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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第59話:久しぶりの人装

デーモンを撃破して心身共に疲れ果てた子供達。

しかし、暗黒の種を植え付けられた子供達の様子と、黒幕の及川とマミアルコンビを捜さねばならないと今までの情報を纏めていたのだが。

「よし、こっから先は俺達に任せてお前らは休め」

「更なる情報収集と及川捜索は私達に任せなさい」

「ゆっくり体と心を休ませればいいよ」

【へ?】

ブイモンとテイルモン、ワームモンの言葉になっちゃん以外のメンバーが疑問符を浮かべた。

「俺はテイルモンとワームモンと話し合って決めたんだ。大輔達は度重なる戦いで心労が溜まってる。だから情報収集と及川捜索は俺達に任せてお前らは買い物するなりぐっすり寝るなりリフレッシュして来い!!」

「で、でも、ブイモン達だけで情報収集や人捜しは無茶なんじゃ…」

「「「ふふん♪心配ご無用!!こんなこともあろうかと、ちゃんと用意してある(わ・の)!!」」」

「用意したの私なんだけどね~」

なっちゃんは溜め息を吐きながら槍を構えて詠唱し、ブイモンとテイルモン、ワームモンの足元に魔法陣を展開する。

「むむむむ…とりゃあああ!!」

気合いを入れ、一気に力を解放してブイモン達を懐かしの人間姿に。

「「「じゃあん!!どう(だ)?驚いた(でしょ・か)?」」」

そう、未来の並行世界でなったブイモン達の人間姿なのである。

「「「ああ、その姿は!?」」」

【おおおおお!?】

「凄ーい!!」

「ブイモン達が人間になっただぎゃあ!!」

「これはまた…」

「て言うかこれって大輔達?」

「そう、私達は大輔、ヒカリ、賢の小さい頃の姿をモデルにしてるのよ。あんた達も…まあ、出来るだけしてあげてもらうわ」

テイルモンがホークモンを見て一瞬だけ微妙な表情を浮かべたが、なっちゃんを見遣って合図を送る。

「それじゃあ、アルマジモン、パタモン、ホークモンを変身させま~す」

「だぎゃあ!!」

「タケルだあ!!懐かしい~!!」

アルマジモンは幼稚園時代の伊織、パタモンは3年前のタケルの姿となり…。

「ちょーっと待って下さいなっちゃん!!異議あり!!何で私だけニワトリなんですか!!?コケコッコーーーーー!!!!!?」

何故かホークモンだけはニワトリ姿だった。

「あはははははは!!似合ってる!似合ってるわよホークモン!!」

「似合いすぎて腹が…腹が…息が出来な…死ぬ…!!」

腹を抱えて爆笑するテイルモン。

笑いすぎて窒息死しかけているブイモンとなっちゃん。

アルマジモンとパタモンも指差して爆笑。

顔を背けて体を小刻みにプルプルと震わせているブラックアグモン。

「異議あり!!」

「待った!!ホークモン、に、似合ってるわよ…っ!!」

「京さん、いっそのこと笑ってくれた方がマシです。」

顔を真っ赤にして必死に笑いを堪えている京。

それならいっそのこと大声で爆笑してもらった方がマシである。

「まあまあ、落ち着けよホークモン。ぶっちゃけ京の顔でお前の声は合わなすぎる。」

「うぐっ…」

「それでブラックは…」

「俺もか?」

「当然!!一番格好良くしてあげる!!この中で一番男前な人をモデルに…」

それを聞いた太一達は身嗜みを整え始めた。

因みに先代組も集まっており、誰が指名されるのかと唾を飲み込みながら…。

「モデルは当然、大輔!!」

「え?俺?」

「だああああああ!!?」

なっちゃんはブラックアグモンの人間の姿を大輔に指名し、それを聞いた太一はずっこけ、他の先代男性陣は落胆。

「髪の色は究極体と同じ色で~」

「あ、なっちゃん。身長はお兄ちゃん達くらいの方が良いんじゃないかな?」

「それ良い考え!!後、服は…」

「別に適当で構わ…」

「「駄目っ!!!!!」」

「!?」

適当で構わないと言おうとしたブラックアグモンの言葉を遮って声を張り上げるなっちゃんとヒカリにブラックアグモンは目を見開く。

「成長(仮)した大輔君の姿を借りるんだから、もっともっと格好良くお洒落しなきゃ!!」

「そうだよ!!大輔の姿で適当な格好なんて絶対絶対許さないんだから!!」

「う、うむ…わ、分かった…分かったから落ち着いてくれ……」

ヒカリとなっちゃんの同時攻撃とあまりの迫力に冷や汗を流しながらタジタジのブラックアグモン。

「ブラックアグモンが押されてます…」

「凄いなあ…」

伊織とタケルは何処からか持ってきたファッション誌を読み漁っているヒカリとなっちゃんに引き攣った表情を浮かべていた。

「あ、ヒカリ!!このジャケットなんかどうかな!?」

「うーん、格好いいけど少し派手かな?この黒いコートとか…ブラックアグモン、大輔君と同じで黒とか似合いそうだし。」

「いいねそれ、でも…こっちの…」

盛り上がるヒカリとなっちゃん。

そして居心地悪そうに2人の間に座らされているブラックアグモン。

悔しさの余りに歯軋りする太一。

太一の隣で深い溜め息を吐くヤマト。

「まあ、ヒカリちゃんとなっちゃんからすれば大輔が一番男前に見えるのは仕方ないか、恋は盲目と言うし…。なあ、タケル。お前なら分かるだろ?」

自信たっぷりにタケルの肩に手を置くヤマトだが…。

「え?僕はブラックアグモンが人間の姿になるならお兄ちゃん達よりも大輔君がモデルなのが一番だと思うよ?」

「っ!!!!?」

弟からの思ってもみなかった凄まじい破壊力を秘めた言葉の衝撃を心に受けたヤマトは硬直する。

「だってブラックアグモンは殆ど大輔君のパートナーデジモンみたいなもんだし…」

タケルの言葉はヤマトには届かなかった。

ショックの余りに頭の中が暴走していたからだ。

「(な、なん…だと…!?タ、タケルまで俺より大輔の方が男前だって言うのか!?タケルまで大輔の虜にされちまってたって言うのか…!?)」

本人達に聞かれたら問答無用の鬼の鉄蹴と魔王の鉄拳が飛んできそうな内容が頭の中に何度も過ぎる。

その時、錯乱しているヤマトの肩に優しく手を置く太一。

「…太一……」

「分かる…分かるぜヤマト!!お前のその気持ちが!!」

「た、太一ーーーっ!!!」

感極まって太一に泣きつくヤマト。

「すまなかった!!弟妹を失うのはこんなに辛いとは思わなかった…!!」

「ああ…俺達の苦しみは俺達にしか分からねえ…!!」

「太一…!!」

「とにかく凄い気迫ですね。たかが服装のことなのに」

呆れ果てたように後ろで繰り広げられる茶番から目を逸らして未だにブラックアグモンの服装に頭を悩ませているヒカリとなっちゃんを見てぼやく光子郎。

「泉先輩?いくら泉先輩でもその発言はヒカリちゃんやなっちゃんと同じ女の子として許せませんねえ…」

「み、京君…?」

眼鏡を光らせながら凄い威圧感を放つ後輩に引く光子郎。

「女の子っていうのは…好きな人のためなら些細なことでも真剣になれる生き物なんですよ…」

「そ、そうですか…す、すみませんでした…京君…」

すぐに京にペコペコと頭を下げる光子郎。

これではどちらが先輩で後輩なのか分からない。

「よーし!!決まった!!」

「ブラックアグモン!!早く早く!!」

「う、うむ…」

2人の気迫に気圧されながらもブラックアグモンは展開された魔法陣に足を踏み入れた。

「なっちゃん!!お願いね!!」

「任せてヒカリ!!絶対に…絶対に成功させてみせるから…私とヒカリの2人で作った姿を!はあああああああっ!!!」

「(出来ればその気迫と意志の強さは戦いの方で発揮して貰いたかったのだがな……)」

そして大輔が3年分くらい成長したような姿となったブラックアグモン。

髪は黄色、目の色は金色でブラックウォーグレイモンの要素を残しつつ、ヒカリ達が頭を悩ませて決めた黒いチェスターコート、下は灰色のクルーネックスウェット、黒スキニーと言った格好となったのである。

「わあ、ブラック似合う似合う」

「そ、そうか?」

「うん」

「…………」

「あの、ヒカリちゃん。何で俺の方をジッと見てるの?まさかブラックアグモンが着てる奴を俺にも着て欲しいとか?」

「…………」

大輔の言葉に無言で頷くヒカリ。着て欲しいと彼女の目が言っている。

「いや…でも…」

「大輔君…」

上目遣いで懇願するように見つめると大輔は折れてくれた。

「全く…分かったよ。ヒカリちゃんの我が儘に付き合うよ」

口では呆れたように言いつつも、大輔のヒカリを見つめる目は優しい。

「やった♪なっちゃん、魔法で服を作って!!」

「分かった♪」

ヒカリは嬉しそうになっちゃんに服を頼み、こうして大輔はヒカリが満足するまで着せ替え人形に。

「大変だな、大輔…」

着せ替え人形にされている親友に苦笑する賢。

「大輔君、次はこの服を着て!!」

「分かったからそんなに焦らなくても…」

「ふふ…本当に良い傾向だわ」

空は苦笑しながら2人を見つめた。

ヒカリの目が輝いているのが分かる。

自分の要求を真っ直ぐに伝えるのは以前のヒカリはしなかった…いや、出来なかった。

「きっかけがあれば変わるのね…あんた達にもきっかけが来ればいいんだけどね」

絶望し、大泣きしている恋人と幼なじみに苦笑しながら空が言う。 
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