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許されない罪、救われる心

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184部分:エピローグその五


エピローグその五

「何か予定あるの?」
「ええと、今はね」
「ええ。あるのかしら」
「ないのよ」
 こう話す如月だった。少し苦笑いになってだ。
「彼氏とデートとかそういうことはね」
「そう。だったらね」
「何処か行くの?これから」
「カラオケでもどうかしら」
 こう提案してきたのだった。
「カラオケね。どうかしら」
「カラオケなの」
「そう、スタープラチナね」
 今度は店の名前を出してきたのだった。
「そこね。それでどうかしら」
「そうね。あそこならね」
「お酒も飲み放題だし食べ物も美味しいし」
「カラオケの種類も色々揃ってるしね」
 あらゆる意味でいい店だというのである。
「いいわね。あそこならね」
「そうでしょ。だからね」
 にこりとした笑みになった如月にだ。彼女と同じ笑みで告げる弥生だった。
「行きましょう、今からね」
「ええ。ただ」
「ただ?」
「他の皆も呼ばない?」
 如月はこう弥生に提案した。
「他の皆もね」
「長月達もなのね」
「メールで連絡して。都合ついてたらね」
「そうね。それがいいわね」
 弥生もそのにこりとした笑顔で如月の言葉に頷いた。
「皆でね」
「そうよね、皆でね」
「それでだけれど」
 如月はこんなことも言った。
「あのね」
「あのって?」
「帰りにケーキ買おうと思ってるの」
「ケーキをなの」
「そう、それね」
 こう弥生に話すのだった。
「それでそれをお母さんにねって思ってるけれど」
「いいことね、それは」
 弥生は如月のその考えをよしとして返した。
「おばさん達も喜んでくれるわ」
「そうよね、やっぱり」
「そういえばおばさん達も元気?」
「ええ、元気よ」
 その通りだと答える如月だった。純真な笑顔でだ。
「とてもね」
「睦月も今は」
「元気に学校行ってるわ」
「確か今大阪の学校よね」
「そうよ。家から通ってるのよ」
「何か最近如月の家に行ってないけれど」
 ふとだ。このことに気付いたのだった。話している最中にだ。
「また時間があればね」
「何時でも来て。お父さんも元気だし」
「皆仲良くやってるのね」
「ええ」
 穏やかだが。少しだけ寂しさが入った笑みだった。
「皆ね。元気にやってるわ」
「そっちも完全に元に戻ってよかったわね」
「うん。弥生がいてくれたから」
「私は何もしてないわ」
 彼女はだというのだ。何もだというのである。
「如月達がね。頑張ってくれたから」
「それでなのね」
「そうよ。それでケーキはね」
「ええ。ケーキは」
「何がいいかしらね」
 笑顔でだ。話すのだった。
「それで」
「そうね。チョコレートね」
「チョコレート?」
「そう、チョコレートケーキはどう?」
 こう如月に提案した。
「それね。どう?」
「チョコレートケーキね」
「おばさんも睦月君も好きよね」
「ええ。お父さんも」
「だからね。どうかしら」
 また如月に話す。
「それで」
「わかったわ。それじゃあね」
「それにするのね」
「ええ。デコレーションで買ってね」
 それにすると答えてだ。そうしてだ。
 二人は席を立った。そして笑顔で店を出る。
 外は晴れ渡っていた。雲一つない。その青空の下で長月達と待ち合わせる。そこに来た彼女達も笑顔だった。今は悩みも苦しみもなかった。忘れたわけではない。だがそれはもう過去のものになっていたのだ。


エピローグ   完

許されない罪、救われる心   完


                  2010・10・28
 
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