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人徳?いいえモフ徳です。

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三十六匹目

シラヌイが王城にティアを連れていった翌日。

「ふぬぬぬ……」

「きゅあぁぁん………」

「ふっ………」

「何だこの図超おもしれー」

「大人なら止めた方がいいかと」

王宮の一室。

ボーデンの私室にてクーコとシャクティが火花を散らしていた。

シャクティの翼の中には気持ち良さそうな子狐。

「たとえ王族が相手でもきつね君の飼い主の座は譲らない」

「はぁ!? シラヌイはこのクーコ・フライハイトのペットよ!」

そこでニヤニヤしながらボーデンが口を出す。

「おーい。シラヌイはうちの居候だぞー」

「貴女は黙ってて!」

「うるさい。錬金術師筆頭」

「な!?」

「ふっ…。ザマァですねボーデン様」

ボーデンの横で見ていたティアが毒を吐く。

「なぁおいお前ら。二人だけじゃ話がつかんだろ。メリーはどうしたメリーは」

「メリーならお昼から来る。その前にわがまま女王をぶちのめしてメリーとのイニシアティブ争いを征する」

とシャクティ。

「お前ら五歳児だよな?」

「ボーデンくらい年とってたら子供なんてみんな子供でしょ?」

とクーコ。

「暗に私の年を弄るな」

「うきゅー! きゅー!」

「黙れ毛玉。アタシの心は30代だ」

「きゅー」

「ケツの穴に媚薬突っ込むぞテメェ」

「きゅぅあっ!?」

シラヌイがシャクティの翼に潜り込む。

「ボーデン。貴女なんでシラヌイの言うことわかるの?」

「愛の力だが?」

「きゅー! きゅー! うきゅー!」

「黙れショタコン土に還れ。だそうです」

「ちっ…」

「私はご主人様と魂で繋がっております。そこのニワカと同じにしないでいただきたい」

「お? 喧嘩売ってるのかスライム?」

「ご主人様が望みません故」











昼になってメリーが参戦した。

「ぬいちゃん。どう?」

「きゅあぁぁぁ………」

「「ぬぐぐぐぐぐ……」」

「お、二人に増えた」

今度はメリーに抱かれたシラヌイが気持ち良さそうに鳴き声をあげる。

メリーがスッと手を動かす度に、シラヌイのまぶたが落ちて行く。

やがてクゥクゥと寝息を発て始めた。

「ふん。お前達がぬいちゃんをどうしようとお前たちの勝手。でも、ぬいちゃんの隣に居るのはわたし。
貴女たちが上であらそっている間に、私はぬいちゃんとイチャイチャする」

無表情で、いや、口元に薄い笑みを浮かべてメリーが言った。

正妻の余裕とでも言うべき落ち着きようだった。

「メリー。年誤魔化してるなら早めに白状しとけよー。シラヌイみたいに拗れさすなよー」

「なに言ってるの? ボーデンさん?」

そういいながらもシラヌイを撫でる手は止めない。

「ふふん…。わたしの一人勝ち」










シラヌイが家に帰ろうという時になり、ようやく真打ちが登場した。

「シラヌイー。帰るぞー。早う準備せぇ」

「あ! お婆様!」

シラヌイが玉藻の尻尾に抱きつく。

「嬉しそうに抱きつきおってからに…見られとるぞ? 恥ずかしくないのか?」

「お婆様の尻尾の前にはそんなの無意味…」

「「「ッ………(ギリィ)」」」

「ぷっくく…ぶはは! ひゃは!はははは! もう無理‼ 面白すぎっ…! はは…! 腹っ! 腹捩れるっ!」

「どうしたのじゃボーデン。かようにわらって」

ボーデンが玉藻に今日1日の事を話すと、玉藻がクツクツと笑いだした。

「くだらんのぅ…」

ひとしきり笑うと、玉藻がシラヌイを抱き上げた。

「孫は儂の物じゃ。やらんぞ」

「「「「な!?」」」」

「うきゅー? おばーさまー?」

「ではな」

そのまま、勝ち誇ったかのように玉藻が出ていった。











「という事があったんじゃがちと悪乗りしすぎたかのぅ?」

と夕食の席で玉藻がシェルムとブライに話をした。

「いえ、私は構わないと思いますよ?」

「ふーむ…メリーちゃんに第五師団長の娘に姫様に国家錬金術師筆頭か…。うむ、我が息子は嫁を選び放題だな!」

「結局僕がペット扱いされてるだけなんだけどね…」

不貞腐れたようにシラヌイが呟く。

「ご安心くださいご主人様。私は命尽きるまでご主人様のペットであり続けますので」

「あー、うん。あんがとティア」


その晩シラヌイは久々に獣化した玉藻と眠るのだった。

「こゃぁーん……」

(嬉しそうな声を出しおって……) 
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