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人徳?いいえモフ徳です。

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三十四匹目

「ボーデン」

「ん? どうしたシラヌイ?」

「スライムってペットになるんだよね?」

「ああ。王宮でもたまに見かけるだろう?」

たまにっていうか結構頻繁に見かける。

ル〇バみたいな使い方をされている。

「あれ、僕も欲しいんだけどさ、育て方教えてよ。核はあるからさ」

「ペットか? まぁ、いいが…」

ボーデンは僕に一冊の本を渡してくれた。

タイトルはそのまま[スライムの育て方]。

「こんど見せにくるね」











家に帰ると早速スライムを蘇らせる。

本の通り桶に水を張ってそこにスライムコアを落とす。

「あ、しまった。これあの時のコアだ」

ふと幾つかの中から適当に取り、落としたコアは白かった。

「ま、いっか」

スライムコアが魔力を周りの水に浸透させる。

じわぁ~…って全て水に魔力が浸透すると、水が中央に集まりちっこいスライムになった。

「調教開始だ!」

side out
















わたしは、はじめはただのそんざいだった。

でもあのとき、わたしはきょうふした。

えものだとおもっていたやつが、ほんとうはわたしをくらうものだった。

やつ、いや、ごしゅじんさまはわたしのからだをぐちゃぐちゃにおかした。

わたしはからだのしはいけんをうばわれていった。

それだけなら、まだよかった。

そそぎこまれたちからがわたしのからだをこおらせはじめたのだ。

わたしはからだをすてたらうごけない。

そして、わたしはこおりにとざされた。

でもすぐにこおりのそとにでることができた。

そのときだった。わたしはなぜかごしゅじんさまのいっていることをりかいできていた。

なんでだろう?

ごしゅじんさまはそれからいろいろあって、このいえにかえってきた。

わたしはへやのすみで、ずっとごしゅじんさまをみていた。

わたしはきづいた。

わたしとごしゅじんさまとのあいだのつながりを。

あのときごしゅじんさまがそそいでくださったのは、ごしゅじんさまじしんのいのちのかけら。

そのかけらは、わたしにちせいとりせいをもたらした。

だから、ごしゅじんさま。

このみくちはてるまで、わたしはあなたにつかえます。

side out










ぷにぷにした感触で眼が覚めた。

ぷにぷにしててひんやりしてる。

「んゅぅ…………」

「おきて、おきてくださいごしゅじんさま」

んー……誰だろ…女の声だ…。

こんなメイドいたかな………。

うっすらと目をあけると、

青い女が僕を覗き込んでいた。

なぜか裸で、しかもロリ巨乳。

「おはようございます。ごしゅじんさま」

んー……………………………誰?

「てぃあ。わたしはてぃあ。ごしゅじんさまがつけてくださった名まえですよ?」

ティア? えーっと…そう、スライムにつけた名前だ。

スライムは始め白痴で善悪を持たないと書いてあったからイノセンティア(純粋な者)とティア(水滴)からとったのだ。

ん? 待てよ? スライム?

「ごしゅじんさま?」

僕を覗き込む女…少女は青く、それでいてかすかに透けている。

眼窩にはまる瞳に瞳孔はなく、ビー玉のようにキラキラと耀いていた。

「お前ティアか!? スライムの!?」

「やっと気づいてくれましたねごしゅじんさま」

うっそだろう!?

「ティア。取り敢えず整理するから待って」

この透明美少女がティア?

昨日のスライム?

なんで? どうして? 美少女スライムなんて生まれてこのかた見たことない。

「ティア。どうして人の形を? なんで話せるんだ?」

そう。スライムは白痴のはずだ。

「ごしゅじんさまがわたしに命のかけらをそそいでくださったからですよ。
覚えてないんですか?」

命の欠片?

そうか! あの時そそいだ魔力!

「ちなみにこの体はごしゅじんさまのこのみ………のはずです」

「そのロリ巨乳が?」

「柔らかくてほうようりょくはあってほしいけれどじぶんより背がたかいのはいや、というごしゅじんさまの本心を」

「僕の心丸裸にしないでくれる!?」

「本当はもふもふがいいのでしょうけど、だいたいあんとしてのきょにゅーです」

「あ、うん…もう勝手にして」













「なるほどのー。ま、よかろう。ちゃんとそだてるんじゃぞー」

「んななげやりな…」

お婆様は面白がっているのでお母様とお父様に視線を向ける。

「そうですねぇ……。まず服を創ってあげるところから始めたらどうですか?」

「ペットはちゃんと育てるんだぞシラヌイ」

ダメだ。家の大人が頼りにならない。

仕方ないので朝食のあと(ティアは僕の後ろに控えていた)部屋に戻った。

机に座り、改めて立っているティアを見る。

うん…かわいい。

ん?

「ティア。その目はどうしたの?」

「これはすらいむこあです。部屋のすみにおいてあったので目にしました」

「大丈夫なのか? そもそも別の存在だろう?」

「私はごしゅじんさまがそそいでくださった命があるので他のこよりつよいんです。
だからわたしがとり込めば私の一部になるんです」

へー…それは面白い。

なら、全部あげてみようかな。

「ティア、コアが増える利点は?」

「あたまが良くなります」

「欠点は?」

「魔力のしょうひがふえます」

なんだそれだけか。

「どれくらい?」

「いっこにつきいち割ほどです」

ふむ…今あるスライムコアは50くらい…。

「ティア。僕の魔力でティアはどれくらい動ける?」

「ごしゅじんさまの魔力量ならかたてまで一月ほどは」

けっこう燃費いいんだなスライム。

じゃぁ50個プラスすれば今の六倍…30割る六…だいたい一週間か。

「わかった。じゃぁ毎日魔力を注いでやろう。スライムコア全部食っていいぞ」

部屋の角にある麻袋を指差す。

「いいんですか?」

「頭が良くなるんでしょ?」

「はい」

「あ、でも僕に刃向かうとかやめてね全力で抵抗するから」

「逆らいませんよ。だってわたしに知性と理性をくださったのはごしゅじんさまですから」

ティアは麻袋に手をいれるとスライムコアを吸収しはじめた。

ティアの透明な体の中に球体がたくさん透けて見える。

「どうだ? ティア?」

「すこぶる快調です。ご主人様」

さっきまで少し舌足らずな話し方だったが、流暢に話す。

「んーと……32割る4は?」

「八」

「144割る3」

「48」

「5のマイナス二分の一」

「ルート5分の一」

「ルート7の整数部分は?」

「2」

おー…。すごいな。

「ぐっじょぶ」

これは有能な助手が着いたと思った方がいいかもしれないな。

さて、そんな助手にいつまでも裸で居られるのは困る。

「ティア。服を作ろう」

本棚からこの前書いた魔導書を引っ張り出す。

魔法の媒体になる特別な紙とインクで書かれている。

選んだページに書いてあるのは錬金術。

ポリエチレンの錬成式だ。

ティアには不定形状態になってもらい、一緒に薪炭材置き場に向かう。

好都合な事に向かった先には誰も居なかった。

水を錬成した桶に入れて、大量の木炭をぶちこむ。

これでOK。エチレンは二個の炭素と四つの水素からできていて、ポリエチレンはそれの重合物でしかない。

ページを開く。

有機化合物系の錬成は細心の注意が必要だ。

ミスったら有毒ガスが発生しかねない。

「女神サークリオンよ。円環への道を我に示し給まえ。
ジェネレート・ポリエチレンクロス!」

本に魔力を注ぎ、錬金術を発動させる。

木炭と水が形を失い、融けていく。

やがて少しずつ少しずつ形ができていく。

白く濁ったワンピースが形を表す。

「できたよ。ティア」

分厚めにつくったワンピースにティアが触手を延ばす。

すぐにちゅるんと潜り込んで人形になった。

「どう?」

「嬉しいです」

ニッコリ笑ったティアはとっても可愛い。

「えーと…あとは……。あ、パンツとか要る?」

「いえ、これで十分です。具もありませんし」

有るけどな。機能はないけど。

「ご主人様が必要であれば付けますが」

「要らん要らん。あと僕の心を読むな」

「御意」



こうして僕の日常に有能な助手ができた。 
 

 
後書き
「ご主人様、コアを幾つか腸内にいれれば腸内を清潔に保てますよ」
「?」
「ご主人様の大きい方を無理矢理栄養と水に分解します」
「そんな事できるの?」
「はい」
「じゃぁ、宜しく」
この時腸内にコアを入れた事を後悔するのは随分と先の事だった。 
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