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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第14話:Fortress Tower

ゼロはシグマの足取りを追いながら、イレギュラーを排除していたが、ハンターベースから通信が入った。

『ゼロ、聞こえる?こちら、エイリアよ。あなたが近くにいる街のシンボルとなるはずだったタワーにイレギュラー反応があるの。急いでそちらに急行して下さい』

それを聞いたゼロはタワーに侵入すると、タワー内部にはメカニロイドと緑色のレプリロイドがいた。

ゼロはバスターでそれを薙ぎ払いつつ、梯を登ってタワーの最上階を目指していく。

途中の警備システムもかわしながら迅速に奥へと進むと昇降機に辿り着き、それに乗り込むと昇降機はゆっくりとした早さで上がっていく。

「ん…?」

真上から聞こえてきた微かな物音に反応し、上を見上げると真上からメカニロイドが降ってくる。

「なるほど、そう簡単には行かせてもらえないわけか」

ゼロは真上から降ってくるメカニロイドをかわすとバスターで破壊する。

それを数回繰り返すとタワーの最上階付近まで着くと跳躍して移動し、梯を掴んで上に登っていく。

途中で警備メカニロイドが攻撃を仕掛けてくるが難無くバスターで破壊すると頂上の入り口に辿り着いたゼロは壁を蹴り上げる。

砲台メカニロイドを破壊して台座に乗り移る等を繰り返し、最後に梯を登り、扉の前に立つ。

『お疲れ様、調べた結果…ここのボスは元第17精鋭部隊所属のブーメル・クワンガーよ』

ゼロはエイリアからこのタワーを占拠しているボスの名前を聞くと、即座にハンター時代のクワンガーのデータを検索する。

時空の斬鉄鬼 ブーメル・クワンガー

マンドリラーと同じく第17精鋭部隊に所属しており、行動が素早く、人間はおろかレプリロイドでさえ目に見えない速さで動き、イレギュラー達から恐れられていた。

また、頭部の鋏で相手を捕まえ、そのまま天井に投げ上げるなど、細身の体に似合わぬ怪力の持ち主でもある。

『どうやらクワンガーは蜂起後は都市のシンボルになるはずだったタワーを制圧して、侵入者を迎え撃つ要塞に造り変えたようね』

「あのクワンガーもか…まあ、イレギュラーなら倒すまでだ…」

扉を強引にこじ開けると、すらりとした細身のフォルムで人型でありながらも昆虫を窺わせる2本の角が装着された頭部が特徴で、赤を基調としたアーマーには優美な装飾が施されている嘗ての同僚がいた。

「久しぶりだなクワンガー、お前をイレギュラーとして処分する」

「ゼロ…あなたが来ましたか。見た目も変わりましたが、攻撃力、機動力、判断力…戦闘スペックは至って良好…いえ、それどころか向上している……やはりシグマ隊長が仰っていたように、あなたにもエックスとルインと同じように可能性がありそうです」

「可能性だと?どういうことだ?」

「本来なら機械である我々レプリロイドに“成長”という概念はない。レプリロイドは造られた時点で全ての能力が完成している。劇的な変化を得るには最新のパーツを使わねばならない。しかしあなた方3人は違う。エックスは戦いの中で悩みながら…あなた方は激戦を潜り抜ける度に凄いスピードで全てのステータスが上がっていく。」

「それが可能性だと?ふざけたことを…お前もここで倒してやる。シグマと同じように変な妄想に取り憑かれやがって」

腕をバスターに変形させてクワンガーに向ける。

「やれやれ、相変わらず会話が通じませんねあなたとは。まあいいでしょう…ゼロ、今のあなたのスペックを見せてもらいましょうか」

クワンガーが凄まじい勢いで床を蹴ると神速の如き速度でゼロに肉薄する。

「っ!!」

咄嗟にゼロは捻りながら横に回避し距離を取る。

チャージショットを喰らわせようにもまともに受けてくれる相手ではないので通常のショットを連続で放つ。

クワンガーは装甲を極限まで削ぎ落として機動力を追求したレプリロイドなので通常のショットでも当たればそれなりの効果は期待出来る。

「反応速度も以前より上がっている…」

回避行動を取りながら冷静にゼロの戦闘力を分析していくクワンガー。

「どういう改造を行ったのかは知りませんが、見えているんですね、私の動きを…以前のあなたは完全に捉えることが出来なかったというのに。今のあなたは、私を的確に捉えた」

「…………」

「どうやらこれは本気で行かなければならないようですね」

頭部のカッターを放ちながらクワンガーはゼロに接近し、手刀を振るい、ゼロはそれを回避するとエネルギーを収束させた拳で殴り掛かる。

クワンガーはそれを苦もなく避けるも、拳から放たれた凄まじい衝撃波が壁をぶち抜いた。

「チッ…“時空の斬鉄鬼”の異名は伊達ではないということか……」

「あなたこそ、それでこそシグマ隊長に次ぐ実力者と言われた男ですね」

スピードではこちらが上回るが、かつての時から総合的な能力はゼロが上回る。

そして何よりも、かつてのゼロはシグマを追い詰めた程の実力者なのだ。

「さあ、行きましょうか」

クワンガーが一気に跳躍し、ゼロもそれを追うように跳躍して追い掛ける。

「(速い!!)」

強化され、機動力も以前より上がっているはずなのに速度は僅かにクワンガーが上回っている。

クワンガーも自身について来るゼロを油断なく見つめる。

「(やはり以前とは性能が桁違いですね…一体どうやってゼロの強化を…?)」

ゼロはエックス達と同じようにブラックボックスの塊でパーツを造ることもままならない存在なので今の時代にゼロの強化を行える科学者がいるわけがない。

「アースクラッシュ!!」

「っ!!」

再びクワンガーに向けて放たれる衝撃波。

それを受ければ確実に破壊されるのは確実なのでクワンガーは直ぐさまそれを回避する。

「チッ!!」

避けられたことに舌打ちし、ゼロはバスターを構えて再びショットを放つ。

「(考え事をしている暇はありませんね。一気にケリをつけなくては…)」

戦闘力の殆どはゼロが上回っており、今は何とか速さで誤魔化せているがそれは時間の問題だろう。

ゼロに追い掛けられていたクワンガーは距離を取るのを止めると一気にゼロに突進する。

虚を突かれたゼロはまともに突進を受け、バランスを崩し、更にクワンガーはゼロの胴を頭部の角で掴むとゼロを天井に叩きつける。

「ぐっ!!」

天井に叩き付けられたゼロは床に落下し、仰向けに倒れるが、すぐに起き上がる。

「ほう、あれを受けて大してダメージを受けていないとは…」

「………」

クワンガーの称賛に構わず、ゼロは再び拳にエネルギーを収束する。

「無駄撃ちを止めて一撃必殺に賭けようとしているのでしょうが無駄な足掻きですよ」

「無駄な足掻きかどうかは…やってみなければ分からん…!!」

「ふふ…ではこれでどうです?久方ぶりに速度のリミッターを外させてもらいます」

クワンガーが笑みを浮かべてリミッターを解除すると凄まじい速度でゼロに手刀を浴びせる。

しかし強化されたアーマーには僅かなダメージしか受けない。

しかし、クワンガーは目にも止まらない動きでゼロの全身に攻撃を加えていく。

「ぐああああ!!」

「ふははははは!!どうですゼロ?私がこうして絶えずに動き回り、あなたに一撃を与え、離脱を繰り返す。あなたの射程距離内にいるのはほんの一瞬だけ!!いくら強力な攻撃でも当てることが出来なければ意味がありません!!こうしてヒット&アウェイを繰り返しているだけであなたの体力は確実に削られていくのです!!」

「ぐっ…」

「この勝負…私の勝ちです!!」

ゼロの全身に怒涛の凄まじい連撃が浴びせられ、ゼロは床に仰向けに倒れた。

「(な、何て奴だ…速度だけならシグマと互角…いやそれ以上だ…)」

リミッターを解除したクワンガーの動きは今のゼロですら見切れない程であった。

「(しかし、何故これ程の力を持っていながら最初からこれを使わなかった…?余裕か?いや、そんなはずはない…一撃を受けるだけで致命傷になりかねないような奴だぞ…)」

クワンガーは極限まで装甲を減らして機動力に特化したレプリロイドであるために一撃を受けただけでも致命傷になりかねない。

ならば何故今になって速度のリミッターを解除したのだろうか?

「…っ!!」

理由に気づいたゼロはクワンガーに気付かれないように拳にエネルギーを収束する。

「さあ、とどめですよゼロ。後でエックスとルインもあなたの後を追わせてあげましょう!!」

クワンガーが跳躍し、ゼロに向かって突進してきたのを見たゼロは内心でほくそ笑む。

「アースクラッシュ!!」

床に拳を叩きつけると床に亀裂が入り、破片と衝撃波がクワンガーに直撃する。

「ぐああああ!!?」

破片と衝撃波をまともに受け、全身に亀裂が入り、身体から火花が出ている。

「自分の速さを過信し過ぎたなクワンガー。いくらお前でも空中ではまともな回避行動は出来ないだろう…特にそれだけの速さでは尚更な…それに仰向けになれば正面から攻撃するしかない…一種の賭けだったが…俺の勝ちだクワンガー!!」

とどめとしてクワンガーに向けて放たれるチャージショット。

「(やはりそうでしたか…あなたもエックス達と同じ可能性を秘めし者。精々頑張ることですね、紅いイレ…)」

胸中の言葉を言い切る前にチャージショットに飲み込まれるクワンガー。

装甲を極限まで減らしてまで機動力を追求したクワンガーに耐えられるわけがなく消滅した。

「…何とか勝てたか……」

予想以上の強敵を倒したゼロも安堵の息を吐いた。

可能性という言葉に一瞬考えそうになるが所詮はイレギュラーの戯れ言だと思ってタワーを後にした。 
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