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星河の覇皇

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第六十九部第五章 分権派の警戒その二十三

「取る」
「そうした国ですね」
「そうだ、ロシアという国はな」
「習性としてそうですね」
「国家としてのな」
「連合はそうした国が多いですが」
「あの首相は違う」 
 伊東、彼女はというのだ。
「欲を張らない」
「強くはですね」
「欲深くものを手に入れない」
「そして手に入れてもですね」
「相手に見返りを出す」
「だからこそ恨まれないのですね」
「そこも賢明だ」
 伊東を評しての言葉だ。
「狐だ」
「そうした面も狐ですね」
「賢明な、な」
「それも狐の中でも最も格の高い」
「妖力も強い」
「そうした方ですね」
「わかっている、策は成功させ目的を達成させるものだが」
 しかしというのだ。
「そこで恨みを買うと駄目だ」
「そのことも頭に入れる」
「勝っても勝ち過ぎずな」
「見返りは出すのですね」
「相手にな」
「そうした方だからこそ」
「有り難い、味方でいる場合はな」
 またこう言うのだった、伊東について。
「何はともあれ話はまずはまとまった、次の段階に移ろう」
「それでは」
「さて、ここまで話してだ」
 グリーニスキーは話を一旦止めた。 
 そしてだ、微笑んでこうも言ったのだった。
「喉が渇かないか」
「だからですね」
「紅茶をと思うが」
「ロシアンティーですね」
「それを飲むか」
「いいですね、では」
「私が淹れよう」
 グリーニスキーは自分から言った。
「そうしよう」
「閣下ご自身がですか」
「自分のことは自分で、だな」
「連合の言葉ですね」
「自分の靴は自分で磨く」 
 グリーニスキーはこうも言った。
「そうだな」
「連合の諺ですね」 
 この国共通のだ。
「まさに」
「貴族は自分の靴は磨かない」
 グリーニスキーはこの言葉も出した、連合ではこの言葉も諺として使われているのだ。ただしこちらは否定的な意味で使われている。
「そして自ら靴を磨けない者はな」
「靴を磨けなくなる」
「そういうことだ、紅茶もだ」
「そちらもですね」
「自分で淹れてこそ美味い」
「そうした紅茶を淹れられますね」
「そうだ、私が飲む紅茶はだ」
 まさにというのだ。
「私が淹れるものが最も美味い」
「それ故にですね」
「私が淹れる」
「では私も」
「君もそうするか」
「私も連合の人間です」
 微笑んでの返事であった。
「ですから」
「そうなるな」
「それではですね」
「お互いに自分で淹れるか」
「そうしましょう」
 こう二人で話してだ、そしてだった。 
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