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夢幻水滸伝

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第八十話 東海と甲信その十

「活かしましょう」
「それではだがや」
「遠江、長篠辺りで戦にならなければ」
 その時はというのだ。
「その時はです」
「信濃の南に進んで」
「そして然るべき場所で合戦に挑みましょう」
 是非にと言うのだった。
「そうしましょう」
「それではだがや」
「周りを警戒しつつ」
 雅はこのことを忘れていなかった。
「そしてです」
「先に進んでいくだがや」
「そうしましょう」
 こう言ってだ、そしてだった。
 二人は東海の軍勢を北に進ませていった、その進軍は無理をせず兵達に飯もたらふく食わせていた。
 坂口は夜雅と共に本陣で味噌煮込みうどんを食いながら自分と同じものを食っている彼女に対してこう言った。
「どうだぎゃ、このうどんは」
「はい、味が濃くて」
 それでとだ、雅は食べつつ答えた。
「これはこれで、です」
「美味いだがや」
「そう思います、ただ」
「駿河ではだぎゃな」
「こうした濃い味はあまりないので」
「味噌をここまで使うことはないだがや」
「そしてお味噌自体も違います」
 このこともあってというのだ。
「八丁味噌ではないので」
「それだがや、尾張はやっぱりだがや」
「八丁味噌ですね」
「カツにもかけるだがや」
 所謂味噌カツである。
「そうした場所だからだがや」
「こうしてですね」
「濃い味にもなるだがや」
 そうだというのだ。
「これは本当に尾張、名古屋の味だがや」
「そうですね」
「それで他の国のモンの好き嫌いが分かれるぎゃ」
 どうしてもそうなってしまうとだ、坂口も自覚していた。そのうえで葱や茸、人参といったうどんや鶏肉以外のうどんの具も食べた。
「それでどうかと思っただぎゃが」
「私がですね」
「美味しいと言ってくれて何よりだがや」
「私は好きです、あときし麺や鶏肉も」
「好きだぎゃな」
「そうです」
「では海老もだぎゃな」
「勿論です」
「いいことだぎゃ、わしもだぎゃ」
 坂口はここでこうも言った。
「駿河の食いものは嫌いではないだがや」
「お蕎麦等ですか」
「そうだぎゃ、海の幸もいいし」
 それにと言うのだった。
「勿論蜜柑もだがや」
「やはり駿河はです」
「果物は蜜柑だがや」
「そうなります、私も多く作らせ」
「その時から売っていただぎゃな」
「そうしていましたし今もですね」
「東海の産業の一つになっているだがや」
 農業の方のそれにというのだ。
「お茶もそうにしてもだがや」
「はい、蜜柑もそうで」
「それでだぎゃ」
「味もいいです」
 肝心のこちらもというのだ。
「ですから是非棟梁も」
「わしは蜜柑も好きだがや」
 笑ってだ、坂口は雅に答えた。 
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