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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第43話:妹離れ

賢と伊織が和解の一歩を踏み出したことを喜びながら、ヒカリを八神家に送るために歩いていた。

因みにブイモンは先に家に帰っている。

「でも、おじさんと鉢合わせしないか心配だな」

「どうして?」

「いや、だって俺…この前、おじさんに滅茶苦茶睨まれてたしさ…」

この前もヒカリの家の前まで送っていったら、ヒカリの両親が出迎えたのだ。

ヒカリの母親、裕子はともかく…。

『どうも、おじさん。久しぶりです』

挨拶する自分の顔を見て、ヒカリの父親、進は明らかに、分かりやすく顔を顰めていた。

自分とヒカリがお付き合いしている仲だと知っているはずなので、多分改めて一緒にいるのを見て複雑だったのだと思う。

『君…大輔君…だよな…?しばらく会わないうちに大きくなったな…』

一応自分のことを覚えていてくれていたことには安心した。

『はい』

その時の大輔は普通に返したが、進は大輔の言葉に何も言わずに複雑そうに大輔を見つめていた。

その時の沈黙の痛々しさはまだ記憶に新しい。

「おじさんに嫌われてるな俺は…多分と言うか絶対」

「…そんなことないと思うけど」

ヒカリは苦笑いして大輔を見つめる。まあ、進の気持ちは大輔からしても分からないでもないのだ。

たった1人の可愛い娘に男が出来たことが気にならないわけがない。

いつか自分の元から娘を掻っ攫っていく輩が現れることを、父親はいつも危惧する生き物なのだと大輔は京の母親から聞いたことがある。

ジュンは…まず嫁の貰い手がいるのかが分からない。

「まず姉貴には家事の基本から叩き込まねえとな。いつか死人出すぞあれは…」

「あ…あははは…」

実際に実物を見たヒカリは苦笑いを浮かべるしかなかった。

しかもあれでまだマシなレベルだと言うのだから驚きだ。

ヒカリを八神家まで送り届けると裕子が出て来た。

「ただいまお母さん」

「お帰りヒカリ。それに大輔君も、いつもヒカリを送ってくれてありがとうね」

「いえ、俺はただ…ヒカリちゃんを危ない目に遭わせたくないから当然のことをしただけで…」

赤面しながらも言う大輔が微笑ましいのか裕子は笑みを浮かべながら見つめる……そんな3人を複雑そうに見つめる太一と進。

太一は最初は普通にしていたのだが、大輔と出掛ける際にお洒落に気合いを入れているヒカリの姿を見て改めて2人の関係を再認識した模様。

「大輔君、夕食うちでどう?」

裕子がいつもヒカリを送ってくれる礼に夕食を一緒に食べないかと勧めてくれたのだが…。

「「……………」」

裕子の後ろから自分を睨む太一と進の視線から大輔は居心地悪そうにしながら遠慮することにした。

「いえ、俺は……」

「一緒に食べようよ大輔君!!」

「「え!?」」

ヒカリの発言に太一と進はびっくり。

ヒカリはキッ…と太一と進を睨むと大輔を見遣る。

「一緒に食べようよ。いつも送ってくれたり、色々助けられてるからお礼がしたいの!!大丈夫、お父さんにもお兄ちゃんにもちょっかい出させないから!!」

「そうよ、いつもヒカリがお世話になってるし、せめてこれくらいはね!!」

「は、はあ…じゃあ…頂きます……」

太一と進のキツい視線をかわしながら、大輔はヒカリに連れられてヒカリの部屋に。

「はあ…」

「ごめんね大輔君。我が儘言っちゃって…でも日頃からお礼したかったし…」

「もう充分、お礼を貰ってるんだけどなあ……お菓子とかさ。それにヒカリちゃんが傍にいてブイモン達がいるだけで俺は充分…」

「お菓子なら大輔君だって作ってくるじゃない…大輔君は欲が無さ過ぎ…」

ヒカリは大輔の言葉に拗ねたように言う。

「そうかなあ、俺は充分欲張りだと思うけど」

「全然!!もっと欲張っても罰は当たらないよ絶対!!」

「うーん…」

欲張れといきなり言われてもまるで思い浮かばない大輔であった。

「大輔君、ヒカリー。ご飯よー」

「「はーい!!」」

呼ばれた2人は部屋から出てリビングに向かう。

「「………………」」

テーブルにはご馳走が並んでいた。

「さあ、大輔君!!食べて食べて!!大輔君のためにおばさん、腕によりをかけて作ったのよ!!」

「い、頂きます…」

「(お母さん、気合い入れすぎ……)」

大輔は客用の箸を手に取り、料理を口にした。

「どうかしら大輔君?お口に合うかしら?」

「え?あ、とても美味しいです。」

裕子の手料理はとても美味しい物だ。

大輔を突き刺す2つの視線が無ければもっと美味しいと感じられたかもしれない。

「お父さん、お兄ちゃん。大輔君を見てないで早く食べたら…?」

ヒカリは笑顔の下に怒りを隠しながら太一と進に言うと、ヒカリの怒りを感じ取った2人は即座に箸を手に取る。

夕食を食べ終え、大輔はヒカリと共に食器の片付けをした。

「ヒカリちゃん、おばさんの料理。凄く美味かったよ」

「うん、ごめんね。お兄ちゃんとお父さんが……」

「別にいいよ、気持ち分かるし」

ヒカリの言葉に大輔は苦笑しながら言う。

「もう……お兄ちゃんとお父さんたら…」

「なあ、ヒカリちゃん。さっきの続きだけどさ…ヒカリちゃんはもっと欲張っていいって言うけど…正直これ以上は見つからなかった。ヒカリちゃんが傍にいてくれて、家族やブイモン達がいて、タイキさん達と冒険したこととか、今の冒険もあって毎日毎日楽しいのにこれ以上ってのは見つかんないよ。正直…俺は恵まれ過ぎてんじゃないかって思う時もあるんだよ…だから…さ…」

「大輔君…」

「まあ、望むってんならこういう風に、ヒカリちゃんや太一さんやみんなといられればいいなって思うよ。ヒカリちゃんは?」

「ん…私もそう思う…かな…」

2人の間に流れる空気はとても穏やかであった…。

「じゃあ、ご馳走様でした。おばさん、おばさんの料理。凄え美味しかったです。」

「ええ、またご馳走するわね大輔君」

「おじさんと太一さんも…どうしたんですか?」

大輔が向こうを見遣ると、何故か落ち込んでいる2人の姿があった。

「気にしないで大輔君。自分の小ささに落ち込んでるだけだから」

「え?あ、ああ…じゃあ…」

疑問符を浮かべながらも大輔はそのまま背を向けて帰って行き、そして翌日の石田家…。

「何だよあれ?あんな台詞反則だろ。あんな良い台詞言われたら認めないわけにはいかないじゃんかよ~」

「なあ、太一。いきなりお前に押し掛けられて泣きつかれてる俺はどうすればいいんだ?」

「聞いてくれよヤマト!!」

「無視か」

「実はかくかくしかじかのほにゃららで…」

太一はヤマトに昨日の出来事を話す。

「へえ…あいつそんなことを…。確かにいい雰囲気でそんな台詞聞いたら認めない訳にはいかないな。お兄ちゃん」

「うるせえ!!…昔は“お兄ちゃんお兄ちゃん”言ってたのに今では“大輔君、大輔君が、大輔君は”だぜ?ああ…こうして妹は兄離れしていくのかあ…」

「俺は弟だから理解出来ない心境だな」

多分ヤマトはタケルに彼女が出来ても良かったとは思っても太一のように嘆いたりしないだろう。

「畜生…大輔とヒカリ(ついでに賢)の1年間の冒険が憎い…!!」

ギリッ…と歯軋りしながら言う太一。

まだまだ愚痴が長くなりそうだと今の内に布団を干しに行って買い物に行くかと、たった1人でブツブツ愚痴を言う太一を放置してヤマトは部屋を後にしたのであった。 
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