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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第10話:New-type Airport

新人時代に出会ったあのレプリロイドとの出会いはまず、“最悪”の一言であった。

『おい、そこの女みたいな奴』

『……………鳥…?』

自分とあのレプリロイドは初対面から喧嘩腰であった。

いくつかの言葉を交わした後は互いにチャージを終えたバスターを構えていた。

その際に巻き添えになった同僚達には申し訳ないことをしてしまったし、恥ずかしい姿を曝してしまった自覚もある。

そして自分の親しい友人兼後輩となるあの2人が当時いなくて良かったと今でも思う。

しかし自分からすれば唯一喧嘩するのはあのレプリロイド位だった。

顔を合わせてはいがみ合い、次にすれ違っては嫌味の言い合い。

時々同じ任務に配属されれば、どちらが手柄を挙げるかの競い合いだった。

何時の間にか、最後に勝った方が1つだけ何でも要求出来る何て言うルールまで生まれていた。

ただこうやって何度もぶつかり合うことであのレプリロイドの良い部分も分かってきて、互いに後輩や部下を持つようになったこともあり、いがみ合いは無くなり、かつては腕を競い合ったライバル兼良き友人として接する
ことが出来るようになった。

そして久しぶりに合同の任務で顔を合わせ、いくつかの言葉を交わした後、あのレプリロイドはこう言った。

『あの頃は、競い合う相手を探していた』

『何?』

『機械である俺達は最新のパーツに交換しなければ飛躍的な変化は得られない。なら、経験値のみで上に目指すにはどうするかと頭を悩ませていた時にお前と出会った。』

『……それで?』

『競い合う相手にするなら、自分と同等かつ、向上心のありそうな奴がいい。だから俺はあの時お前に喧嘩を売ったのさ』

『おい、俺はお前の昇進に利用されたのかよ?』

『そうとも言えるかもな』

あのレプリロイドの笑みに自分は苦笑してしまったが、自分としてもその考えは理には適っているとも感じていた。

あの時は、まさかシグマによる反乱によってこんなことになるとは思いもしなかったが。

そして現在のハンターベースでは、エックスがペンギーゴとナウマンダーを倒したことで話題となっていた。

B級が特A級ハンターを下したという事実が持ち切りの話題となるのは至極当然だが、唯一それに動じていない存在がいる。

特A級ハンター・ゼロ

エックスの秘められていた潜在能力に気付いていた数少ないハンターである。

ゼロからしてみれば、これは当然の結果である。

迷いを捨てた今のエックスは強い。

「ゼロ」

「ルイン、それにエックス」

ゼロが声のした方を見遣るとルインとパワーアップパーツを装備しているエックス。

話題になっているエックスと現時点でのイレギュラーハンターの中でもトップクラスの実力者であるゼロとルインの組み合わせは目立つ。

「ゼロ、デスログマーが見つかったの?」

「ああ、あいつはエアポートにいるらしい」

「なら俺達も一緒に…」

「駄目だ。あいつは俺が止めなければならない。」

かつての友として、イレギュラーとなった彼は自分が止めなければならない。

協力を申し出てくるエックスに対して悪いとは思ったがこれだけは譲れない。

「エックス、ここはゼロに任せよう。私はカメリーオの所に行くからエックスはマンドリラーをお願い」

「俺が…あのマンドリラーと?」

豪速拳の雷王 スパーク・マンドリラー。

元第17精鋭部隊所属で隊長であったシグマに従う形で反乱に参加し、その圧倒的な戦闘力で巨大発電所を占拠。

拠点制圧は部下に任せ自分はごろ寝を決め込んで好物の電気を貪り食っていると聞いている。

「大丈夫だよエックス、自信を持って。今の君なら大丈夫だから」

「ああ」

ルインの言葉に何とか緊張を解いたエックスはゆっくりと頷いた。

「エックス、ルイン。気をつけろよ」

「ありがとう」

「ゼロこそ気をつけてね」

「ああ、分かってる」

ゼロはハンターベースを後にし、イーグリードがいるエアポートに向かってチェバルを走らせた。

しばらくチェバルを走らせ、目的地であるエアポートに着いたゼロは右腕をバスターに変形させ、迫って来るイレギュラーを見据える。

「邪魔だ!!」

イレギュラーに向けてチャージショットを放つゼロ。

エックスの蒼色のチャージショットとは正反対の紅色をしたチャージショット。

威力もエックスのチャージショットとは威力も桁違いでメカニロイドはチャージショットに飲み込まれていく。

ゼロはリフトに乗り込んで更に奥へと進んでいく。

天空の貴公子 ストーム・イーグリード

第7空挺部隊の隊長を務めていた人物で人望と正義感に厚く、当初は反乱を起こしたシグマとも対立していたが、シグマとの直接対決で敗れ、その軍門に下ってしまう。

その後、第7部隊旗艦であり彼の乗艦であるデスログマーは反乱軍の空中要塞となり、空路を遮断するため空港を制圧している。

「(止めてやるぞイーグリード…俺の知っているお前ならこんなことを許せるはずがないからな)」

チャージショットを放ち、メカニロイドの群れを単体で灰燼に帰していく。

ゼロには不明な点が多い。

制作者が不明。

エックス、ルイン同様にケインでも解析出来ないブラックボックスが多すぎると言う極めて例外的なレプリロイドである。

恐らくその不明な点にゼロの正体があるのだろうが。

とにかくゼロにとってメカニロイドは大した敵ではなく、ただ面倒な障害物でしかないのだ。

いくら破壊しても沸いて来るメカニロイドに辟易してきたゼロはバスターを元に戻すとエネルギーを纏わせた拳を握り締め、全力を込めて地面を殴りつける。

「アースクラッシュ!!」

一瞬のうちに地面には亀裂が走り、砕けた岩片がメカニロイドを巻き込んで宙へと舞った。

その直後の衝撃波で機体はバラバラに裂け、小さな鉄片となり地へ振り注ぐ。

「…………」

ゼロは周囲を見回すが、この辺りにはもうメカニロイドは残ってはいないようだ。

先へ進もうとしたらあるレプリロイドが視界に入った。

「貴様…VAVAか…!!ここで何をしている!?」

元特A級ハンターにしてハンター時代からイレギュラースレスレの存在であり、今や正真正銘のイレギュラーとなったレプリロイドがいた。

「ほう、ゼロ。お前が此処に来たのか…てっきりエックスが来ると思っていたが、これは想定外だったな」

VAVAとしてもここでゼロと会うのは予想していなかったのだろう。

声には幾分かの驚きが混じっていた。

「丁度いい、ここで貴様を処分してやる」

ここでVAVAと会うのはゼロとしても予想外だったが、好都合でもある。

何せVAVAはそこらのイレギュラーよりも何をしてくるのか分からない相手で下手をしたらシグマよりも恐ろしい相手だ。

これからの戦いの不安要素は消しておくべきだとゼロは判断し、VAVAにバスターを向けた。

「ふん、やれるものならやってみろ。逆にぶっ潰してやる…と言いたいが…」

「?」

VAVAはゼロを無視して壁のパネルを弄ると武器庫の扉が開いて漆黒のライドアーマーが飛び出してきた。

「生憎、俺は此処に置いてあった自分の愛機を取りに来ただけなんでな。悪いがお前と遊んでいる暇はない」

愛機と聞いてゼロはライドアーマーを凝視する。

確かにそのライドアーマーはVAVAがハンター時代に愛用していたVAVA専用にチューンアップされたカスタム機だ。

これを駆るVAVAは他の追随を許さない操縦技術によってイレギュラーを殲滅してきた。

「ゼロ、お前も楽しみに取っておいてやる。精々奮闘し、強くなることだ。俺の渇きを癒すくらいにな」

そう言ってVAVAはライドアーマーに乗り込み、バーニアを噴かしてこの場を去った。

「奴め…一体何を考えて……ん?」

VAVAのライドアーマーが置かれていた武器庫の奥にカプセルのようなものを発見し、ゼロは警戒しながらカプセルに歩み寄る。

近付くと起動し、エックスとルインに力を貸す白衣の老人のホログラムが映し出された。

「…っ」

映し出されたのは優しげな老人だった。

懐かしい…どこかで会ったことのあるような…そんな気持ちを抱かせる男だった。

老人はゼロの姿を認め、笑いかけた。

『君は…ゼロだったかな?』

「あなたは一体…?」

自分を認識し、話しかけているこのホログラムは生きているのか…?

驚愕しているゼロに老人は優しく話し掛ける。

『いつもエックスのことを…感謝している…これからもあの子を助けてやってほしいのだ』

「何故あなたがエックスを知っているのですか…?あなたは一体…?」

『…すまないが、それを言うことは出来ない……許してほしい…このカプセルにはボディパーツを遺した。細かい説明は省くが、エックスがこれを装着すれば、エックスの防御力を飛躍的に高めることが出来る…代わりにパーツファイルを受け取ってエックスに渡してほしい…後はこれをルインに』

老人がカプセルに1つのチップを映し出し、ゼロに見せる。

「それは…?」

『彼女のアーマー解除プログラムじゃ…これを彼女に使えば彼女の封印されたアーマーを解除することが出来る…私は残念ながらルインと同じように君の体の仕組みが分からない…故に君のパワーアップパーツが造れないのじゃ…申し訳ない』

「気にしないで欲しい。エックスにパワーアップパーツを…ルインには解除プログラムを渡しておく」

『すまない…しかし、君のためのパワーアップパーツは造れないが…君に秘められた力を解放することは出来そうじゃ……』

「何だって…?」

『このカプセルで力を解放するかどうかは君の自由だ。ただこのカプセルに入ればバスターの性能を引き上げ、アーマーの強度も格段に上がるはず…君ならこの力を正しい方向に…戦うべき敵に使ってくれると信じているよ…後は力を使う君次第じゃ…ゼロ』

それだけ言うと、老人のホログラムが消えていく。

「…………」

ゼロはしばらくカプセルを見つめるとその中に入る。

エックス、ルインは自分にとって掛け替えのない親友達。

ルインはエックスと比べれば付き合いは浅いが、ゼロにとっては大切な友であることには変わりはない。

今の自分ではシグマには勝てないのは分かっている。

ならば力を求めよう。

「あいつらは…俺が守る……」

カプセルの中で力が漲っていくのを感じる。

紅いアーマーは漆黒へと変わり、金色の髪は見事な銀髪へ変わった。

次にエックスのパワーアップパーツとルインのアーマー解除プログラムを入手。

それらを簡易転送装置でハンターベースへ転送すると、ゼロは銀髪を靡かせながらかつての友の元へ向かう。

途中のメカニロイドを殲滅しながら最奥へ進み、デスログマーの甲板にはイレギュラーとなった友がいた。

「ゼロ…なのか……?」

外見が変わった友にイーグリードは戸惑いを隠せなかった。

紅いアーマーは漆黒になり、豪奢な金髪も銀髪に変わっていたからだ。

「…ああ、久しぶりだなイーグリード」

「しばらく見ないうちに随分と変わったものだな」

「ある人に力を引き出してもらった。以前の俺と同じだと思っていると痛い目に遭うぞイーグリード」

途中のメカニロイドとの戦闘によってバスターの性能とアーマーの防御力も飛躍的に上がっていることをゼロはイーグリードに警告する。

「…そのようだな。しかし、力を引き出しただと…?」

一体どうやってだ?

ゼロは未解析な部分が多くパワーアップパーツを造ることすら困難だというのに。

「…イーグリード、お前を止めに来た。ハンターとして…友としてな」

「…ならばこちらも全力で相手しよう…我が友よ」

イーグリードのバスターから突風が放たれた。

ゼロは強化された脚力を活かして大きく跳躍することでかわし、バスターを構えてショットを連射する。

通常のショットも攻撃力が増加し、弾速も上がり、一度に発射出来る連射数も3発から5発に増えている。

「チッ!!」

舌打ちし、イーグリードは即座に飛翔することでショットをかわしていく。

ゼロの警告通り、以前のゼロとは性能が桁外れだ。

しかし空中戦ならこちらに利がある。

イーグリードの強みは360度を自在に駆け巡る戦闘能力であり、それは地上戦に特化したレプリロイドよりも多彩の行動を可能とし、敵を為す術なく粉砕する。

「チッ…ちょこまかと飛びやがって…」

縦横無尽に飛び回るイーグリードに舌打ちしながらもゼロは感覚を研ぎ澄ませる。

かつてのゼロなら苦戦は免れなかったろうが、今の自分なら…。

「そこだっ!!」

イーグリードの突進を見切り、カウンターの突きを繰り出した。

「ぐあっ…!!」

ゼロの拳が顔面に突き刺さる。

イーグリード自身の突進の勢いもプラスされていたためにダメージが大きく、一瞬気が遠くなった。

「喰らえっ!!」

吹き飛ばされたイーグリードに向けて炎を纏った飛び蹴りを喰らわせる。

直撃を受けたイーグリードは何度もバウンドして甲板の床に叩き付けられた。

「ぐっ…負けるわけにはいかん…!!」

ふらつく体を叱咤し、再び起き上がるのと同時に再び飛翔すると複数のオプションメカを放つ。

ゼロは連射性能が向上したバスターで撃ち落としていくが、爆煙が辺りを覆う。

後ろに気配を感じたゼロは右方向に裏拳を繰り出すが、それはオプションメカ。

「おおおおおおっ!!」

「ぐあっ!!」

真横からのイーグリードの突進の直撃を受けたゼロはダメージこそは大したことはないが吹き飛ばされる。

「やはり簡単にはいかないか…」

いくら性能が向上してもイーグリードは自分の戦い方を知り尽くしている。

1216戦中、600勝600敗16引き分け。

これだけ間抜けな程に争っていれば自然と相手の手の内が分かる。

次にイーグリードが繰り出すのは羽ばたきによる攻撃だ。

ゼロの真上から鋭利なイーグリードの羽が落ちてくる。

羽の威力自体は大したことはないが全てを受けるわけにはいかない。

「爆裂炎!!」

ゼロは拳を甲板の床に叩きつけると火柱を発生させ、イーグリードの羽を尽く焼き尽くす。

大きく跳躍し、イーグリードに接近して零距離でチャージショットを繰り出そうとする。

ゼロのバスターのチャージの時間も大幅に短縮されており、かつての時よりも速く、強烈なチャージショットが放たれた。

イーグリードは咄嗟に体を捻ることで直撃はかわすが片翼と右腕を奪われた。

「ぐああああっ!!」

片翼と右腕を奪われたイーグリードは即座に体の痛覚を切ることで何とか耐える。

誤魔化しでしかないがこのままでは満足に動けない。

イーグリードの翼は姿勢の制御、浮力、速度の制御などを計算されて造られている。

電子頭脳と最も関わりのある部位のために痛みは想像を絶するだろう。

「くっ……」

戦闘の要となる翼を失ったイーグリードは表情を歪めており、翼を失った自分にはもう勝機はないことを悟っているのだ。

「イーグリード…降参しろ。その状態では満足に戦えないだろう」

「何だと…?」

降参を呼び掛けるゼロにイーグリードは目を見開いた。

ゼロはイレギュラーには一切容赦しない。

それは電子頭脳の異常でイレギュラーとなったイレギュラーハンターに対しても例外ではなかった。

その中には同期のハンターもいたのだから。

「変わったなゼロ…昔のお前なら一切容赦はしなかっただろうに……」

「エックスとルインの甘ったるい考えが移っただけだ…少しだけな…」

「そうか…だが断る。俺にイレギュラーの情報を吐かせようとしてもそうはいかんぞ。イレギュラーとなったが、敵に情報を売り渡すほど堕ちたつもりはない。」

イーグリードは非常用の装備である対装甲ナイフを取り出した。

普通なら緊急用の武装にしか成り得ない対装甲ナイフは使わないだろうが、主兵装であるバスターと片翼を失い、オプションメカも使い切ったイーグリードにはこれしかない。

しかし対装甲ナイフと言えどもこれは超振動モーターによって刃身を高周波振動させることで重装甲のレプリロイドのアーマーさえも容易く切断するほどの威力を誇る。

それを見たゼロも覚悟を決める。

「そうか…ならこの一撃で終わらせよう」

拳にエネルギーが収束していく。

ゼロの最強の必殺技であるアースクラッシュは地面に拳を叩きつけて衝撃波で攻撃すると思われがちだが、直接エネルギーを纏った拳で攻撃することも出来る。

まともに受ければ並のレプリロイドでは粉微塵になってしまう。

上空は強い風が吹き、当然ながらこの戦場も強風が吹いている。

その風が一瞬止まったことで彼らは同時に駆け出し、一瞬ですれ違いながら互いの拳とナイフが交差する。

背を向け合った2人の動きは完全に止まっていたが、振り返ったイーグリードは笑った。

がっくりと膝が崩れ、直後ドサリと倒れ伏す。

イーグリードの胸に風穴が空いており、彼は穏やかに、心から笑いながら息絶えていた。

「イーグリード…」

イーグリードの死に呼応するかのように、デスログマーが大きく揺れた。

「…そう言えば、最後に勝った方が相手に何でも要求出来るんだったな……おい、鶏ガラ………死ぬな」

自分で処分しておきながら無茶なことを言っていると言う自覚はあるが、どうしても言っておきたかった。

勿論、イーグリードからは返事がない。

「チッ…安らかな面をしやがって…」

ゼロは簡易転送装置を使い、機能停止したイーグリードと共にハンターベースへ戻るのだった。 
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