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戦国異伝供書

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第二十七話 幸村と茶その二

「非常にです」
「茶の道に通じておられますな」
「その方々にもお聞きすれば」
 それでというのだ。
「よくわかりますぞ」
「共に茶を飲みながら」
「まさにそうすれば」
 それでというのだ。
「おわかりになられます」
「だからですか」
「茶も学ばれることです」
「まさに学ぶことによってですな」
「磨かれるものです」
「武芸や兵法と同じですか」
「左様です」
 その通りだとだ、慶次は幸村に答えた。
「そもそも真田殿は日々武芸の鍛錬と軍学の学問に励んでおられますな」
「武士故に」
 幸村は真面目な声で答えた。
「ですから」
「ご幼少の時からですか」
「日々鍛錬し学んでおります」
「左様ですな、ではです」
「これからは」
「茶も。そして殿ならば」
 信長の性格を察してだ、慶次はこうも言った。
「きっと」
「おわかりですか」
「政もと言われていますな」
「その通りです、これからは政のことも学び」
 そうしてというのだ。
「そこでも天下の為に働けと言われました」
「それは何より。それがしは不便者です」
 幸村にもこう言うのだった。
「戦以外には動こうとしないので」
「だからですか」
「茶は飲みますが」
 それでもというのだ。
「政にはとんと興味がなく」
「戦のない時は」
「遊ぶまで。全く以てです」
 不便者というのだ。
「天下無双の。そのそれがしと比べれば真田殿はです」
「何でありますか」
「出来物ですな」
 そうなるというのだ。
「それがしとは正反対に」
「そう言って頂けますか」
「はい」
 まさにという返事だった。
「真田殿は間違いなくそうなれます」
「政においてもですか」
「天下泰平になった後も」
 まさにその後もというのだ。
「間違いなく、だからこそ」
「励めばよいですか」
「それがしもそう思いまする。そして殿に何かあれば」
 その時はというのだ。
「必ずそのお力がです」
「殿のお役に立ちますか」
「そうなりますぞ、若しかすると」
 慶次は幸村にこうも語った。
「真田殿が殿のお傍にいる様になったことは」
「天命だと言われますか」
「そうやも知れませぬな、直江殿もそうでしょうが」
「直江殿もですか」
「あの御仁もかなりの出来物」
 だからこそというのだ。
「あの方もおられて」
「それで、ですか」
「殿を助けられるのでしょう」
「思えば殿とはかつて敵で」
 武田家の家臣だった、その時のことを言うのだ。
「直江殿もまた」
「上杉家におられましたな」
「その直江殿と同じ織田家にいて」
「そして共に殿のお傍におられる」
「それは天命ですか」
「そうやも知れませぬな」
 こう幸村に言うのだった。
「それがしが思うところ」
「左様ですか」
「そしてです」
 さらに言う慶次だった。 
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