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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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たんてい

「はぐはぐ……んくっ…」

「美味しいかー? ベル?」

「んゅっ!」

「おい、食ってばっかり居ねぇでさっさと行くぞ」

リヴィラでの戦闘から三日。

ロキは地上に残ったベルとベートを連れ、オラリオを歩いていた。

構図的にはロキがベルを誘い、それをエサにベートを連れ出した形だ。

ロキに乗せられたベートは機嫌が悪い。

一方ベートと出掛ける事が出来てベルは喜んでいる。

その機嫌の良さはロキに指示されたウサミミカチューシャにワンピースという格好も受け入れる程だ。

そのロキは時折路地を覗いたり、住民や露店商に聞き込みをしたりしていた。

その間ベルをベートに任せ、ベルには何かを隠しているようだった。

「はぐはぐ……で? ロキは僕達に何をさせたいの? 僕をダシにしてベートさんを連れ出してどこ行くつもり?」

ジャガ丸君(カスタード)を平らげたベルが尋ねた。

「ふぁ!? な、なんのことや? ベルが何言うてんのかさっぱりや」

「どーせ食人花の調査でしょ?」

「…………………………………」

「ロキ?」

ロキはそっぽを向いて、下手な口笛を吹き始めた。

「バレバレじゃねぇか駄神が」

「あ、やっぱそうなんだ」

「はぁ……ま、そういうことや…」

ベルとベートを連れたロキは、路地の奥へと進んでいく。

「まぁ、ここ数日で街はあらかた調べたんや」

「ガネーシャファミリアとギルドは?」

「さぁな。モンスターフィリアの後始末で忙しそうやったさかい、行くんも憚られるわ」

「……………ロキにも常識ってあったんだね」

「酷いわぁ! ベルそんな辛口やった? 最近当たり強よない?」

「リヴィラに行ってる合間に僕のクローゼットの中身を全部女物にしといて言う?」

「そ、そら、あれや…ほら…、ベルは幹部やないのに一人部屋やし、ペナルティっちゅーか…」

「ベル、俺の部屋来るか?」

「是非」

「アカンで! ファミリア内での不純異性交遊は許さへんで!」

「獣姦趣味の変態がなんかほざいてる」

「そんなん昔のことやん!?」

「………マジかよ」

「あぁ! そんな目で見んといてぇ!」





閑話休題。

「で、あと残っとるんは…」

小さな小屋。

ギィ…とロキが木のドアを開ける。

コツコツと三人分の足音が、小屋の中の螺旋階段を下る。

「下水道?」

「そや」

「チッ…ラウル当たりに押し付けとくんだったぜ…」

「ちゃんとご褒美用意するわ。ベートには酒
ベルには新しい服や」

「男物でね」

「は? なんでそないな買わなあかんの?」

「もうやだコイツ…」

階段の底に着いた。

「ザート」

ベルの手に現れた錫杖が光を放つ。

「ティオネやティオナが当日に調べてくれてはおるんやけど、モンスターだけ追っとったら見落としとる物もあるかもしれへん」

「頭の足りねぇアマゾネス共だったら見落とし放題だろ」

水路に出た。

淡い光を放つ柵が、水路の中心をガイドビーコンのように等間隔に措かれている。

「あれは何ですか?」

「浄化装置。この下水道が繋がってる気水湖を汚さねぇためのな」

「………綺麗な下水……か」

「ベル?」

呟いたベルに、ロキが尋ねる。

「オラリオは、眩しい街だね」

ロキはキョトンとした顔をした後で、クツクツと笑い始めた。

「僕、おかしな事言ったかな?」

「いーや。ベルの言うとおりや。さ、行こか」

ロキがベルの背を軽く押す。

灯りを持つベルが先頭だ。

途中跳ねてきたレイダーフィッシュをベルがザートで叩き落とした以外は、特に何の障害も無かった。

「ん? なんやあれ」

ロキが指差す方には、鉄の扉があった。

ちょうどロキ達がいる対岸だ。

「ラヴィアス」

ベルがザートを持っていない手に破邪の尖角を握る。

穂先で水面を叩くと、対岸まで氷の橋ができた。

「お、ありがとなベル」

ロキは橋を渡ると、扉の検分を始めた。

「旧下水道やな。新しい水路が出来て放棄されたんやろ」

ベート、とロキが呼ぶと、ベートは面倒臭そうにしながら、錠前を引きちぎった。

「わ、すごい…」

「ベルも懐中時計の鎖くらいなら切れるはずやでぇ」

ベートが鉄扉を押し開ける。

「水浸しじゃねぇか…」

水路の水は溢れ、通路まで昇っていた。

「わー………なぁベート、おんぶしてくれへん?」

「ふざけんな自分で歩け」

「ベルぅー。おんぶー!」

「うわ重っ…。胸無いのになんでこんな重……」

「いてもうたろか?」

「はいはい…ラヴィアス」

ベルが再び穂先で地面を叩く。

「これでいいでしょ。一応、通路から水面までは凍らせたよ。でも、水路の上は薄くなっていくから、落ちないでね」

カツ…カツ…カツ…カツ…カツ…カツ…

「人の匂いがのこってやがるな…水でほとんど消えかけてるが…」

さらに進むと、それはあった。

穴。大きな穴だ。

「これは当たりか…?」

大穴は幾つもの水路を貫通しており、追っていくと、幾本もの水路を横切る事になった。

そして、終点。

「貯水槽…か?」

ベートの呟きと同時、ザートの灯りが内部を照らす。

緑の茎。醜悪な花。

「ロキ! 下がって!」

ベルがロキを後ろに突き飛ばす。

そして、ベルとベートが駆け出した。

「ベル! 幸い雌型は居ねぇ!」

「わかってます!」

ベルがザートを掲げる。

「スリプティーエ!」

ザートから打ち上げられた光が浄化槽の天井付近で大輪の華と化す。

「バルグレン! フランロート!」

錫杖と槍から双剣に持ち替えたベルが焔を纏う。

夜の虫のように、三体の食人花がベルに向かう。

「プラムオーク!」

その内の一体が火柱によって花を焼き落とされた。

「ベートさん! 焔使ってください!」

「一丁前に指図かよっ!」

「後でなんとでも!」

ベートがプラムオークの焔に脚を突っ込む。

焔が、脚甲に吸い込まれる。

フロスヴィルト。魔法を食う武具。

ベートは焔を纏った脚甲で、食人花に踵落としを見舞う。

「あと一匹!」

ベルが食人花に飛び付き、双刃を突き立てる。

内部から火が回り、最後の一匹も灰へと変わった。

パチパチパチパチ…。

「やー! 見事見事! あ、魔石回収してー」

ベルとベートが灰の中から極彩色の魔石を取る。

「撤収するで」













三人が小屋から出てくる。

「結局何の収穫もなかったなー」

「ご褒美は頂戴ね」

「あったり前や! モイラの所に頼みに行くでぇ!」

「縁起がいいのやら悪いのやら…」

ポンポンと極彩色の魔石三つでジャグリングするロキ。

「そういえば、ティオネが50層の雌型から同じ魔石を手にいれてたぞ」

「50……この前の遠征のか?」

「おう。で、この前のは…」

「ごめんなさい。ロキ。僕が砕きました」

「かめへんかめへん。無事なら何よりや」

暫く歩き、大通りに出た。

そこで、一人の男神を見かけた。

「ん? ディオニソスか」

首まで伸びる金髪、甘いマスク、蒼海のような瞳。

側にはファミリアの団員らしきエルフの女性。

ロキが声をかけようとしたとき。

「待て」

ベートが険のある声でロキを制した。

「あの地下水路で嗅いだ残り香は、そいつらの臭いだ」












「ロキ、大丈夫でしょうか…」

「心配ねぇよ。天界のトリックスターだぞ」

ベルは公園のベンチでベートの尻尾をもふもふしていた。

ロキがディオニソスとホテルのラウンジで密談する事となり、ベルとベートはその正面の公園で待つ事にした。

ベートが優しくベルの頭を撫でる。

「んゅぅぅぅ………」

ベルが目を細める。

「邪魔だな…コレ」

ベートがベルの頭からウサミミカチューシャを外す。

暫くすると、ベルがうつらうつらとし始めた。

「ベル」

ベートがそっとベルの体を倒し、頭を膝に乗せる。

「んきゅぅぅぅ……」

やがてスゥスゥと寝息をたて始めた。

ベートがベルの頭を撫でながら待っていると、割りとすぐにディオニソスが出て来て、かなり遅れてロキが出てきた。

「ベート。自分、ウチに何かあっても飛んで来る気ぃゼロやないかい!」

「うるせぇ、ベルが起きちまうだろうが」

「はー…。丸くなった物やなぁ」

「だまってろ…」

「んみゅ……ゅぅぅ…」

ベルが体を起こす。

「チッ…起きちまったじゃねぇか…」

「あ……すいませんベートさん…」

「構わねぇよ」

ベートがロキを睨む。

「まぁ、ええわ…もうちっと付き合え」

メインストリートに出た三人。

向かった先は、パンテオン…ギルド本部だ。

「二人はここでまっとってや。一時間。一時間経っても戻って来ぃひんかったら、ウチになんかあった思うて行動せぇ」

ロキが、二人を置いてギルド本部へ向かう。

「追います」

「おう」

ベルが建物の陰に走り、ザートとエザンディスを構える。

「ミラーシェム」

ベルの体が光に包まれ、一瞬で掻き消えた。













side in

「やぁ、ミィシャちゃん」

「あ、ロキ様ぁ」

ロキはギルドに入ると、書類を運んでいたミィシャさんに声をかけた。

ミィシャさんはちょっと警戒心無さすぎかもしれない。

「何かご用ですか?」

「そうやなぁ…」

フッと、ロキの雰囲気が変わった。

「ウラノスおる?」

世界と、二人が隔絶された。

「う、ウラノス様ですか? えっと、その…」

助けを求めるミィシャさんの手を握ったロキが耳元で囁く。

ミィシャさんの良心に漬け込んだセリフ。

味方だと、とても頼もしい神だ。

そのあとは、下界の子供が神に嘘をつけないことを利用して、イエス/ノーの質問をした。

曰く、ウラノスはいつもんとこ? と。

ミィシャさんから引き出せるだけの情報を引き出したロキはギルドの奥へと歩いていく。

途中、太ったエルフが出てきた。

醜い。醜悪を煮詰めたような姿だ。

そんなギルド長を、ロキは可愛い物を見るようにして遊んでいた。

聡明なエルフが堕落するのが面白いのだろう。

いや違うか…。面白い、って訳じゃないな。

だからこそ子供達が愛しい、とでも言いたげな顔だ。

『構わん。通せ』

荘厳な、威厳のある声。

神意の込められた声。

老人のような声だが、今まで聞いたどんな声よりも力強い。

ギルド長を制し、声の主はロキを招き入れた。

万神殿。その玉座。いや、祭壇と言った方がいいかもしれないそこには、一人の老神が座っていた。

2メドルはあるだろう。

たくましい体に相反するような白い髪と髭。

オラリオの支配者、天空神ウラノス。

そして、もう一人。

気配だけ感じる。

まるで死者のように存在感の無いもう一人の誰かが見ている。

その気配を探っている合間に、ロキとウラノスの問答は終わった。

ロキが部屋を出る寸前。ウラノスの玉座の側に、黒いフードの誰かが立っているのが見えた気がした。

side out













ロキはベートを拾うと裏路地に入った。

「もう出て来てもええで」

ロキの影から、ベルが出てくる。

その手には、エザンディスが握られていた。

「バレてた?」

「気配がしとったからな」

「そっか…。ねぇ、ウラノスの側」

「気にするな。あのジジィの事や。探っても無駄やろ」

そしてすぐにロキは唇をつり上げた。












「で、ミィシャちゃんのパンツの色は何色やった?」 
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