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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE184 墜ち続けるオズマ・・・ネトゲ廃人の末路!

そう・・・・・・結局のところ・・・・世の中には利用する側と される側…その2種類しかいないのだ・・・問題はその当たり前にいつ気が付くかだ・・・!! by立木ナレ


最初の給料日の翌日・・・・・日曜日なのでこの日は刑務作業は無く一週間ぶりに暇を持て余していた。この日ばかりは施設長の大月も休日らしく奴の顔を見ずに済むのは良いのだが―――

沼崎「はーい!ロング缶一本6000マネー!冷えてるよぉ~」

大月の側近である沼崎を始めとした一部の職員たちはご苦労な事に日曜出勤らしくそいつらがこの日も今までと同じ本来であれば夕食後の時間になると嗜好品販売を開始。

給料日からまだ一日と言うだけあり昨日ほどではないにしろ、中々の繁盛ぶりで金の管理もロクに出来ないネトゲ廃人の収容者達は次々とビール、タバコ、その他の摘み物に次々と貴重な金を浪費していた。


その日はオズマは流石に反省っ!!


ダメだ・・・・・っ!この調子で3カ月で30万マネーを溜めようとなると使える金はもうない・・・・・!そりゃ端数の1000マネー程度ならまだ使えるには使えるが・・・・・残り3カ月たったそれだけしか使えないとは・・・・・

俺「はぁ・・・・・」

そんな金銭的に困窮した状況を実感した途端に自然にため息が漏れていた―――いや、そもそも3カ月13週間で12000マネーしか使えないって言う計画に無理があったんじゃないか?

なら4カ月・・・・・そうだ、4カ月、17週間なら無理なく30万マネーに届くんじゃないか?

俺「・・・・なら、少しは良いか・・・・・?」

そして俺はフラフラと・・・・・沼崎が一人で売り手をやっている物品販売に近づいて―――

沼崎「はい、弭間君ノンアルお買い上げ~」


最初はノンアル一本のつもり・・・・・が、気が付けばまたしても豪遊・・・・っ!二日続けて豪遊・・・・っ!またやってしまったっ!オズマ二日続けての豪遊には流石に猛省・・・・っ!

が、猛省しつつもオズマ――更に翌日も使ってしまい4日目には残金は僅か300マネー!つきにきたトホホな状況!・・・・・こうなってはもはや柿ピーの一袋すらも変えぬ状況っ!給料日まであと3日間・・・・・もはやオズマに出来る贅沢は皆無っ!by立木ナレ


※ ※ ※


更に数日が経過し、二度目となる土曜日――給料日が訪れた。一週間ぶりに受け取る給料・・・・・だが、相変わらず受け取るのは24000マネー、僅か2400円だった。

俺「今度こそ・・・・・今度こそ4カ月で30マネー溜めねぇと・・・・・何時まで経ってもここで働き詰めの生活じゃねぇか・・・・・っ!」

そうだ、これからだ・・・・最初の一週間は慣れてねぇから上手くいかなかったが・・・・これからが本番、これから4カ月で30万マネー溜めるから使えるのは108000マネー・・・・それなりに余裕がある。

俺「そうだな、今日から週に一度・・・・給料日の日にだけ贅沢しても良い日って事にすりゃ良いかは?それならとりあえず今日はノンアルも摘みも・・・・・」


オズマ懲りずに豪遊・・・・っ!二度目となる給料日初日の土曜日にまたしても豪遊・・・・っ!12000マネーの散財!そして、その次の日の日曜日には更に7000マネーの散財・・・・・最初の給料からの土日の繰り返し・・・・っ! by立木ナレ


俺「良いさ・・・・別に――」

月曜日になり、再び刑務作業を強いられながら俺はぼそりと呟いていた。もともと無理だったんだ・・・・30万マネーも貯めるなんて・・・第一、あの外出券には落とし穴がある・・・・


オズマが語る一日外出券における落とし穴・・・・それは、施設側が適正アリと認めた場合に限ると言う一文であった!! by立木ナレ


この施設には収容されてから1年以上とか言う奴だって中にはザラにいる。入って間もない俺が外に出る事を上が認めるとは思えねぇ、どうせ無理だったんだ。

俺「そうさ、無理さ・・・・絵空事だったんだ・・・・・」

それに、外に出たからと言ってこの施設から完全に開放される何かを得られるとは考えられない・・・・・コツコツと溜めた30万マネーと言う金で一日外を満喫して・・・・それで終わりになるのが落ちだろう。


己の心の弱さ・・・現実から目を背け言い聞かせる弭間・・・・っ!所詮は絵空事・・・・・叶わぬ夢・・・・・このオズマの思考、己に対する言い訳は言わば、遠い夢や目標の為に努力できぬ者達・・・・怠惰なクズ共に共通する定番の逃げ口実である・・・・っ!! by立木ナレ


※ ※ ※


俺がこの施設に連れていかれてから早くも三週間目の土曜日・・・・今日の刑務作業を終えて晩飯の後はまた24000マネーの給料だ。

俺「一週間待ちに待った給料日だし・・・・取りあえずノンアル2本とチーズちくわは決定かな~」

釘打ちようの鉄砲で一台、また一台と木製パレットを作りながら、俺は早速この日の給料の使い道を考えていた。
もはや最初の給料日初日に固く決意していた3カ月で30万マネーを溜めるだとか、4カ月で30万マネーを溜めるなどと言う長ったらしくて先の長い目標は完全に諦めていた。

俺「そもそも、そんな長期的な努力や我慢が出来ないから俺等みたいな連中はこんなところにいるんだろうな――」

「もうやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺がブツブツと言い訳のような独り言を呟いていた矢先、俺と同じパレット作りに従事させられている太り気味の眼鏡の収容者の男が腹の底から絞り出したような絶叫を作業場一体に響かせていた。

俺に限らず作業場の者たち全員が一斉に叫び声があがった方に視線を向けるとその男は顔中から汗をダラダラと流し、両手で顔を鷲掴みにしながら叫んでいた。

「やだやだやだやだやだぁぁぁ!もう一ヶ月もフルダイブしてねぇぇぇ!!YouTubeも見れねぇ!エロサイトも見れねぇ!ネット通販で何も買えねぇ!こんな生活が何時まで続くんだぁぁ!!」

「お、落ち着け安藤・・・・っ!落ち着くんだ!」

仲間の一人が必死に宥めようとするがその仲間も目の焦点が妙に合っておらず、精神的に不安定な様子が伺える。

俺「あ・・・・コイツって確か――SAOサバイバーバトルで見た――」

「弭間君・・・この人運ぶから、担架に乗せるの手伝ってくれる・・・?」

俺「あ、ああ」

絶叫してる肥満眼鏡の男に見覚えを感じた俺だったが、すぐに俺の隣で刑務作業をしていた同年代と思わしき女子の収容者――確か、石井浩美(いしいひろみ)だったっけな。
浩美は無感情で無関心そうな表情を錯乱し絶叫している男に向けつつ、淡々と手慣れた様子で担架を準備していた。

そこからさき、浩美が先頭で向かう先は俺が今まで行ったことの無い――初めて訪れる場所だった。

安藤「出して出して出してぇぇぇ!!ネット!ネットォォォ!!アニメ見たい!ゲームやりたい!エロサイト見たいみたい見たいみたい見たいみたい見たいみたい見たいみたい・・・・」

俺と浩美に運ばれている最中も安藤は正気を失ったようにネットに対する執着、依存心を露にする言葉を吐き洩らし続けていた。
異様な様子の安藤の鬼気迫るかのような表情に俺が目を向けているのとは対照的に、浩美は全く目を向ける事無く、白一色の無機質な扉を開けて、

浩美「先生・・・・急患」

ボソボソと相変わらず覇気のない声で訪問を告げて部屋に入り、その中で俺が見た光景それは――

俺「んだよ・・・・こりゃ・・・っ!?」

「無理・・・もう無理だぁぁっ!!何時になったら・・・・何時になったら解放してくれるんだよォォっ!!」

「10分だけネットさせてっ!10分だけ・・・・10分だけで良いからっ!!」

「も、もう3カ月も・・・・ログインしてないなんて・・・・そ、そろそろアカウント更新の時期なのに・・・・このままじゃ苦労して育てたキャラが消されちまうじゃねぇかぁぁぁぁ!!」


そこに広がるのは・・・・地獄の中の地獄・・・・・っ!行き止まりの光景・・・・っ!ネット環境から長期間切り離され、その間に刻々と変わりゆくVRゲームの変化について行けぬと言う焦り・・・・っ!アカウント更新の時期が迫りキャラデータロストを恐れる恐怖心・・・・っ!それらにより正常な精神状態を保てなくなった者達の集まり・・・・ネトゲ廃人の末路であるっ! by立木ナレ


浩美「ねぇ、先生・・・・」

「ああ、その辺に置いといて良いよ。適当に寝床作っとくからさ・・・・その人って一ヶ月くらい前に来たばっかりの収容者だっけ?」

浩美「そうね・・・・早い人だとだいたいこれくらいが壊れる頃合い・・・・」

浩美に先生と呼ばれた医者らしき男にとっては日常茶飯事の光景なのか、そんな関心の無さそうな会話を適当にかわし、呻き声と喚き声で溢れる室内に安藤を適当な場所に置く。

そして、流れ作業の様に安藤を医者らしき男に任せた後は俺と共にさっさと医務室――だったのだろうか?取りあえず部屋を後にした。

そして、作業場に戻る道中、俺は前を淡々と歩く浩美に後ろから声を掛けた。

俺「アイツ・・・・と言うか、あの連中って大丈夫なのか?」

浩美「大丈夫って・・・何が?」

特に振り返る事も、止まる事も無く淡々とした返事を返してきた。

俺「あの医者みたいな奴、安藤や他の患者たちをちゃんと診てるようには見えなかったぜ」

浩美「うん、見てるわけ・・・・無いよ。」

俺「は・・・・?じゃあ、アイツ――」

何してやがるんだ――と聞く前に、返事は浩美が先に答えるのだった。

浩美「あの人たちはもうああなったら、刑務作業で使えないのは勿論だし――ネットゲームの依存治療も難しいから・・・・治験に回されるだけ」

俺「治験って・・・・医薬品とか医療器具のモニターのバイトみたいなあれか?」

浩美「そうよ・・・・」

それは俺も治験を正式に受けられる年齢――だいたい18歳になったら楽に稼げそうだからと言う理由で考えていた短期バイトの一つだった。

浩美「特にあの病室の中の人達は皆・・・・・精神がボロボロになった人たちだから・・・・精神安定剤や鎮静剤のモニターとしてなら使える・・・・らしいから」

俺「んだよそりゃ・・・・?」

ネットゲーム依存治療が目的であるはずの施設の裏の一面をこんなところで――しかも収容者自身の口から聞かされた俺はそれだけで背筋が軽く震える感覚に見舞われるが、更に浩美の口からは悍ましい話が続けられる。

浩美「噂では・・・・大月施設長がその手の医療関係の施設とコネがあって・・・・・従来の条件でバイトの治験を雇うよりも安い賃金であの人達をモニターとして提供するみたい」

俺「おいおい・・・・あんな状態になっても安く使いやがるのかよ・・・・・んでもってよ、ただでさえ安い治験のモニターとして使われたアイツらの手元に残る金だって・・・」

浩美「当然、施設長がピンハネするから・・・・・極僅かね」

あの野郎・・・都から委託されてるかどうだかしらねぇが、人の良さそうな笑みを見せつけておいて・・・やっぱり腹の中は真っ黒って事かよ・・・・・っ!

俺「その治験で飲まされる精神安定剤やら鎮静剤やらが効いて、元に戻って早く戻ってこりゃ良いが――」

浩美「多分・・・・戻ってこない」

俺「戻ってこないだと・・・・?」

なんだよ、まだこの話には気の滅入るような続きがあるってのかよ・・・・そんな俺の予想を裏切る事無く、浩美は口調こそ平静と淡々としているが、その口から発せられたのは―――

浩美「私は結構長くここにいるけど・・・・一度あそこに入った人は・・・・大抵は治験のモニターとして一通り使い古されたら・・・・後はお払い箱」

俺「どういう事だ?ネトゲ依存を治療するのが本来の施設だってのに、その前に精神がイカれたら治験で使った挙句にはいさよならって――本来の目的すら叶ってねぇじゃねぇか・・・・一応は収容者の親とか家族連中からの依頼なんだろ・・・・?そんな事で依頼してきた連中に対してどう説明するんだそ」

俺が更に詳しい話を問いかける頃には、既に俺達は作業場である離れの建物のすぐ傍まで辿り着いており、浩美はここで初めて足を止めて、俺の方を振り向いた。

その表情は無感情だが――僅かに他人事ではなさそうな・・・・自分の事を含めて語る様に、冷めた態度を取り繕いながら話を再開した。

浩美「ここに収容されてきた人たちは・・・・半ば親や家族から見放された人達ばかり・・・・私を含めてね・・・・」

俺「・・・・・・・」

それは少なからず心当たりは俺にもある。今も一緒に暮らしている爺さんや親父とは――まあ、奴らが真っ当な親じゃないおかげもあり、特に険悪でもない間柄なのだが・・・・姉と母親に関しては元々俺が親父や爺さんに似たような価値観に育ったことに加えて・・・離婚の際に迷うことなく親父側に付いた事で家族としての僅かな情もすっかりと冷めたんだろうな。

浩美「親たちは私達の事を・・・・厄介払い同然にここに預ける奴らばかり・・・・だから、精々仮にここでネトゲ廃人から脱却すれば儲けもの・・・・そんな程度に考えてる・・・・きっと私達の処遇に関しても・・・ああなる可能性も事前に了承済みだと思う・・・・・」

俺「ここでネトゲ依存を克服出来りゃラッキーだな、ってくらいの考えかよ・・・・んで、ダメだったらそこまでか・・・・」


そう・・・・収容者達は一度あそこに入れられてしまえば最早戻る場所など無い・・・・っ!オズマらは一度でも精神を病んでしまえば終わり・・・・完全終了の定めなのであった! by立木ナレ 
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