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本当の友人

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第三章

 彼はあることに気付いた、それで居酒屋で飲んでいる時に親父にカウンターから話した。
「本当の友達ってあれかな」
「何かわかったんですか?」
「うん、お互いが生きているうちはわからないのかな」
 こう言うのだった。
「ひょっとして」
「といいますと」
「いや、片方の人が死ぬよ」
 彼のことを思いつつ言うのだった。
「生きている方はその人が死んだことを悲しいと思う、それがね」
「友達ですか」
「何でもない人のことを死んで残念に思わないよね」
 こう親父に言うのだった。
「そうだよね」
「それはそうですね」
 親父も彼のその言葉に頷いた。
「何でもない人なんか」
「死んでも何も思わないね」
「はい、大事な人と思うから」
「死んだら残念に思うんだよ」
「その通りですね」
「それで死んだ人も自分の死に悲しんでいる人を見て」
 その死んだ方のことも話すのだった。
「その人が自分の友達だったってわかるのかな」
「死んで魂だけになった時にですか」
「そうなのかな」
「独特の考えですね、ですが」 
 それでもとだ、親父も否定せずに話した。
「そうかも知れないですね」
「最近そう考える様になったよ」
 何故そう考える様になったのかは言わなかった、友人のことを思い出してそれを言うには憚れたのだ。
「僕はね」
「深いですね。ですが」
「そうかな、やっぱり」
「そうかも知れないですね、自分が友達と思っていても相手はって本当にありますしね」
「それもあるしね」
「人間お互いが生きているうちは友達ってわからないんですね」
「そうも思う様になったよ、僕が死んだら」
 その時もだ、真壁は考えて述べた。
「その時は誰か悲しんだりしてくれたら嬉しいかな」
「その人が友達だからですね」
「そうだよ。友達って実はそんなものなのかな」
 またこう言った、そうしてだった。
 真壁は焼酎を飲みつつ焼き鳥も楽しんだ、その二つの組み合わせは実に美味かった。だが彼のことを思いつつまた悲しく残念に思った。彼のことを友達だったのだと噛み締めながら。


本当の友人   完


                 2018・8・5 
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