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レーヴァティン

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第八十六話 票田その九

「絶対にな」
「じゃあね」
「このまま選挙戦っていくな」
「用心もしながらね」
「そのうえでな」
 実際にと話してだ、久志は演説も根回しもしていった。そうしてそのうえで選挙戦も終盤も大詰めになり。
 投票となった、久志は当然ながら自分に投票してから自身の屋敷に帰ってハンナに対してこう言った。
「この島女の人も投票出来るけれどな」
「そのことがですか」
「ああ、凄いことだよ」
「そうなのですか」
「こっちの世界だとな」
 久志はハンナに自分達の世界のことを話した。
「そうなるのに結構時間がかかったんだよ」
「女の人は投票出来なかったのですか」
「男でも誰でもっていうのすらな」
 つまり成人男子の普通選挙の実現もというのだ。
「中々でな」
「それで女の人については」
「本当にな」
「実現するまでにですか」
「物凄い時間がかかったんだよ」
「そうでしたか」
「男女差別ってのがあってな」 
 このことが背景にあったことは事実だ、女性の社会進出は近代では中々実現しなかったのだ。二十世紀も中期になって主流になったと言えるだろうか。
「それでな」
「旦那様の世界では」
「女の人も投票出来るとか」
「なかったのですか」
「というか選挙自体な」
 この島のローマの様にというのだ。
「出来なかったな」
「そうですか」
「ああ、この世界のローマ凄いぜ」
「成人の市民なら誰でも投票出来る」
「これかなりのものだぜ」
「この島では普通ですが」
 当然のものとして考えられているというのだ。
「しかし」
「こっちの世界じゃ違うんだよ」
 久志が起きている時の世界ではというのだ。
「今でこそ結構な国で普通でも」
「そうなるまでに時間がかかりましたか」
「色々な政治闘争や論争があってな」
 その結果というのだ。
「ようやく実現したんだよ」
「私達の世界と随分違うのですね」
「本当にな、けれど選挙があるなら」
 それならばとだ、久志はハンナにさらに話した。
「それに勝ってな」
「そうしてですね」
「護民官になるぜ、そしてな」
「ローマをですね」
「完全に掌握してな」
 そうしてというのだ。
「それをはじまりにして」
「そのうえで」
「島の統一を進めていくぜ」
「選挙に勝って」
「そこからだよ、しかし不正選挙もないよな」
 ここでこの不安も感じた久志だった。
「よくある話だしな」
「昔はローマでも結構あったらしいですが」
「やっぱりな、昔の選挙っていい加減だったらしいしな」
 十九世紀のアメリカの選挙ではそのいい加減なところの話が結構あるとのことだ、モルグ街の殺人で知られるエドガー=アラン=ポーもその選挙に引っ張り込まれて工作に使われたことがあるという。
「不正とかな」
「あったらしいです」
「やっぱりそうだよな」
「ですがそれでもです」
「今はないか」
「選挙管理にも力を入れているそうで」
 街の方でだ。 
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