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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第46話:聖騎士VS竜戦士

アルケニモンとマミーモンは目の前の出来事に冷や汗を流していた。

ブラックウォーグレイモンを連れ戻すために貴重なダークタワーを200本も使って作り出した完全体のダークタワーデジモンの20体のマンモンが手も足も出ずに一方的にブラックウォーグレイモンに蹂躙されていく。

「弱い…!!弱すぎる!!もっと…もっと強い敵を出せえええええ!!!!」

前回の戦いでパイルドラモンから受けた傷は完璧に修復されていた。

ブイモンの予想通り、ブラックウォーグレイモンは傷を癒した後は、より強い敵を求めてデジタルワールドを放浪していたのだが、アルケニモンとマミーモン、そして20体のマンモンと対面して戦いに入ったのだ。

「ウオオオオオ!!」

しかしブラックウォーグレイモンが動けば相手の姿は弾ける。

ただそれを繰り返すだけで数は減っていく。

相手の数がいくら多くても、これでは全く意味は無かった。

「ぬうんっ!!」

突進してくるマンモンをブラックウォーグレイモンが爪で引き裂いて粉砕する。

生まれてすぐ戦ったのが歴戦のデジモンだったために、ただ突進を繰り返すだけの単純な動きは洗練された動きをするパイルドラモンと比べて少し戦えば攻撃は簡単に避ける事が出来た。

「(何故だ…!!戦いは俺が有利だ…それなのに何故あの時感じた感覚が来ない!?)」

あのパイルドラモンに勝った時に感じた心地のいい感覚が全く来ない。

寧ろ弱いもの苛めをしているような錯覚すら覚えた。

「俺は…!!」

こんな戦闘にもならないものをさせたことに対する苛立ちを込めた視線をアルケニモンとマミーモンに向ける。

究極体の殺気混じりの視線に完全体のアルケニモンとマミーモンは冷や汗を更に流す。

「もっと…強い相手と戦いたいんだあああああっ!!!」

両腕を天に掲げてパイルドラモンとの戦いの時よりも数段上のエネルギーを込めた必殺技をアルケニモンとマミーモンに向けて投擲した。

「「うわああああああ!!?」」

ブラックウォーグレイモンの投擲したエネルギー弾がアルケニモンとマミーモンを吹き飛ばした。

2人は放物線を描いてすっ飛んでいく。

「凄え一撃だな。初めて戦った時より強くなってる。だからこそ仲間にしたくなる!!」

「お前達は…」

現れたのは初めて戦ったデジモン達。

そして自分に不思議な感覚を与えてくれた敵。

「俺達はお前と話をするために来たんだよ。」

大輔の言葉にブラックウォーグレイモンは疑問符を浮かべながらも口を開いた。

「話?俺と戦う為か?」

かなり考えが安直だが、戦う為に生まれた者には当然の考えだろう。

それを聞いた大輔は苦笑しながら口を開いた。

「まずは話をしてからだ。戦うのはそれからだ。回りくどいのは好きじゃねえ。ブラックウォーグレイモン、俺達の仲間になってくれないか?」

「仲間?」

まさかのスカウトにブラックウォーグレイモンは目を見開く。

「俺達は選ばれし子供って存在で、アルケニモンやマミーモンみたいな連中と戦ってんだ。あいつらはまだ弱いけど、デジタルワールドにはまだまだ沢山の強い敵がいるかもしれない。だから、お前みたいに強い仲間が欲しいんだ。悪くない話じゃないだろ?俺達と一緒にいればデジタルワールドの覇権を狙う強いデジモンとも戦えるチャンスが来るぜ?」

強い相手と戦いたいと言うブラックウォーグレイモンにとってこれはかなり魅力的な条件のはずだ。

ブラックウォーグレイモンは少し考えると、口を開いた。

「成る程…悪くはない…」

「だろ?」

「だが!!」

ブラックウォーグレイモンは力を解放して構えた。

圧倒的な暗黒の波動…しかしその中にどこまでも純粋な闘志を燃やしながら。

「……………」

「俺は自分より弱い奴の言う事は聞かない!俺を従えたければ俺以上の力を示すんだな!!」

「へっ、やっぱりな。こうなると思ったぜ。じゃあ俺達も前以上の本気で行かせてもらうかな?」

取り出すのは奇跡のデジメンタル。

余程の相手でない限り使わないそれを使うと言うことは最初から本気で行くつもりなのだ。

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

マグナモンに進化させ、ブラックウォーグレイモンと相対させる。

「さあ、ブラックウォーグレイモン。やろうぜ?はっきり言って言葉で説得するよりも力で語り合った方が俺達からすれば手っ取り早いしな」

「それが貴様の本気か?」

「まだまだ力は残してるけどそれはお楽しみだ。俺の本気を見たかったら力ずくで出させてみな!!」

「いいだろう……!!必ず貴様の全力を引き出させ、また俺が勝つ!!」

「やってみな!!」

ブラックウォーグレイモンの拳を拳で受けたマグナモンは思わず笑みを浮かべた。

「(やっぱりな、こいつは成長してるんだ。このまま持久戦でチマチマとやり合う内に成長されたら奥の手を使うことになる。ここは…)」

ダメージすら成長の糧にしているんじゃないかと錯覚するほどブラックウォーグレイモンの成長率は凄まじい。

ブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン故に、スタミナもほぼ無尽蔵だ。

スタミナ切れもエネルギー切れもないのなら持久戦においては今までの敵より厄介だろう。

「ぬっ!?」

「最初から全力で行くぞ!!」

一気に力を全開にし、ブラックウォーグレイモンの爪を弾いて顔面を殴りつける。

吹き飛ばされるブラックウォーグレイモンを追い掛け、反撃の隙を与えずに殴り続ける。

「ぬっ!ぐううっ!!」

全身を襲う拳の弾幕にブラックウォーグレイモンは何とか耐えきり、マグナモンの両拳を受け流しながら、腹部に体当たりを叩き込む。

「ぐあっ!?」

腹部を襲う衝撃にマグナモンは表情を歪め、吹き飛ばされるが即座に体勢を立て直して爪を構えて突撃するブラックウォーグレイモンを迎撃する。

「マグナムパンチ!!」

「ドラモンキラー!!」

拳と爪がぶつかり合い、凄まじい衝撃波を周囲に撒き散らす。

「(やはり強い、先程の奴らとはまるで違う!!)」

楽しい。

やはり楽しい。

強い存在との戦いは堪らなく楽しい。

しかもこれよりもまだ強い力を隠しているのだというのだから驚きだ。

「(見たい…これよりも強い力とやらを…そしてその力を持った奴と戦いたい!!)絶対に貴様の本気を引き出してやる…!!」

「やってみな…!!言っとくけどちょっとやそっとで見れると思わないことだな!!(いいかみんな、デジクロスは仲間との絆が力になる。あいつをぶちのめす。今はただそれだけを考えろ!!)」

【了解(だぎゃ)!!】

そしてマグナモンのパワーも上がり、ブラックウォーグレイモンとの戦いも更に熾烈になっていく。

このままでは埒が明かないとブラックウォーグレイモンは一旦距離を取って両腕を前に翳してエネルギー弾を生み出す。

「受けてやるぜ…」

同様に両腕を前に翳して真っ向から受けて立とうとするマグナモン。

掌に莫大なエネルギーが溜まっていく。

「ガイアフォース!!」

「プラズマシュート!!」

同時に放たれたプラズマ弾とエネルギー弾が激突する。

威力はほぼ互角…いや。

「お前の全力ってのは…これっぽっちかーーー!!!」

「っ!!」

更にプラズマ弾の威力を上げると、プラズマ弾はエネルギー弾をぶち破ってブラックウォーグレイモンを飲み込んだ。

そしてブラックウォーグレイモンのドラモンキラーとブラックシールドの破壊に成功する。

竜の因子を持つマグナモンにとって最も脅威であるドラモンキラーを破壊しなければ危険なのだ。

しかも防御手段である盾まで破壊出来たのは幸いだ。

「ぐっ…」

「どりゃああああ!!」

体勢を立て直す暇など与えずに殴り飛ばす。

ブラックウォーグレイモンが失った武器は彼の強さを大きく支える物でもあるため、かなりの戦力ダウンだ。

「舐めるなあ!!」

しかしブラックウォーグレイモンも簡単にはやられてはくれない。

戦いの最中に成長し、嵐のようなマグナモンの攻撃を受け続けたことでようやく見切れるようになったのだ。

「はあっ!!」

マグナモンの蹴りを受け流して小型のエネルギー弾を放つ。

「ぐおっ!?」

今まで大型のエネルギー弾しか放ってこなかったので、てっきり大型しか放てないと思っていたが違うようだ。

「(小型に圧縮することで攻撃範囲が狭くなる代わりに破壊力とスピードが増してる。)」

しかしブラックウォーグレイモンの技はこれだけではない。

ワクチン種のウォーグレイモンにはない多彩な技がブラックウォーグレイモンの特徴だ。

「ウォーブラスター!!!」

連続で放たれるエネルギー弾をマグナモンはそれを身軽な動きで回避、弾いていく。

「随分色んな技を持っているな…!!」

これほど多彩な技を持つ究極体など一体どれくらいいるだろうか?

「ガイアフォース!!」

ウォーブラスターのエネルギー弾に気を取られているマグナモンに極限まで圧縮・小型化したガイアフォースのエネルギー弾を投擲する。

咄嗟に防御してダメージを最小限にするが、ブラックウォーグレイモンの戦い方に溜め息を吐いた。

「ふう…正直羨ましいくらいの成長速度だ。敵からすれば俺達もそう見えたのか?」

勝利と敗北を繰り返しながらも実力を上げていった自分達も敵からすればあれと同じだったのだろうか?

今では確認のしようもないけれど。

最早自身とブラックウォーグレイモンとの力の差はあまりない。

このままでは前回の二の舞だ。

だから切ることにする現時点の切り札を。

「ブラックウォーグレイモン、お前はやっぱり凄えや。マグナモンのパワーにも怯まねえで真っ向からぶつかってきた。益々仲間になって欲しくなった。見せてやるぜブラックウォーグレイモン。これが今の俺達の最高の力だ!ジュエルビーモン!ネフェルティモン!ペガスモン!アクィラモン!アンキロモン!エヴォリューションクロス!」

「マグナモンVM(ウィンクルムモード)!!」

純白の肉体と白銀の鎧を身に纏うマグナモンVM。

先程と比べて圧倒的な力を目にしてブラックウォーグレイモンの体は震えていた。

それは恐怖ではなく歓喜。

「(これが奴の本気…!!これほどの力が…!!)ようやく本気を見せたか…見せてもらうぞ!!貴様の真の力を!!」

一気に距離を詰め、マグナモンVMに向けて渾身の右ストレートを繰り出す。

「…遅い」

左手を顔面の前に翳してブラックウォーグレイモンの拳を受け止めた。

それも簡単に。

「何!?」

「今から言っとくぞブラックウォーグレイモン。いくらお前が成長しても今のお前は勝てない。それは何でか分かるか?」

「ぐはあっ!?」

何時の間にかブラックウォーグレイモンの腹部にマグナモンVMの膝がめり込んでいた。

油断など一切していなかったのに何故自分は攻撃を喰らっている?

「今の俺のいる場所はお前のいる所の遥か上だ。一朝一夕で追い付ける実力差じゃない」

単純にブラックウォーグレイモンの反応速度を上回る速度で膝蹴りを叩き込んだ。

ただそれだけ。

「行くぞおっ!!!」

再び繰り出される拳と蹴りの連撃。

ブラックウォーグレイモンは何とか耐えきろうと防御に全パワーを回してもまるで意味を為さない。

ブラックウォーグレイモンの防御力を遥かに上回る力で攻め続けるマグナモンVM。

「ぐ…おおおお!!ガイア…フォース!!!」

辛うじて耐えきって渾身のエネルギー弾を放つものの、マグナモンはそれを殴りつけて粉砕してしまった。

「なっ!?」

「終わりにしようぜブラックウォーグレイモン…ミラクルグリッターーーーッ!!!!」

マグナモンVMのアーマーから放たれた灼熱の光はブラックウォーグレイモンに向かって伸びていく。

ブラックウォーグレイモンは避けようとするが、あまりのダメージにふらついた。

「しま…ぐああああああ!!?」

ブラックウォーグレイモンに光が直撃し、ブラックウォーグレイモンの絶叫が響き渡る。

「ふう…」

煙が晴れると、マグナモンVMは深い息を吐きながら倒れているブラックウォーグレイモンに向かって歩き出す。

「ぐっ…」

「おっと無理するな。俺の必殺技をモロに喰らったんだ。」

起き上がろうとするブラックウォーグレイモンだが、マグナモンがそれを制した。

「………俺の……負けだ…」

少しの間を置いてブラックウォーグレイモンが敗北を認めた。

「じゃあ、俺達に力を貸してくれるか?」

「…俺は負けた…お前達に従おう…」

「従うとかじゃなくて、仲間だよ。それにしてもお前は凄いよ。正直普通のマグナモンで充分じゃないかと思ってたのにさ…」

マグナモンVMは分離し、ブイモンに退化するとブラックウォーグレイモンを見据えた。

「また勝負しようぜブラックウォーグレイモン。俺もお前ももっと強くなってさ」

「……いいだろう。だが次は負けん」

「へへ、そうこなくちゃ」

「うーん、やっぱり戦闘馬鹿だわこの2人。」

ブイモンとブラックウォーグレイモンを見てテイルモンはぼそりと呟くのであった。 
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