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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第80話

その後カジノの会員カードを購入してカジノに入店したリィン達は人だかりになっているポーカーのテーブルに気づいて人だかりに近づいた。

~カジノ”アリーシャ”~

「失礼…………ちょっと通ります。」
人だかりの中に入ったリィン達はポーカーをプレイしている人物達―――ルトガー達”西風の旅団”を見つけると血相を変えた。
「おっしゃ、来たで来たでぇ~!」

「んー、分が悪ぃ…………っつうか完全にやらかしちまったなぁ。さっきのベット、取り消していいよな、な?」

「ふむ、ここで引いては王の名が泣くのではないか?」

「ぐっ…………言ってくれやがる。」

「ほなディーラーはん、とっとと始めてんか!」

「――――それでは各々方、手札をオープンしてください。」

「どや、フルハウス!これで決まりやろ!」
ディーラーが手札の公開を促すとゼノが真っ先に自慢げな様子で自身の手札を公開した。
「甘いな―――フォーカードだ。」

「なあっ!?」

「はあ…………おまえら年寄り相手に容赦ねぇなぁ。――――うっかり本気出しちまっただろうが?」
しかしレオニダスが公開した手札を知ると驚き、ルトガーは溜息を吐いた後不敵な笑みを浮かべて自身の手札を公開した。
「ロ、ロイヤルストレートフラッシュ!」

「ほう…………!」

「んなアホなあああああっ!?」
ルトガーの手札の凄さにレオニダスはディーラーと共に驚き、ゼノが悲鳴を上げると周りの観客達が称賛の拍手をした。
「いやはや、見事な逆ブラフでした。それではチップは全額そちらに移動となります。」

「いやー、悪いねぇ。」

「ふう、さすが団長。相変わらずの腕前だな。」

「ウ、ウソや…………あんなん絶対イカサマや…………」

「ハハ、どうしたゼノ。ブラフはお前の領分だろ?若いモンは元気がなくちゃな。なんだったら一杯奢ってやろうか、ん?」

「だあっ、煽りが大人げないっちゅうねん!」

「あなたたちは…………」
勝負が終わった事で観客達がその場から去るとリィンがルトガー達に声をかけた。


「おお、若いの。久しぶりじゃねえか。ハハ、サザ―ラント以来か。”紫電”も”久しぶり”だな?」

「…………ええ、久しぶりね。”西風”の団長さん。」

「ふう、そんな気さくに声をかけられても困るんですが…………」

「西風―――なるほど、話に聞いていたフィー君の…………」

「ガルシアさんが以前所属していた猟兵団でもありますわね…………」

「そして”猟兵王”…………情報通り、ですか。」

「”氷の乙女”も久しぶりだな。」

「…………ん?そっちの嬢ちゃんもどっかで見たことがあるような。」

「ハハ、綺麗どころを引き攣れて羨ましいじゃないか。立ち話もなんだ、よかったらあっちのラウンジに付き合わないか?―――なにやら色々聞きたい事もあるみたいだしな。」

「…………ええ、よろしくお願いします。」
ルトガーの提案に頷いたリィンは仲間達と共にラウンジに移動してルトガー達と対峙した。


「はは、結局酒は頼まなかったのか?せっかくの良い夜なのに勿体ねぇな。所詮宵越しの金だ、オゴりだからって遠慮しなくたっていいんだぜ?」

「くっ、人から巻き上げたミラやと思って。」

「まあ、こちらも一応仕事中ですから。」

「それに生憎、貴方達の前で酔っ払うほどの度胸はないしねぇ。」

「フッ…………用心深い事だ。」

「やれやれ、つれないねぇ。オジさんは寂しいぜ。しかしまさか”四大”の御令嬢と”氷”の将校さんまで一緒とは。」
酒を断ったサラの理由にレオニダスは静かな笑みを浮かべ、ルトガーは苦笑した後クレア少佐とアンゼリカに視線を向けた。
「あくまで任務外の息抜きです。」

「フッ、折角フォートガード州に来てラクウェルの夜を楽しまないのは損というものだしね。」

「ハハ、わかってるじゃねぇか。―――ま、そう身構えないでくれや。フィーが世話になってきた礼をちゃんとしたかったのもあるしな。」

「…………一方的に礼を言われるようなことではありません。特務部隊の仲間として、旧Ⅶ組の彼らはクラスメイトとしてお互い支えあってきただけです。」

「Ⅶ組への参加や特務部隊への参加も、遊撃士の道もフィーが自分自身で決めたことよ。あたしたちに礼を言う暇があるなら”元保護者”としてちゃんと話す機会を作るべきじゃないの?」

「ハハ…………耳が痛いねぇ。」

「ま、それを言われちゃ流石にグウの音も出ぇへんわ。」

「…………それでも感謝はしている。」
サラの指摘にルトガー達はそれぞれ苦笑していた。


「…………わかりました。ともあれ、本題に入らせてください。貴方達がこの地にいること…………まさか偶然だとは言いませんよね?―――”黒の工房”に協力して何をしようとしているんですか?」

「へえ…………」

「ふむ…………」

「クク、グイグイ来るねぇ。嫌いじゃないぜ、そういうの。―――もっと踏み込んで色々聞いてくれてもいいんだぜ?例えばサザ―ラントで見せたアレのこと―――気になってんだろう?」

「あ…………」

「(あの紫色の”影”…………)……………………聞きたいのは山々ですがすんなり答えていただけるんですか?」
ルトガーの指摘にセレーネと共にリィンはサザ―ラントでの出来事を思い返したリィンはルトガーに問いかけた。

「ハハ、まあタダじゃあ無理だ。一応”守秘義務”があるんでな―――おいそれと話すわけにはいかねぇ。」

「――――!」

「っ…………!」
リィンの問いかけに答えたルトガーは懐に手を入れ、それを見たリィンとクレア少佐は顔色を変えたがルトガーは意外な物を懐から取り出して机に置いてリィン達に見せた。
「――――だからコイツで勝負といかねぇか?」

「え………」

「それは確か…………VM(ヴァンテージマスターズ)のデッキですわよね?」

「ああ、最近巷で流行っているという戦術カードゲームか。」

「俺達もちょいとハマっててな。もし俺達全員に勝てたら”これ以上”を喋ってやってもいいぜ。」

「カードゲームで情報を…………?」

「やれやれ、つくづく食えないオジサンねぇ。」
ルトガーの提案にクレア少佐が目を丸くしている中サラは苦笑していた。


「団長…………」

「はあ、文句言われても知らんで?」

「クク、若いモンにはチャンスを与えてやるもんだ。そして報酬はてめぇ自身の手で”掴み取るもの”――――乗るかよ、リィン・シュバルツァー?」

「――――わかりました。受けて立たせてもらいます。」

「ブレードもやってたしあたしも…………といいたいところだけど。デッキ構築が要るゲームはちょっと面倒くさいわねぇ。」

「わたくしも自分の”VM”のデッキはあるのですが、正直対戦の経験はあまりありませんので、勝つ自信はありませんわ。」

「ブラックジャックやポーカーなら自信はあるのですが…………」
リィンはルトガーの提案に乗ったがサラとセレーネ、クレア少佐はそれぞれ自信なさげな答えを口にした。
「ハハ、それだと多分少佐殿の一人勝ちだろうしな。ちょうど買ったばかりで未開封の完成デッキが余っている。お互いそいつを使ってやればそう差は出ねぇんじゃねえか?」

「…………なるほど、一応フェアな条件みたいだね。私がジャッジを引き受けよう。イカサマがないかどうかは検めさせてもらうよ?」

「フフ、好きにしな。」

「それでは1ゲームは私が引き受けましょう。」

「あたしも参加するわ。―――組み合わせはどうする?」

「ほな”紫電”の姐さんはオレの相手をしてもらおか。」

「”氷の乙女”は引き受けよう―――手並みを拝見させてもらう。」

「それでは、俺が貴方とですね。」
ゼノとレオニダスがそれぞれの相手を指名するとリィンは自分の相手であるルトガーを見つめた。
「クク、お手柔らかにな。それじゃあさっそく始めるとしようか…………!」
その後、アンゼリカが完成デッキにイカサマがないことを確認した後、ゲームが始まったのだった。

「―――ほな、ここで”コンジュレート”や。姐さんの切り札にはしばらく黙っといてもらおか?」

「チッ、やるわね…………!」

「”ブレイズ”で強化して攻撃―――マスターに6点のダメージだ。」

(………当たりが強いですね。)

「サラさん、クレア少佐…………!」

「慣れているとはいえ、あの二人を押すほどとはね…………」

「ええ………それにルトガーさんも…………」
サラとクレア少佐の劣勢の様子にリィンは不安そうな表情で声を上げ、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟き、セレーネは心配そうな表情でリィンを見つめた。
「ハハ、さっきから余所見ばかりだな。一気に畳みかけちまうぞ?”キュリア・ベル”のスキル発動。全体にダメージだ。」

「くっ…………!(ここで負けるわけには…………!)」
そして自身も押され気味である事にリィンが唇を噛みしめたその時
「――――クハハ!揃いも揃って情けねぇなぁ?」

「え………」

「この声は…………!」
聞き覚えのある男子の声が聞こえ、声を聞いて驚いたリィン達が視線を向けると新Ⅶ組の面々がリィン達に近づいてきた。


「アッシュさん、ミュゼさん!?ユウナさん達までどうして…………」

「ふふっ、来ちゃいました♪」

「よ、ようやく見つけたと思ったら…………!」

「ほう、あの時の…………新顔も混じってやがるな。」

「黒兎も久しぶりだ。」

「ハハ、こないなところで何をしとるんや?」

「…………こちらのセリフかと。」

「あのカードゲームは…………何やらややこしい状況だな。」

「うん…………みんな、押されているわ。」
リィン達の状況を確認したアルティナはゼノの問いかけにジト目で答え、リィン達が劣勢である事に気づいているクルトとゲルドは真剣な表情で呟いた。
「ハッ、話は後だろ。…………ハン、なるほどな。代われやバレスタイン。オレがひっくり返してやるよ。」

「へ。」

「なんやと…………?」
アッシュの意外な提案にサラと対戦相手のゼノもそれぞれ呆け
「ふふ、このゲームなら私もある程度覚えがあります。少佐ほどの計算は無理ですが、どうかお任せ頂けませんか?」

「あ…………」

「ふむ…………」
更にミュゼの提案にもクレア少佐は呆け、レオニダスは興味ありげな表情でミュゼに視線を向けた。
「ちょ、大丈夫なの!?」
一方ユウナは不安そうな表情で交代を申し出たアッシュとミュゼに訊ねた。

「ふう………付け焼刃じゃここまでか。」

「ええ、少なくとも私達よりも心得はある様子。構いませんか?」
サラと共に交代する事を決めたクレア少佐はレオニダス達に確認した。
「…………こちらは問題はない。」

「ハハ、どうひっくり返すんかはお手並み拝見させてもらおか?」

「アッシュさん、ミュゼさん…………」
確認された二人はそれぞれ承諾の答えを口にし、セレーネは目を丸くしてミュゼとアッシュを見つめた。
「フフ、面白い展開になってきたじゃないか。若いの、こちらはいったん仕切り直すとしようぜ?」

「いいんですか?盤面はそちらの有利ですが。」
ルトガーの意外な提案に目を丸くしたリィンはルトガーに確認した。
「ま、横ばかり見てるヤツに勝っても面白くもなんともないんでな。―――今度はガチで真剣勝負と洒落込もうや。」

「…………わかりました。お言葉に甘えさせてもらいます。」

「クク、折角だしお前さんが作ったデッキを使ってくれてもいいぜ?もちろんその場合は俺も自分のデッキで相手させてもらうが。」

「(猟兵王のデッキか…………かなりの手強そうだな。だが今の手持ちのカードなら何とか勝負になるかもしれない…………)…………わかりました。俺のデッキで挑まさせてもらいます。」

「はは、そう来なくちゃな…………!それじゃあ仕切り直しだ――――準備するとしようか。」
その後リィンはルトガーとのゲームを仕切り直しをし始め、アッシュとミュゼはそれぞれの対戦相手との対戦を開始した。


「あの二人、大丈夫なの?」

「わからないが…………任せるしかないだろう。」

「教官の相手もあの猟兵王…………全く気が抜けませんね。」

「うん…………みんな、頑張って…………!」

「頼んだわよ、君達…………!」

「リィンさんもどうか…………!」

「ご武運のお祈りしていますわ…………!」

「――――それではリィン君とルトガー氏の再試合を始める!」

「行くぞ―――!」

「ハハ、来な…………!」
そしてリィンはルトガーとの再試合を始めた。ルトガーは見た事もない強力なカードを持っていた為、試合は相当な激戦となったが、リィンはマスターカードの残りHPが瀬戸際の状態でルトガーから勝利をもぎ取った。


「マスター撃破…………!リィン君の勝利だ!」

「…………ふうっ。(なんとかなったか…………)」

「ハハ…………ここまでか。」
アンゼリカがリィンの勝利を宣言するとリィンは安堵の溜息を吐き、ルトガーは苦笑していた。
「や、やった…………!」

「よく勝てたな…………」

「うん…………本当にギリギリの勝負だったわ。」

「ミュゼさんとアッシュさんは―――」
ユウナ達がリィンの勝利を喜んでいる中アルティナはミュゼとアッシュの状況を確認した。
「――――クク、で、こいつで終いってワケだ。」

「嘘やろ!?”ヴァニッシュ”3連続で18点ダメージやとお!?オイオイ坊、んなモン今の今までどこに隠し持っとったんや?さてはお前―――」
アッシュが出した切り札に驚いたゼノはアッシュがイカサマした事を疑ったが
「ハッ、まさか証拠もねぇのにイカサマとか言わねぇよな?切り札は最後まで隠しとくのは常識だぜ。」

「ハハッ…………!おもろいボンやなぁ!」
アッシュが堂々とした様子でイカサマをしていない事を答えると感心した様子でアッシュを見つめた。
「ふふっ…………これでターン終了です。」

「次のターンでこちらの負け、か。…………見事だな。きめ手は3ターン前の”タイド”か。よくぞこの勝ち筋を見出したものだ。」

「うふふ、そんな。たまたま引きがよかっただけで。」
レオニダスに勝利したミュゼはレオニダスの賛辞に謙遜した様子で答えた。


「あ…………」

「無事、勝ったみたいですね。」

「ふう、二人ともよくあそこから凌いだな。」

「うん、少なくても私だと予知能力を使っても勝てなかったと思うわ。」

「フフ、今回はアッシュさん達に助けられてしまいましたわね。」

「ええ………どうやら定跡と戦型を完璧に使いこなしたみたいです。」

「アッシュは多分イカサマか…………いずれにせよ見事だわ。
生徒達の勝利にセレーネは苦笑し、クレア少佐とサラは感心した様子でアッシュたちを見守っていた。

「やれやれ、本当に3人とも負かされるとはなぁ。やっぱり若いヤツには勝てん勝てん。これも寄る年波ってやるかねぇ。」

「…………ふう、こっちはあまり勝った気がしてないんですが。教え子に助けられた上に仕切り直しまでしてもらいましたし。」

「クク、それでも勝ちは勝ち、約束は約束ってヤツじゃねえか?―――”報酬”の時間だ。いくつかは質問に答えてやろう。ちなみに前に見せた紫のヤツは”ゼクトール”って名前だ。それ以上は守秘義務で話せねぇがな。」
ルトガーが口にした情報を聞きリィン達はそれぞれ顔色を変えた。


「紫のって、サザ―ラントで見た…………」

「ゼクトール―――ますます”騎髪”っぽい響きだけど…………」

「そういえば分校長の騎神―――”アルグレオン”は”銀”ですけど…………”騎神”は一体何体存在しているのでしょうね…………?」
サザ―ラントで見た紫の”影”―――ゼクトールを思い返したユウナは真剣な表情で呟き、サラとセレーネはそれぞれ考え込んでいた。
「――――では、それ以外にも幾つか。貴方達を含めて、この地では”4つ”の団が暗躍しているみたいだ。西風に赤い星座、ニーズヘッグ。そして正体不明の”紫の猟兵”―――それぞれの目的は一体、何ですか?」

「あ…………」

「フフ、直球だねぇ。」
リィンの質問にアルティナは呆けた声を出し、アンゼリカは感心した様子で見守っていた。
「ま、そこに来るわな。4つの団の目的はそれぞれ違うが、大まかに二つの陣営にわかれていてな。片方の陣営は、赤い星座と、紫の猟兵―――もう片方の陣営は、俺達と”政府に雇われた”ニーズヘッグがいる。」

「せ、政府があの黒い猟兵を…………!?」

「…………そう、だったんですか。」

「協力関係も予想通りか…………」

「…………あれ?でも確か猟兵の雇用を禁止する”西ゼムリア同盟”に調印しているエレボニア帝国も猟兵を雇ってはいけないんじゃあ…………?」

「…………恐らく”ハーメル”の件同様、各国家には内密にするために少なくても政府側は証拠を残さず裏で雇っているんだろうな。」
ニーズヘッグがエレボニア帝国政府が雇っている事にユウナとクレア少佐が驚いている中、アンゼリカは真剣な表情で呟き、ゲルドの疑問にクルトは複雑そうな表情で答えた。


「…………同じ陣営だが、貴方がたは政府に雇われているわけではないんですね?」

「ああ、その通りだ。」

「ま、利害の一致でニーズヘッグをバックアップしとるだけやね。」

「俺達が”何処”に雇われているかはもうバレちまってるみたいだし…………赤い星座が”結社”の側についてるのは今更言うまでもねぇだろう。問題は”紫の猟兵”だが――――とっくに気づいてんだろ?サラ・バレスタイン。北方戦役で破れ、それでも”誇り”を捨てきれなかった死兵たち…………”北の猟兵”の脱退組だっていうのを。」

「ッ…………!!」
サラを見つめて指摘したルトガーの指摘にリィン達がそれぞれ驚いている中サラは唇をかみしめた。


「”北の猟兵”…………!」

「そ、それってたしか…………」

「旧ノーザンブリア自治州を本拠とした大規模猟兵団の名前ですね。」

「そして2年前のメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争―――”七日戦役”の勃発の原因となったリィン教官達の故郷を襲撃した猟兵達ね…………」
クルトは声を上げ、不安そうな表情をしているユウナに続くようにアルティナは答え、ゲルドは静かな表情でリィンを見つめて呟いた。
「…………やっぱり、そういうことだったのね。」

「サラさん…………」

「やはりサラさんは薄々気づかれていたのですか…………」

「……………………」
厳しい表情で呟いたサラの様子をクレア少佐とセレーネはそれぞれ辛そうな表情で見つめ、リィンは目を伏せて考え込み
「フフ…………」
その様子を見たルトガーが静かな笑みを浮かべているとゼノとレオニダスが立ち上がった。


「おい、待てやコラ!」

「せっかく3人勝ったのに報酬が名前と陣営だけというのはケチすぎやしないかい?」

「クク、守秘義務の完全無視はさすがにカンベンしてくれ。今回の報酬としちゃ十分すぎるくらいだろう?」
去ろうとする自分達を呼び止めて文句を言うアッシュとアンゼリカに対してルトガーは苦笑しながらリィン達に問いかけた後伏せていた自分の残りの手札をリィン達に見せた。

「あ…………」

「………てめぇ…………」

(やはり…………)
ルトガーが見せた手札を見て、ルトガーは本当はリィンに勝てたのにわざと負けた事を悟ったリィンは呆けた声を出し、アッシュはルトガーを睨み、ミュゼは納得した様子で手札を見つめていた。
「クク、だが良い勝負だった。…………またどこかでな。」

「ほなな、ボンども。なかなか楽しかったで~。」

「機会があればまた相手をしてもらおう。―――さらばだ。」

「――――待ちなさい。”キリングベア”から貴方達に伝言があるわ。」
ルトガー達が去ろうとするとサラが呼び止めた。
「”キリングベア”――――ガルシアやと…………?確か奴は今、クロスベルのムショに入っているはずやけど、何で”紫電”がわざわざクロスベルのムショにいる奴と会ったんや?」

「――――先月様々な事情によってクロスベル政府の判断で一時的に仮釈放された彼と共闘する事があったのよ。」

「先月…………――――フッ、クロスベルに潜伏していたエレボニアの諜報関係者達をクロスベル帝国軍・警察がギルドと協力して一網打尽にした件か。」

「ハハ、俺達もその件は風の噂で聞いてはいたがまさかガルシアも関わっていたとはな…………で、ガルシアは俺達に何を伝えろって言ったんだ?」
ゼノの疑問に答えたサラの説明にレオニダスは納得し、ルトガーは軽く笑った後興味ありげな様子でサラにつづきを促した。
「『猟兵を西ゼムリア大陸から締め出すも同然の西ゼムリア同盟が調印され、オルランドの一族も俺のように猟兵稼業から退いた闘神の息子を除けば全員死に絶えた今の時代に”猟兵”はもはや”時代遅れの存在”だ。時代に取り残されたくなければ、俺のように猟兵を辞めた方がいいぜ』――――それが貴方達への伝言よ。」

「ハハ、『猟兵は時代遅れの存在』、か。言い得て妙やな。」

「…………ああ。実際、裏で様々な事を画策しているエレボニア政府を除けば”表”の組織で猟兵を雇う組織は西ゼムリアには存在しないだろう。」

「全くだな…………そういう意味では猟兵が生き辛いこんな時代でも猟兵を続けている俺達も北の猟兵の脱退組と同じ穴の狢かもしれねぇな…………―――ガルシアの伝言をわざわざ届けてくれたことには感謝しているぜ。――――それじゃあな。」
そしてルトガー達は去って行き、ルトガー達が去るとリィン達はルトガーが残していったルトガーの残りカードを確認した。


「え、この残りカードって…………」

「こんな組み合わせを残していたということは…………」

「問答無用で大ダメージを与えられる最強の組み合わせ…………彼は終盤、いつでもこれを繰り出せるのにしなかった。…………どう考えても手を抜かれていたんだろうな。」

「あ…………」

「お兄様…………」

「ここがこう、ああなって…………確かにその可能性は高そうです。」

「チッ…………見ねぇマスターといい、何か仕込んでやがったのか?」

「もしかしてこれも”黒の工房”が関係しているのかしら?」

「いえ、恐るべき引きと卓越した戦術眼の為せる業かと。(………ふふ、”猟兵王”でしたか。)」
アッシュとゲルドの疑問に静かな表情で答えたミュゼはルトガーを思い返して苦笑していた。
「…………まあ、勝ちは勝ちよ。捨て台詞なんて放っておきなさい。」

「得られた情報は僅かでしたが収穫は限りなく大きいと思います。」

「胸を張りたまえ、リィン君。それにミュゼ君とアッシュ君も。」

「あ…………」

「ふふ、ありがとうございます。」

「ハッ、せいぜい恩に着ろや。」

「…………ああ、来てくれて本当に助かった。――――だが、どうしてここに居るかは聞かせてもらう必要がありそうだな?」

「――――そうですわね。来てくれたことには感謝していますが、要請(オーダー)の件でもないのに、ミハイル少佐に許可も取らずにわたくし達を追った事に関してはわたくし達も色々と言いたいことがありますしね。」
リィンとセレーネが自分達を説教しようとした事に生徒達はそれぞれ顔色を変え
「~~~~♪~~~」

「ふう、慣れない勝負の熱気でちょっとめまいが…………」
アッシュとミュゼはそれぞれ誤魔化そうとしていた。
「ちょっ、言いだしっぺは―――ってあたしたちも完全に同罪か。」

「ああ、しかも彼らは教官達のフォローも果したからな…………」

「VM…………合間を見て定跡を学習すべきでしょうか。」

「あ、それなら私と一緒に勉強しましょう、アル。いつか、お義父さん達ともこのカードゲームで遊びたいと思っているもの。」

「―――そういう問題じゃない。そもそも学生の身でこんな場所に…………」
その後セレーネと共に生徒達を説教したリィンはセレーネ達と共にカジノを出てラクウェルの出入り口付近に駐輪している導力バイクの所に向かおうとすると意外な人物達がリィン達に声をかけた。


~ラクウェル~

「―――こんな所でお前達は何をしている?」

「へ…………」

「な――――」

「ええっ!?ど、どうして陛下達がここに…………!?」
聞き覚えのある声にリィンが呆けて声が聞こえた方向に視線を向けるとそこにはリウイ、イリーナ、エクリア、カーリアンがいて、リウイ達を見たクレア少佐は絶句し、セレーネは信じられない表情で声を上げた。
「へ、”陛下”って…………」

「…………銀髪の男性は”英雄王”リウイ・マーシルン前皇帝陛下。メンフィル帝国の前皇帝にしてゲルドさんの義父でもあります。」

「貴方達があの…………」

「へえ?クク…………連れの女はどれもとんでもない上玉揃いなのに、その女達を連れてわざわざ他国の歓楽街に遊びに来るとか、お堅そうな面の割にはクロスベルの好色皇と大して変わんねぇな。」
セレーネが呟いた言葉を聞いたユウナが信じられない表情をしている中アルティナが説明し、クルトは驚きの表情でリウイ達を見つめ、アッシュは不敵な笑みを浮かべてリウイ達を見つめた。
「ア、アッシュさん!?」

「さすがに相手が不味すぎるわよ!?すぐに謝りなさい…………!」
アッシュのリウイに対する無礼な口ぶりにセレーネとサラはそれぞれ慌て
「フフ、まさかこのような形でゲルドさんの”実家”のご家族とお会いする事になるとは思いもしませんでしたわ♪」

「あ…………ミュゼ達もそうだけど、ユウナ達にもお義父さん達はまだ紹介していなかったわね…………―――紹介するわ。アルもさっき言ったように銀髪の男性がリウイお義父さん、金髪の女性がセシルお義母さんとは別のもう一人のお義母さんのイリーナお義母さんで、イリーナお義母さんの隣にいるメイドさんはエクリアさんって言って、お義父さんとイリーナお義母さんを支えているメイドさんよ。」
一方ミュゼは暢気に微笑みながらリウイ達を見つめ、ミュゼの言葉を聞いてある事を思い出したゲルドはユウナ達にリウイ達を紹介し、ゲルドのマイペースさにリィン達とリウイ達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。


「この状況で真っ先に家族の紹介をするとか、いろいろとズレた娘ね…………」

「ハッハッハッ、まさにその純白の髪のような純粋な性格である証拠じゃないですか。」
我に返ったサラは呆れた表情で溜息を吐き、アンゼリカは暢気に笑い
「…………先程の紹介に出たメンフィル大使リウイ・マーシルンだ。見知り置き願おうか―――トールズ第Ⅱ分校、新Ⅶ組。」

「リウイの正妃のイリーナ・マーシルンと申します。ゼムリア大陸に来たばかりの私達の娘がいつもお世話になっております。」

「リウイ・イリーナ両陛下にお仕えしているエクリア・フェミリンスと申します。以後お見知りおきを。」

「フフ、私はカーリアン。リウイの愛人みたいなものよ♪」
その様子を見て再び冷や汗をかいて脱力したリウイは気を取り直して自己紹介をし、イリーナたちもリウイに続くように自己紹介をしたがカーリアンの自己紹介を聞くとリィン達に加えてリウイ達もそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「あ、”愛人”!?」

「…………まあ、厳密にいえば違いますが、似たような存在ではありますね。」

「いやいや、全然違うから!カーリアン様はれっきとしたリウイ陛下の側妃だから!す、すみません…………生徒達が陛下達に無礼な口を…………」
カーリアンの言葉を真に受けて驚いているユウナにアルティナはジト目で指摘し、慌てた様子で二人に指摘したリィンはリウイ達に謝罪をした。

「別に構わん。―――それよりも、何故お前達がこんな時間でわざわざ歓楽街にいる?まさかとは思うがこれもお前達新Ⅶ組の”特務活動”とやらの一環か?」

「しかもカジノから出てきたわよね~?もしかして生徒達にギャンブルを教えていたのかしら♪」

「ア、アハハ…………これには色々と複雑な事情がありまして…………というか、わたくし達の方こそ、カーリアン様達が何故こちらにいらっしゃるのかを訊ねたいのですが…………」
リウイに続くようにからかいの表情で問いかけたカーリアンの問いかけにセレーネは苦笑しながら答えを誤魔化した。


「”カーリアン”…………?あ、もしかして貴女がカーリアンお祖母(ばあ)ちゃん?」

「ブッ!?」

「ゲ、ゲルドさん!?」

「誰がお祖母(ばあ)ちゃんよ!?その白い髪…………貴女がリウイ達の話にあったリウイ達の養子の一人になったゲルドって娘なんでしょうけど…………何で私の事をお祖母(ばあ)ちゃんなんて呼ぶのよ!?」
カーリアンの名前を聞いてある事を思い出したゲルドの問いかけにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは噴きだし、セレーネは表情を青褪めさせ、カーリアンは顔に青筋を立てて声を上げてゲルドを睨んで問いかけた。
「え?リフィア義姉(ねえ)さんが私の事を”妹”扱いしてくれていて、リフィア義姉さんが”カーリアン”っていう名前の肌を凄く露出している女性はリフィア義姉さんのおばあちゃんだから私もその人に会ったらそう呼べって…………」

「やっぱり元凶はリフィアね!次に会ったら覚えておきなさい…………!――――それと、私の事は普通に名前で呼びなさい!私はまだそんな年じゃないわよ!?」

「やれやれ………――――新Ⅶ組の他にもいるそれぞれの”立場”の者達とこんな時間にここに来たという事は…………大方、このフォートガードで暗躍している西風、星座、ニーズヘッグ、そして”北”の残党共の動きを調べるためといった所か?」
ゲルドの答えを聞いて顔に青筋を立ててある人物の顔を思い浮かべたカーリアンはゲルドに指摘し、カーリアンの”実年齢”を知っているリウイ達やリィン、セレーネはカーリアンのゲルドへの指摘を聞くとそれぞれ冷や汗をかき、リウイが呆れた表情で溜息を吐いた後気を取り直してリィン達に問いかけるとリィン達はそれぞれ驚きの表情を浮かべた。


「ええっ!?」

「メンフィル帝国はこのフォートガードで暗躍している猟兵団全てを既に把握していらっしゃったのですか…………」

「やれやれ、リィン君達が何とか猟兵王達からつかみ取った”報酬”の価値が一瞬で暴落するとはね。」

「…………やはり陛下達も既にご存知でしたか。」

「知っていたのでしたら、予めわたし達にも情報を回して欲しかったのですが。」

「ア、アルティナさん。」
ユウナは驚きの声を上げ、クルトは真剣な表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、リィンは納得した様子で呟き、ジト目でリウイに文句を言うアルティナの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかいた。
「猟兵王…………確か4年前の異変の際に結社と共にロレントを攻めてきた所をファーミシルス様が討ち取った”西風の旅団”という猟兵団の団長でしたね。」

「ああ、そういえば殺したはずの獲物を生き返った事を知ったファーミが今度会ったら前と違って2度と生き返らないように『首を刈り取る』って息巻いていたわね~。ま、私も機会があればその猟兵王って奴と殺り合いたいわね~♪久しぶりに殺り合いがいがある相手である事もそうだけど、もし私が猟兵王をファーミよりも先に殺せば、ファーミの事だから物凄く悔しがるでしょうし♪」
アンゼリカの言葉を聞いてある事を思い出したイリーナは静かな表情で呟き、暢気な様子で呟いたカーリアンの物騒な発言にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「フフ、”空の覇者”と名高いファーミシルス大将軍閣下が一度討ち取ったはずの”猟兵王”に対してそこまで執着しているという事は、もし今回の演習地で猟兵王―――”西風の旅団”が立ち塞がるかもしれない”要請(オーダー)”が発生した際は大将軍閣下を教官達のサポートとして派遣して頂けるのでしょうか?」

「…………さてな。だが、既にエレボニア帝国政府からリィン・シュバルツァーに対する要請(オーダー)の話は打診されている事は事実だ。」

「メンフィル帝国政府を通したエレボニア帝国政府の教官に対する要請(オーダー)が既に打診されているという事は…………」

「…………既に政府はこの地で”何が起こるか”、想定済みという事ですか。」

「ハッ、どうせサザ―ラントの時と同じで事件が起こっても正規軍を動かすつもりは全くねぇんだろうな。」
ミュゼの質問に対する答えを誤魔化した後にリウイが口にした驚愕の事実にリィン達がそれぞれ血相を変えている中クルトは重々しい様子を纏って呟き、クレア少佐は複雑そうな表情で推測し、アッシュは鼻を鳴らして皮肉気な笑みを浮かべた。


「…………陛下。その打診されているという要請(オーダー)の内容をここで教えて頂く事はできないでしょうか?」

「悪いがそれはできん。事件が起こるまでは他言無用という約定を帝国政府と予め取り決めている。――――が、今回の要請(オーダー)に関わると推測される結社の残党共のメンバーくらいならば教えても構わん。」

「やっぱり、結社もこの地でもサザ―ラントやクロスベルの時のような”実験”をするつもりなのね…………ちなみに、今回の”実験”を担当していると思われる結社のメンバーは誰なんですか?」
リィンの質問に対して答えたリウイの答えを聞いて真剣な表情で呟いたサラはリウイに訊ねた。
「――――リアンヌが出陣()ざるを得ない者達といえば、お前達ならばわかるだろう。」

「リアンヌさんが出陣()ざるを得ない結社のメンバー…………?」

「ま、まさか…………」

「間違いなく”鉄機隊”かと。」
リウイの答えを聞いたゲルドが首を傾げている中心当たりがあるセレーネは不安そうな表情をし、アルティナは静かな表情で答えた。
「サザ―ラントの時の…………!」

「そ、そういえば次に結社の実験に関われば、分校長自らが教官の”要請(オーダー)”の補佐の一人として同行して引導を渡すみたいな事をプリネ皇女殿下が伝えていたわよね…………?」

「…………貴重な情報を教えて頂き、ありがとうございます。」
かつての出来事を思い出したクルトは声を上げ、ユウナは不安そうな表情で呟き、目を伏せてデュバリィ達の事を思い返したリィンは目を見開いてリウイを見つめて軽く頭を下げて感謝の言葉を述べた。

「お前達には世間知らずの養娘(ゲルド)の世話をしてもらっているからな。その礼代わりだ。」

「フフ、学院生活はどうかしら、ゲルド?」

「勉強は難しいけど、友達になったユウナ達や教官達が教えてくれるから何とか付いていけているし、”部活”もとても楽しいわ。…………あ、”部活”で思い出したのだけど、お義父さんに聞きたいことがあるのだけど…………」
リウイの後に問いかけたイリーナの質問に嬉しそうな様子で答えたゲルドはある事を思い出してリウイに訊ねた。


「俺に聞きたい事だと?一体どんな内容だ?」

「えっと………”高級クラブ”って、どんな”部活”なの?」

「ブッ!?」

「ゲ、ゲルドさん…………」

「クク、まさか覚えていて本当に聞くとはな。」

「クスクス、さすがはゲルドさんですわね♪」
ゲルドのリウイへの質問にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは噴きだし、セレーネは疲れた表情で肩を落とし、アッシュは口元に笑みを浮かべ、ミュゼは微笑んでいた。
「…………何故、俺にそれを聞こうと思ったのだ?」
頭痛を抑えるかのように疲れた表情で片手で頭を抱えたリウイはゲルドに訊ね
「教官達がヴァイスハイト皇帝みたいに”娼館”や”高級クラブ”に飽きる程通っているお義父さんなら、知っているんじゃないかって。あ、後お義父さんの側妃の中にはその”娼館”や”高級クラブ”でお義父さんに見初められた女性がいるかもしれないから、お義父さんに聞いた方がいいって。」

「プッ――――アハハハハハハッ!まあ、リウイもヴァイスみたいにそういった所には何度も通っていたから、リウイなら”高級クラブ”も知っていて当然でしょうね♪」

「俺をあの好色皇と一緒にするな…………それよりも、お前達はこの世界の事がほとんど知らない俺の養女(むすめ)に一体何を吹き込んだ?」
ゲルドの答えにカーリアンは噴きだした後腹を抱えて笑い、カーリアンの指摘に対して呆れた表情で答えたリウイは顔に青筋を立ててリィン達を睨んで問いかけた。


「ちょっ、俺はそんな失礼な事は一言も言っていませんよ!?ゲルドに陛下の事をそんな風に吹き込んだのは生徒達―――アッシュとアルティナです!」

「さぁて、そんな事を言った覚えはねぇな~。なんせ俺は”ラクウェルの悪童”なんで、頭の出来も悪いからな~。」

「私もリウイ陛下達に対してそのような無礼な言葉を口にした記憶はありません。リィン教官の記憶違いかと。」
リウイに睨まられたリィンは慌てた様子で言い訳をし、リィンの言い訳を聞いたアッシュとアルティナはそれぞれリウイ達を前にしてもいつものペースで責任逃れをしようとし、それを見たリィン達とリウイ達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。
「フフ、そういえば正妃である私もあなたがそういった施設に通っている事は知ってはいましたが、具体的な内容はあまり知りませんでしたわね。ちょうどいい機会ですし、この後教えてくださいね?――――特に、私に隠れて側妃や愛人を作っていたかどうかについて。」

「…………待て、イリーナ。誤解だ。確かに昔はそういった所にも通ってはいたが、今は通っていないし、そもそも俺の場合はヴァイスと違って情報収集の意味もあって―――」
するとイリーナは威圧を纏った微笑みを浮かべてリウイに問いかけ、問いかけられたリウイは冷や汗をかいて答え始めたが
「フフ…………まずは通い始めたのはいつ頃なのかを教えてもらいますからね?」
イリーナは聞く耳を持たずに、リウイと腕を組んでその場から去り
「あらら、最近は収まっていたのに久しぶりに出ちゃったわね、イリーナ様の嫉妬心が♪―――それじゃあね♪縁があったら、また会えるかもね♪」

「――――それでは我々はこれで失礼します。」
カーリアンはその様子を呑気に笑いながら見守った後リィン達にウインクをし、軽く会釈をしたエクリアと共にその場から去って行き、その様子を見ていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。


「…………カオスでしたね。」

「ハッハッハッ、さすがの”英雄王”も愛妻には勝てないようだね♪そういう所はリィン君と一緒だね♪」

「う”っ…………」
リウイ達がその場から去るとアルティナはジト目で呟き、暢気に笑いながら答えたアンゼリカの指摘に反論できないリィンは唸り声を上げた。
「そ、それにしてもリウイ陛下達がラクウェルにいらっしゃった事を考えると先程ノイエ=プランへと入店する際に口にしたヴァイスハイト陛下達の”相方”とは恐らくリウイ陛下達の事でしょうね。」

「まあ、そうでしょうね。結局どんな内容だったのかは聞けずじまいだったけど。」

「へ…………ヴァイスハイト陛下もラクウェルに来ていたんですか!?しかもノイエ=プランに入店したって…………!あ、あの女好きエロ皇帝は~!クロスベルのみんなが納める税金で何をやっているのよ~!?」

「まあ、恐らくノイエ=プランを隠れ蓑にしたリウイ陛下達との会談だろうから、決して私的な理由で税金を使っている訳じゃないと思うが…………」

「ア、アハハ…………それよりも早く演習地に戻りましょう?ミハイル少佐やトワ先輩達も首を長くしてわたくし達の帰りを待っているでしょうし。」

(結局、”高級クラブ”ってどんな部活だったのかしら??)
苦笑しながら話を露骨に変えたクレア少佐の推測にサラは疲れた表情で答え、二人の会話を聞いて驚いた後ヴァイスに対して怒っている様子のユウナにクルトは困った表情で指摘し、セレーネは苦笑した後演習地に戻るように促し、結局疑問が解けなかったゲルドは一人不思議そうな表情で首を傾げていた―――
 
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