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名医の手で

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第二章

「天下の名医でな、ひょっとしたらな」
「その華佗という方ならですね」
「お主の顔と肝をどうにかしてじゃ」
「ことを果たさせてくれますね」
「それが出来るかも知れない」
 まさにというのだ。
「だからな」
「それでは」
「うむ、華佗を呼ぼう」
 こう言ってだ、王允はすぐに華佗に文をやってそのうえで彼を自身の屋敷に呼んだ。すぐに髭は白くなっているが肌は瑞々しく動きのいい痩せた男が来てだった。王允と貂蝉の話を聞いてこう言った。
「確かに董卓殿を放っておけば」
「そうなればな」
「天下は酷くなる一方です」
「だからこそじゃ」
「貂蝉殿をですね」
「この者の顔と肝、何とかしてくれるか」
 王允は貂蝉に顔を向けつつ華佗に頼み込んだ。
「そして出来るか」
「出来ます」
 華佗は王允に即座に答えた。
「お任せ下さい」
「そうか、ではどうするのじゃ」
「少し時間を置いて下さい」
 まさにと言うのだった。
「すぐに顔と肝を持って来ます」
「その二つをか」
「はい、そしてここに戻ってきますので」
「そうすればか」
「必ずことは果たせます」
 こう断言してだ、華佗は即座にだった。
 一旦王允達の前から姿を消した、貂蝉はその後姿を見送ってから王允にこう言った。
「あの方の自信を見ますと」
「必ずか」
「はい、ものを持って来てくれます」
 間違いなくというのだ。
「顔と肝を」
「そしてか」
「すぐにです」
 まさにというのだ。
「私に授けてくれます」
「そうしてくれるか」
「ですから」
「今はか」
「ことを果たせる喜びを感じつつ」
「華佗殿をのじゃな」
「そうしましょう」
 貂蝉は王允に微笑んで言った、そうしてだった。
 今彼等は落ち着いていた、とはいっても王允は貂蝉の言う通りになるのかと思っていた。だがそれでもだった。
 貂蝉は華佗が戻って来るのを安心して待っていた、そうして華佗はその彼等のところに無事戻って来た。
 そしてだ、二人にこう言ったのだった。
「これぞという顔と肝を持ってきました」
「そのお顔と肝は」
 貂蝉は華佗に微笑んで応えた。
「西施と荊軻ですね」
「おわかりか」
「はい、お顔はです」
「西施だな」
「かつてこの国一の美女と言われた」
「越のな」
 まさにとだ、華佗は貂蝉に答えた。
「彼女の墓まで行ってだ」
「お顔をですか」
「持ってきたのだ」
「待て、西施は何百年も前の者だが」
 王允は華佗と貂蝉の話を聞いて驚いて言った。
「もうそこまでなると」
「顔はですね」
「腐り骸骨になっていないか」
「ですからその骸骨、髑髏からです」
 西施の墓にあったそれをというのだ。 
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