威厳もクソもない父だった。














「よう。めぐみん、ゆんゆん」

「…………モンスターフィリア」

「待てやコラ」

「めぐみん…?何言ってるの?」

「聞いてくださいゆんゆん!」

待ち合わせ場所の森の入り口についたにゃんにゃんを待っていたのは異常性癖者のレッテルだった。

「この男家にドリアードを匿ってたんですよ!」

「ドリアード…?木精ですか?」

「しかも昨晩『産まれた!』って大声で叫んでたので行ってみればドラゴンを大事そうに持ってたんですよ!
これをモンスターフィリアと言わずして何と言うのですか!」

「訂正を要求する」

するとめぐみんは二やっと笑った。

およそ少女がしていい笑いではない。

「あれ?訂正してもいいんですか?」

「言うようになったなロリっ子」

「さてにゃんにゃん。黙っていてほしければ…」

「ん?別にバラしてもいいけどその場合お前のスキルポイントドレインで吸い付くすよ?
いやぁ!ドレインって便利だよなぁ!
まさか魔力全部吸った後はスキルポイント、続いて生命力まで奪うなんて!」

「なんですかそれ!?聞いた事ないですよ!?」

「言ってないしそもそもドレイン使える人間なんて俺以外見たことねぇし使える奴が居てもリッチーのスキルとか見せびらかさねぇだろうし」

にゃんにゃんが近くの木に手を触れた。

「ドレイン」

にゃんにゃんの手が淡く光る。

それと同時に、葉が少しずつ赤みを帯びていく。

「ここら辺にしとこ」

と手をはなした。

「ね?こういうふうに魔力を持たない木からも力を奪えるんだ。
人間から魔力以外を奪えないわけないだろ」

「…………鬼です…鬼畜です…」

にゃんにゃんが両手をワキワキさせながらめぐみんに迫る。

「くはは…貴様のスキルポイントを奪ってやろうか?」

「ひっ…ひぃっ!?」

「うひ…うひひひ……」

トン、とめぐみんの背中が木にぶつかる。

「しょっ処女ならあげますからスキルポイントだけはっ…!」

「ちょっとめぐみん普通逆でしょ!?」

哀れゆんゆんのツッコミは無視された。

「ふへへ…じゃぁお嬢ちゃん…ここで脱いでもら」

ごすっ! そこでゆんゆんの拳骨がにゃんにゃんに落ちた。

「流石にそれ以上はだめだよっ!」

ゆんゆんは顔を真っ赤にしている。

「ちぇー、いいところだったの…ゆんゆんって本当に空気読めないですよね。
にゃんにゃんが本当に私を犯す訳無いじゃないですか」

「私が悪者なのっ!?」

「うぁー…痛い……まぁ、ゆんゆんで遊んだのは謝るからさっさと狩りに行こうぜー」

にゃんにゃんはキュアと呟いて立ち上がった。

「さ、行こうか」











「woooooooooooo!!!」

「一撃熊一匹上がり」

にゃんにゃんはバインドで一撃熊を縛り上げ、その目の前にたっていた。

「にゃんにゃん、どうして絞めないんですか? ゆんゆんの養殖ですか?」

「いや、お前達には見せた事はなかったなと思って」

にゃんにゃんがしゃがみ込み、一撃熊の頭に手をのせた。

「ドレイン」

一撃熊の力がにゃんにゃんへ流れ込む。

やがて、一撃熊が動かなくなった。

「にゃんにゃん? もうそこら辺でいいと思うのですが」

が、尚もにゃんにゃんはドレインをやめない。

「お前達、生命力が尽きるという事の恐ろしさをよく見ておくんだ」

次第に、一撃熊の体が朽ちてゆく。

体は全て干からび、末端から砂と化す。

にゃんにゃんが触り初めて一分程で、一撃熊の肉体は塵となり、骨だけが塵の中に埋もれていた。

「これが生命力を奪われた者の末路だ。限界を越えて魔法を使えばお前達ですらこうなりうる。努々、忘れるなよ」

二つは無言で頷いた。

「この骨はどうするのですか?」

「触ってみな」

めぐみんが骨に触ると、触れた部分が崩れ落ちた。

そこから連載するように、骨が砂のように崩れた。

「骨すらも残らない。生きた証が消えるという事だ」

にゃんにゃんが立ち上がり、塵に埋もれたワイヤーを掴む。

「さ、次の獲物を探しに行こうぜ」


数時間の狩りで、にゃんにゃんは十数の中型モンスターを狩り、その全てを塵とせしめた。

「にゃんにゃん。一つ聞いていいですか」

「なんだ」

「にゃんにゃんの魔力上限っていったい私達の何倍なんですか?」

にゃんにゃんが頤に手を当てて考え込む。

「ふむ……生産魔力上限はざっと30倍かな……そも俺に魔力上限はないのだが…」

「どういうことなのにゃんにゃんさん?」

「アンデッド系スキルにオーバーチャージってバグスキルがある。このスキルはドレインとかで得た魔力を貯めておけるスキルだ」

「ふむふむ」

「そしてその貯蔵上限は事実上存在しない」

「「えぇっ!?」」

「そういう訳で俺は外部由来の魔力なら無限にためられるのさ」

にゃんにゃんはそうやって魔力を貯蔵し、朝昼晩とフェイベルに魔力を与えていた。

とはいえフェイベルに注いでいて毎日空にしていたのだが。

にゃんにゃんは晩御飯の分と二人のレベリングのため以外の全てのモンスターをドレインで殺した。

そして二人とわかれ、帰宅する。

「フェイベルー、リーア。帰ったぞー」

「あらお帰り貴方」

「お帰りなさいパパ!」

帰宅したにゃんにゃんを待っていたのは、幼女のハグだった。

銀髪ロングで、姫カットで、金色の縦に裂けた瞳。

さらには背中に翼、腰から尻尾、額から後ろに流れるように角が生えている。

「………フェイベル?」

「はい! 私です! パパ!」

にゃんにゃんが説明を求めるようにリーアに視線を注ぐ。

「面白そうだったから擬人化スキルを覚えさせといたわ」

「おー、そうか」

にゃんにゃんがフェイベルの頭を撫でる。

「んゅー!」

「可愛い! 可愛いぞフェイベルぅ!」

「にゃーちゃんが壊れたわ…」











side in

夕食前にフェイベルが何れくらいの知性を持っているのか計る事にした。

「という訳で私には卵の中にいた頃から自我がありました」

「へ、へー…」

おい。待てよ待ってくれよフェイベル。

「なのでパパとママがラブラブなのはしっています!」

「「oh」」

マジかよフェイベル。

「それに、こんな事もできますよ」

フェイベルが立ち上がって一回転すると、光に包まれた。

その光が晴れると、妖精のように小さいフェイベルがいた。

「これでパパとママがイチャイチャしてる間に入り込めます!」

入ってこないで…恥ずかしいから…。

リーアと揃って顔を赤くする。

「ま、まぁ…それはそれとして…。ご飯にしようか…」

「はい!」









親愛なる前世の両親へ、娘ができましためちゃくちゃ可愛いです。

くそったれな今生の両親へ、娘ができました。もうお前らの居場所はここにはない。
 
 

 
後書き
フェイベル
妖精龍(メス)
名の由来は『フェアリー・グイベル』
にゃんにゃんが『謎の施設』で見つけた研究書を元につくった使い魔(のつもりだった)。
白蛇の卵に魔力を注いで生まれた。
原作のゼル帝の成功版。

小龍モード:体は白、目は金、体9センチ、尻尾6センチ、計15センチの四足の西洋龍。

人モード:銀髪龍眼のユイ(SAO)。翼と尻尾と角がある(額から後ろに流れるように生えている)。

妖精モード:人モードがそのまま小さくなっている。
 
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