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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第52話:誕生日プレゼント

12月16日になるまで後残り1週間になり、ヒカリは自宅で頭を悩ませていた。

「ゔーん…」

「どうしたのヒカリ?そんなに悩んじゃって?」

娘の悩んでいる姿に裕子が尋ねてきた。

「お母さん、私の誕生日そろそろじゃない?」

「ええ、そうね」

「大輔君が誕生日プレゼントは何がいいのかって…」

「あらあ!!良かったわねヒカリ!!」

大輔がヒカリに誕生日プレゼントを贈ってくれることを聞いた裕子は大輔への好感度をアップさせた。

「もしかして、誕生日プレゼントを大輔君に何を頼めば良いのか悩んでるの?」

「…うん……」

「幸せな悩みね~。」

「からかわないでよお母さん!!私、本気で悩んでるんだから!!」

「ふふふ…ごめんなさいね…」

娘の悩みがあまりにも微笑ましい内容のために裕子は笑みを浮かべた。

ヒカリはこのままでいても思いつかないと思って気分転換に外に出た。

「はあ……」

ヒカリは溜め息を吐きながら何か無いかと頭を悩ませる。

「(正直…大輔君が傍にいてくれるだけで充分だし、欲しい物なんて簡単には見つからないよ……)」

ヒカリは欲しい物が見つからず、大輔をがっかりさせてしまうんじゃないかと思い、再び溜め息を吐いた。

「「……はあ…………え?」」

溜め息を吐いたのは自分だけではなかった。

驚いて顔を上げるとそこには…。

「空さん?」

「ヒカリちゃん…」

武之内空がいた。

ヒカリは思わぬ出会いに目を見開き、空もまたヒカリを見て目を見開いていた。

「それで?ヒカリちゃんは何を悩んでいたの?」

誰もいない公園のベンチに座って空がヒカリに尋ねた。

「実は大輔君が私の誕生日プレゼントは何がいいかって…」

「へえ…で?ヒカリちゃんは何が欲しいのかで悩んでるの?」

「はい…色々悩んでるんですけど欲しい物なんて全然見つからないし、私はただ大輔君やみんなが居れば充分で…でも無いなんて言ったら大輔君をがっかりさせちゃうかも…って、何笑ってるんですか空さん!!?」

肩を震わせ、口元を押さえて笑いを堪えている空を見てヒカリは顔を真っ赤にして怒る。

「ふっ…ふふふ…ご、ごめんねヒカリちゃん…でも前は大輔がヒカリちゃんに執着してたのに、今ではヒカリちゃんが大輔に執着してるのを見てるとつい…ね…」

「むう…」

ムスッとしながら空を睨みつけるヒカリを見て空は笑みを浮かべた。

「(本当にヒカリちゃんは変わったわ。大輔ばかり変わった変わった言われてたけど…)」

大輔だけでなくヒカリも良い意味で変わった。

確かにヒカリはいい子ではあるのだが、自分の要求はあまり言わず、我慢ばかりするところがあってどこか危ういところがあったのに今では大輔に自分の要求を言うことがあるらしく、これはかなりいい傾向だと空は思う。

「(きっかけがあれば人は変わる…異世界の冒険でヒカリちゃんも大輔も成長したんだわ)」

小さい頃から見てきた後輩達が成長していくのは素直に嬉しいと感じる。

「あれ?ヒカリちゃんと空さん?」

「え?大輔君?」

「散歩してたらヒカリちゃんと空さんの姿が見えたからさ。珍しいね」

「え?あ、うん…あ、あの…大輔君。」

「ん?」

言いにくそうにするヒカリだが、意を決して正直に言うことにした。

「ごめんなさい、欲しい物…まだ見つからないの…」

「そっか…いや、何か俺の方も悩ませちゃったみたいでごめん。」

苦笑しながら謝る大輔にヒカリは慌てて首を横に振る。

「ヒカリちゃんは、欲しい物が大した物じゃないとか、何も無いとかじゃ大輔ががっかりするんじゃないかって思ってるのよ」

「え?」

「ちょ、空さん!?」

「そんなことないって、ヒカリちゃんが欲しいって言ってくれたならどんな物だって出来るだけ用意するし、無いって言われたら俺がヒカリちゃんが好きそうなの探して贈るからさ。なあ、ヒカリちゃん。欲しい物が見つからないなら正直に言ってくれ。」

「うーん…」

何か、何かないだろうか?

誕生日プレゼントになりそうな物は…ヒカリの悩みに悩んだ結果…。

「ケーキ…」

「ん?」

「大輔君が作ったケーキ…がいいかなって…」

「何のケーキがいいんだヒカリちゃん?」

「苺が沢山載ったショートケーキがいい…出来れば」

大輔の耳元で囁くヒカリに大輔は目を見開いて…。

「食べ切れるの?」

「好きだから大丈夫!!それに私だけスイーツゾーンで大輔君達が食べた…えっと…スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカ…何だっけ?」

「スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキな。あれは物凄い苦行だったぜ…?」

確かに美味しかったが、食べても全く減らないケーキに大輔達は戦い以上の苦しみを味わった。

「でもケーキでお腹一杯になるって言うのは憧れない?」

「まあ…うん…」

「だからお願い大輔君!!」

ヒカリに上目遣いで頼まれて断れると思っているのだろうか?

大輔は即座に頷いた。

「いいよ、ヒカリちゃんがそれでいいなら。」

「ありがとう!!大輔君の誕生日には私が焼いてあげるから!!」

「甘さ控えめのチョコレートケーキで」

「了解♪」

最近甘いのが苦手になりつつあるため、ヒカリにもし焼くなら甘さ控えめの物を依頼する。

隣で聞いていた空は温かい紅茶を飲みながら和んでいた。

「(いいわあ…若いわねえ…)」

年寄り臭いことを呟きながら紅茶をもう一口。

「ところで空さんは何でヒカリちゃんと?」

「そう言えば空さん思いっきり溜め息吐いてましたよね?」

「「何か悩み事ですか?」」

「え!?あ、あの…」

自分に矛先が向いたことに空は慌てる。

「「悩み事ですか?」」

「そ…その…」

「「話して下さい」」

「…はい」

気圧された空は大人しく事情を話すのであった。

「「クリスマスにヤマトさんにプレゼント?そして告白?」」

「そ、そうなのよ…でもどういうのがいいのか分からなくて」

照れながら説明する空だが、大輔とヒカリは空に気付かれないように小声で会話する。

「(ヒカリちゃん、空さんがヤマトさんのこと好きなの知ってたか?)」

「(ううん、知らないよ?どうしよう大輔君?)」

「(いやいや、どうしようも何も…人の恋路を邪魔したらサジタリモンやペガスモンに蹴られちまうから、ここは空さんとヤマトさんを生暖かく見守りながら応援しよう)」

「(うん、分かった)」

会話を終了させ、空の話に再び集中する2人。

「それでプレゼントに悩んで取り敢えず気分転換に散歩していたらヒカリちゃんに会ったのよ…」

「「そうなんですか」」

「ふう…ヤマト君にプレゼントしようにも何がいいか…」

「ヤマトさんは手作りの物がいいんじゃないですか?ほら、基本的にヤマトさんは…自分で作るから…人が自分のために作ってくれた物…喜ぶと思いますよ?」

「手作り…」

「今の時期だとマフラーか手袋…後は…」

「手作りのお菓子かな?」

「マフラー…手袋…お菓子ね…」

「ヒカリちゃん、ヤマトさんはバンドのボーカルなんだよな?なのにあの人マフラーしないし、ヤマトさんにはマフラーがいいんじゃないか?」

「でもクリスマスだし、お菓子も良いよね?」

「…………よし、決めたわ」

「「空さん?」」

急に立ち上がった空を見遣る大輔とヒカリ。空の瞳には凄まじい闘志が燃え盛っていた。

その凄まじい気迫に気圧される2人。

「(凄え気迫だ…!!)」

「(空さん、ヤマトさんに真正面から挑むつもりなのね…!!)」

その時、バンドの練習をしていたヤマトは謎の悪寒に襲われたと言う。

「ありがとう大輔君、ヒカリちゃん。答え…出たわ…」

「あ、はい…」

「良かったですね…」

そしてそのままこの場を去っていく空。

「空さん…あんたどこの戦場に行くつもりですか…?」

大輔の呟きにヒカリは何も言えなかった。

そしてヒカリの誕生日当日となり、大輔はヒカリのリクエストの品を持って八神家に。

「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい、大輔君。本当に作ってくれたんだね」
「ヒカリちゃんの我が儘は叶えたいからな」

リビングに箱を持って行き、テーブルを箱を開けると1ホールのショートケーキ。

どこかの店で売られていても遜色ないくらいの出来で上に均等に置かれた沢山の苺にヒカリは目を輝かせた。

「わああ…!!」

「これ大輔が作ったのか?」

素晴らしい出来栄えのケーキに太一は感心したように呟いた。

「はい、まあ、何回か失敗しましたけどね」

言うまでもないかもしれないが、失敗作は全部ブイモンのお腹の中である。

「なあ、大輔。お前パティシエ目指してんのか?」

「いえ、ラーメン屋です」

「勿体ねえよお前!!いっそのことラーメン屋とケーキ屋を兼業しちまえ!!」

「考えときます」

「本当に貰っちゃっていいの!?」

目を輝かせて言うヒカリに大輔も笑みを浮かべて言う。

「勿論、ヒカリちゃんのために焼いたんだからさ……本当に食べられるの?」

「好きだから平気!!」

「ヒカリだけ1ホール…ずりぃ……」

「あ、太一さん達の分もあります。ブイモンが殆ど食っちまったけど何とか人数分」

大輔は小さい箱を開けると、3人分の長方形のショートケーキが入っていた。

「あら~、私達の分まで。ありがとう大輔君。」

「いえ…余り物押し付けるみたいで悪いかなって思ったんですけど…」

「そんなことないわ、ヒカリのために本当にありがとう大輔君。ヒカリがあんなに嬉しそうなの初めて見るもの」

余程嬉しかったのか、ヒカリの表情は今までにないくらいの笑顔である。

「じゃあ、俺はこの辺で」

「え?帰っちゃうの?」

「だって俺、邪魔じゃ…」

「邪魔じゃないよ!!そうだよねお母さん?」

「そうね、大輔君。一緒にヒカリの誕生日を祝いましょう?」

「………ありがとうございます。」

女性陣の勢いに押された大輔は苦笑しながらヒカリの誕生日を祝うのであった。 
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