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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第34話:並行世界との別れ

アルティメットカオスモン、メギドラモン、アルゴモンを撃破し、少しの休息の後。

「本当に良いのか?」

鞘に納まったロングソードを見つめながらブイモンはマグナモンに尋ねた。

「ああ、今の俺が持っていても宝の持ち腐れだ。寧ろその剣に新たな可能性を与えたお前が持っていた方がいいだろ…」

「マグナモンはこれからどうするの?」

「テイルモンの迷子捜しに付き合うさ。心配だしな」

「本当…ここまで来てまた迷子ってどういうことよ全く!!」

ウィザーモンが次元規模の迷子になってしまったことにプンプンと怒るテイルモン。

「まあ、落ち着け…あいつのデータを集めて世界中を駆け巡って復元も含めて数百年もかかった旅に比べれば遥かにマシだろ」

「まあね…そうそう、データのサルベージの方法だけど…」

テイルモンは並行世界の自分にデータのサルベージ方法を教えた。

「でも、良いのかい?君はロイヤルナイツだ。ロイヤルナイツがホメオスタシスの元から離れて…」

「知るか、今回の戦いはバグラモン以前に保守的過ぎたホメオスタシスが原因だ。邪魔をするならロイヤルナイツを抜けてやると脅してやった。」

「神様脅したのかよお前?」

「ふん、俺は世界がどうなろうと知ったことじゃない。俺が戦うのは仲間のためだ。ホメオスタシスのためじゃない」

呆れる大輔にマグナモンは鼻を鳴らしながら問題発言を言い切った。

「さて、クロックモン。大輔達を元の世界に案内してやれ。もし、しくじればお前の今年の給料は0になると思え」

「ラジャー!!」

絶対にしくじれないとクロックモンは気合いを入れた。

「そうそう、大輔。ウィザーモンから預かっていた物を返しておくわ」

テイルモンが差し出したのはウィザーモンに修理を依頼した奇跡のデジメンタルであった。

バラバラの状態であったにも関わらず、完璧に復元されている。

「奇跡のデジメンタル…サンキュー」

「それ、ウィザーモンから聞いた話だと完全に復元出来なかったみたい。オリジナルより性能が低くなっているらしいから気をつけて」

「充分だ。」

D-ターミナルに保存されたデジメンタルを見て、大輔達は自分達の世界に帰るのだった。

そして向こうではコトネとスパロウモンが抱き合って号泣していた。

「嫌でち~!スパロウモンしゃんとお別れなんて嫌でち~!!」

「わぁああん!僕もだよぉコトネ~っ!!」

「コトネ…スパロウモン…!」

ネネもまた目に涙を滲ませながら、モニモンを抱いていた。

「ああ…いたいた!」

突如聞こえた声にネネ達が振り返る。

そこにはロイヤルナイツにしてかつてデジタルワールドを救った英雄のパートナーデジモン、アルフォースブイドラモンがいた。

「天野ネネさんだね!帰る前に会えて良かった!君達に頼みたいことがあったんだ!確かにもうすぐ次元の道は閉じてしまうけど…何しろ騒動の種に困らないこのデジタルワールドだ。いつ新しい事件が起こって人間界にも影響が出ないとも限らないからね!そこで…もし人間界で新しくデジモンがらみの事件が起こった時のために…」

アルフォースブイドラモンの頼みにネネ達の表情は輝いた。

そして一方、タイキとキリハ達はクロスハートとブルーフレアを解散させ、誰よりも苦楽を共にしたパートナーと最後の別れを交わしていた。

「最後の命令だ。安い死に方だけはするな」

「無論よ!貴様こそ新しい戦場で半端な戦い方をするんじゃないぞ!」

拳を互いに突き出して軽くぶつけ合うキリハとグレイモン。

「キリハ…!お…俺は…俺はなあ…!!お前と肩を並べて戦えたことを……誇りに…!くっ…」

涙を流すメイルバードラモンの頭にポンと手を置くキリハ。

「お!行くのか?」

「うん…次元の道もそろそろ限界みたいだしな。」

「そっか…しっかり者のアカリがついてんだ。俺が心配することじゃねえが。ま、のらりくらりと頑張んな!」

「のらりくらりって…それが別れ際に言う台詞かよ!」

「男と男の別れなんざこんなモンよ!例え遠く離れてても俺達ぁ、ソウル・ブラザーだ。それで充分だぜ!!湿っぽくしても始まんねえ!!オラ行った行ったあ!!」

「わっとと…!」

軽く蹴られるタイキ。

周りをよく見るとキリハは既にいなくなっていた。

タイキは溜め息を吐きながら移動する。

「(何だよ、1年間一緒に戦ってきた相棒だろぉ?カラッとするにも程度ってもんが……いい王様になれるのかなぁ、あいつ…)」

次の瞬間、苦笑しながらタイキは足を止めた…いや、止められた。

「行くなよぉ…!」

タイキの服の裾を掴みながら号泣するシャウトモン。

「もっと…もっと一緒に冒険しようぜぇ…!!このデジタルワールドにゃあ…まだ見ぬ秘境が、手強い悪者が…!まだまだわんさか残ってる…!!この世界にいればお前さんは本物のヒーローなんだぜ!!?俺はっ!俺はずっとお前と一緒に…!!」

「シャウトモン」

泣き崩れるシャウトモンの肩に手を置きながら言葉を紡ぐタイキ。

「確かに俺達の世界で夢を追うって言うのは…デジタルワールドで冒険するような痛快で格好いいことばかりじゃなくて、どっちかって言うとコツコツ頑張ったり、じっと我慢しなきゃいけないことの方が多いかもしれない…けどさ…それでも俺、この胸のワクワクが放っとけないんだ…!!俺が本当に何を目指すのかまだ分からない。大輔やキリハみたいに明確な目標があるわけでもないし。」

キリハは人間界に戻ったら一から勉強をし直し、事業を受け継いで、父親以上に発展させ、堕落している兄達を悔しがらせてやると言っていた。

大輔もラーメン屋になるためにマッシュモン達のような料理を得意とするデジモン達から学び、元の時代に戻った後も夢のために前へ進み続けるだろう。

自分も大輔やキリハのように夢へ進みたいのだ。

「今度は逃げ出さずに…真っ直ぐに追いかけて行きたい…!シャウトモン…お前みたいに…!!そして…いつか夢を叶えて、“俺は俺の夢のキングなんだ!!”って胸を張って言えるようになったら…!また一緒に冒険しよう…!!全員揃うのは無理かもしれないけど、夢を分け合った俺達クロスハートのみんなで…!!!」

「……………約束だぜ…!!」

「約束だ…男と男の…!」

シャウトモンは涙を拭いながら立ち上がる。

「…へっ…行きな!俺ぁ先に俺の夢を叶えてくらぁ」

「ああ!ボリューム最大で頼むぜえっ!!」

タイキも次元の道を通り、途中でクロックモンに導かれている大輔達と会い、笑顔で別れた。

そしてシャウトモンは待たせている仲間の元に。

「シャウトモン!」

「準備出来てるよ!」

「(分かってるさ、タイキ…!!世界の向こうまで響かせてやらあ…!!)」

舞台に立ち、シャウトモンは観客に向かって静かに語り始めた。

「これから、俺達のソウル・ブラザー達に歌を贈る。人間界に帰っちまうタイキ達と、タイキ達とは違う別の世界に帰っちまった大輔達にこの2つの歌をなあ!耳かっぽじって聞きやがれ!!!まず1曲目!!butter-fly!!!」

シャウトモンが叫ぶと観客達も叫び、シャウトモンの歌が響き渡る。

その歌は次元の道を走るタイキ達にも届いていた。

中学生となったアカリ。

1人、剣道の素振りをするゼンジロウ。

そして彼の元に来た天野姉妹と動物化したスパロウモン達。

父親の建てたビルを見上げるキリハ。

そして次元の道を抜け出して元の世界に戻るタイキ。

タイキとシャウトモンの脳裏に浮かぶのは、仲間と共にデジタルワールドを駆け巡った記憶。

「次行くぜえ!2曲目、ターゲット~赤い衝撃~!!」

2曲目…今度は過去の並行世界の過去へと帰る大輔達に贈る歌。

次元の道を通っていた大輔達は途中で賢とワームモンと別れて、自分達が飛ばされた場所に向かって突き進む。

この冒険で、強く成長した賢。

自分を理解し、受け入れてくれる存在を手に入れた彼は自分の罪にも真っ向からぶつかることが出来るだろう。

大輔もヒカリも数々の試練を乗り越えて心身共に強くなった。

2人はこれから先、何があっても互いに手を取り合って支え合って戦える。

時空の道から飛び出した大輔とヒカリは穏やかな表情で空を見上げた。

そして向こうのデジタルワールドではドルルモンがキュートモンを乗せて駆けていた。

「黙って出て来ちゃって良かったキュ?」

「お前の親を捜す旅はまだ途中だからな。なぁに、奴のダミ声はどこに行っても聞こえてくるさ!それにな!こりゃタイキの受け売りだが…この世界はまぁるい球みたいな形をしていて、例え別々の方向を歩き出しても真っ直ぐに進み続ければ…いつかまた必ずどこかで出会えるんだとよ!!」

「キュー!!」

「走っていけば尚更だ!!」

「キューーーーッ!!」

ドルルモン達は荒野を駆け抜けていった。

そして別の場所でも…。

「本当にあんた良かったわけ?」

「良いって言ったろ。ホメオスタシスよりもお前の方が大事だ。ウィザーモンのことは俺も深く関わったからな」

「ありがとう…あいつら大丈夫かしら?」

「心配する必要はないだろ。サルベージ方法は教えたし、それに向こうには向こうの俺がいるんだからな」

「あんた何さり気なく自分自慢してんのよ…さっさとウィザーモンを見つけましょう。そしてどこかで行き倒れていたらまた水を飲ませて、さっさと3人であの2人の所に帰りましょ」

「そうだな…よし行くぞテイルモン!!」

「フルスピードで飛ばしなさいよマグナモーン!!!」

テイルモンを背中に乗せ、マグナモンはフルスピードで世界を回り始めたのであった。 
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