| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

琵琶湖の人魚

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一章

               琵琶湖の人魚
 吉川明文と尾崎宏晶は尾崎の神託で今は琵琶湖に来ていた、二人は今は日本の近江にあるこの湖をかつて都を東海や北陸から守る要であった安土城の天主閣からその琵琶湖を見ていた。
 そうしつつだ、尾崎は吉川にこんなことを言った。
「おいら達の世界では安土城はもう跡地だけですが」
「もうないものだ」
「はい、織田信長が築きましたが」
 それもかなりの金と人を使ってだ。
「そして豪華絢爛なものだったといいますが」
「その安土城もな」
「今はありません」 
「本能寺の変の混乱の中焼けてだ」
「もうありません」
「そして今は跡地だけだ」
「それがこの世界では」
「この通り存在している」
「見事な姿を見せていますね」
「この通りな、だからな」
 それでというのだ。
「こうして楽しめる」
「城の中を観て」
「それが出来る、しかしな」
「はい、おいらの神託ですが」
「そのことだな」
「はい、どういった神託か」
「琵琶湖と出たがな」
「それで今こうしてです」
 安土城の天守閣からというのだ、尚この城は本来は天主閣と書くと尾崎は他の城の様に考えているのでこうなっているのだ。
「安土城にいますが」
「それでもだな」
「琵琶湖です」
「君の神託の場所はな」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「これからです」
「天主閣を降りてな」
「琵琶湖に入りましょう」
「ではな」
 こうしてだった、尾崎は吉川と共にだった。
 城の天守閣から下りてそのうえで琵琶湖に出た、この世界の琵琶湖もまた彼等が起きた世界の五倍の面積があり相当な広さだ。
 その湖の中を船で進みつつだだ、尾崎は自身の神具である亀を琵琶湖の中に放った、この亀は空も飛べるし巨大化も出来て戦闘も可能だ。
 その亀が暫く湖の中を泳いでから船に戻ってきて主に言った。
「ご主人、どうもです」
「何かあったのかい?」
「はい、今湖の中は厄介ですよ」
「どうなってるのかな」
「湖の中に人魚や蛙人とかお水に縁のある種族の人達が暮らしてますが」
 それでもというのだ。
「そこで厄介ごとがありまして」
「厄介?」
「その人達のある村で揉めごとが起こってます」
「そうなんだ」
「それが湖全体に影響していて」
「ああ、それでだね」
「湖の中が厄介なことになってます」
 こう主に告げるのだった。
「ですから」
「ここはだね」
「解決された方がいいかと」
「それじゃあね」
「今からですね」
「湖の中に入るよ」
「都合がいいことにだ」 
 吉川も尾崎に言ってきた、二人が今乗っているオールで漕いで動かす小さな船の中で。
「私達は水中で自由に行動出来る種族だ」
「ならですね」
「都合がいい」
 まさにというのだ。
「水の中に入ろう」
「それでは」
「行くぞ」
 こう尾崎に言ってだ、尾崎と共にだった。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧