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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第28話:新たな力

インペリアルドラモンHDMがディアボロモンに城外へと叩き出されてから数分後、シャウトモンX7とタクティモンの戦いは激しい物になっていく。

「うおおおおおおっ!!!」

2体は空中で激しい攻防を繰り広げる。

タイキ達を巻き込まないようにするため、シャウトモンX7とタクティモンはどんどん地上から離れていく。

「(シャウトモン!!飛ばし過ぎだぞ!!タイキ達から離れ過ぎている!!そうでなくても何度ものDXやX7へのデジクロスでお前の体には無理が…!!)」

「(うるせぇ!んなモン屁でもねえ!!あんな奴、俺達だけで倒してやらぁっ!!)」

ドルルモンが止めようとするが、シャウトモンはそれを聞かずに戦闘を続行する。

「…………」

「何時ものシャウトモンらしくない…」

ヒカリの言葉にアカリも同意見とばかりに頷いた。

「…シャウトモン、私達に遠慮してる…?」

「そんな…何で今更そんなこと気にするんだよ…。今までどんな苦しい戦いだって一緒に乗り越えて来ただろおっ!!」

「(戦いはもうすぐ終わる。俺達の冒険も終わる…!人間界へのゲートは閉じて、タイキ達は帰っちまう…!!俺達は俺達だけで戦っていけなきゃならねえんだ。それを証明することが…ここまで付き合ってくれたあいつらへの手向けってもんだろぉ!!?)」

シャウトモンX7のスタンドマイクとタクティモンの蛇鉄封神丸が擦れ違い様に交差し、両者共に互いに背を向ける。

先に動きを見せたのは、タクティモンであった。

タクティモンの仮面の一部が割れ、割れた仮面からは黒い瘴気が僅かに溢れ出ている。

「………見事…」

「…っ!」

「…っ!タクティモンの仮面が…!」

「この一撃…正に汝らの意気の賜なり…!!!なれどその切先、今一歩…鈍し!!」

「ぐあああああああっ!!!」

次の瞬間、シャウトモンX7を先程の擦れ違い様に受けた衝撃が襲い、あまりのダメージにデジクロスが解除された。

「シャウトモ…」

次の瞬間、向こうから爆音が響き渡り、全員が向こうを見遣るとインペリアルドラモンHDMが30000体以上のディアボロモンにリンチされていた。

巨体故にかわすことも出来ず、攻撃してもかわされるか、撃破スピードを大幅に超える速度で増殖する。

「な、何だあのデジモンは!?」

「ディアボロモン…!?」

単体で増殖するという異常な能力にキリハは目を見開き、ヒカリは光子郎に見せてもらったかつて兄達を苦しめた悪魔の姿に顔を青ざめた。

「解き放たれたか…かつてデジタルワールドを荒らし回り、陛下によって封印された悪魔が…!!」

1体1体のディアボロモンのエネルギー弾によるダメージは軽微だ。

しかし塵積もれば何とやらで30000以上の攻撃は流石のインペリアルドラモンHDMでも耐えきれる物ではない。

ダークナイトモンとの戦いの時のようなことも出来ないため、インペリアルドラモンHDMにダメージが溜まっていく。

「「インペリアルドラモン!?」」

ヒカリと賢が嬲られているインペリアルドラモンHDMを見て目を見開いている。

それを見ていたマグナモンも慌ててそちらに向かおうとする。

「まずい!アルフォースブイドラモン、この場は任せたぞ!!」

マグナモンは最大速度でインペリアルドラモンHDMとディアボロモンが戦っている場所に向かう。

「(テイルモン、聞こえるか?)」

「(マグナモン…?)」

向かう途中に念話で大魔殿内にいるテイルモンに話しかけるマグナモン。

「(インペリアルドラモンがディアボロモンの攻撃を受けて危機に瀕している。お前の力が必要なんだ…!!)」

「(でも、今の私には進化の力は…)」

「(そんなの関係ない。進化なんか使えなくても大輔達の力になれればそれでいい!!今から大魔殿の近くを通る、出て来い!!)」

「(ああもう、分かったわよ!!その代わりしっかりと受け止めなさいよね!!)」

テイルモンは開いた壁から飛び出し、マグナモンに受け止められた。

「行くぞテイルモン!!」

「ええ!!」

「インペリアルドラモン!!大輔君!!」

「タイキさん、キリハさん。すみません、僕達はインペリアルドラモンの元に!!」

ヒカリも賢も見てはいられなくなり、急いでそちらに向かう。

インペリアルドラモンHDMの元に向かおうとするヒカリと賢の後ろ姿を見つめながら、タクティモンは蛇鉄封神丸を掲げた。

「多くのデジモンが爪や牙など闘う術を持って生まれ…果てない闘争の末に命を落としてゆく。この蛇鉄封神丸を振るう器として…数万年来溜まり続けた武人デジモン達の無念の残留魂魄のデータを練り固めて作られたのがこの私だ。」

「(ス…数万年分ノ怨念…!)」

「(魂を操るって言う、皇帝バグラモンの能力か…?)」

「(俺達ぁ、そんなもんと戦ってたのかよっ…!!)」

「この命と信念の全てを懸けて…磨き抜いた魂…!鍛え抜いた技…!その殆どが無念の敗北と死の元に戦場で最期を迎えた…。陛下は我らが無念を酌み…この刃に最期の振り降ろし場所を与えて下さったのだ…!!」

「(大勢の武人が命懸けで貫こうとして貫けなかった信念と…俺なんかが短い人生ん中ででっち上げたちっぽけな夢…くっ…、比べモンにならねえ…!!)」

あまりの比べ物のならなさに、諦めの表情を浮かべるシャウトモン。

「佳き戦であった。いざ…我が士道、完遂せん!!」

「(俺ぁ、こんな独り善がりな夢で…何て所までみんなを連れて来ちまったんだ…!!)」

シャウトモンに向けて振り下ろされる蛇鉄封神丸。

「シャウトモーーーン!!」

タイキの叫びが響き渡る。

「っ!!…?…」

目を瞑るシャウトモン。

しかし、降り降ろされたはずの刃が体を貫いた感触がなく、それどころか届いていないのだ。

目を開けると、そこには蛇鉄封神丸に体を埋め、体に亀裂が入ったスターモンの姿があった。

降り降ろされる直前に刀に体当たりを喰らわせ、軌道をずらし、シャウトモンの命を救ったのだ。

「ス…スターモン!!お前っ…!」

「あっ…兄貴ほどの男が何を弱気になってやがるっ…!!それが俺が…俺達が憧れた男の面かよ…!?ったく…しっ…仕方ねぇ兄貴だぜ!兄貴に自信がねえってんなら…この俺が何度だって言ってやる…!!兄貴のドリームは宇宙一クールででイカすぜっ…!!!魂のロックで世界中をドハッピーに盛り上げるんだろぉ!?みんなその夢に惚れ込んで自分達の夢を預けてるんだ!!遠慮なんてしてんじゃねえぇーーーっ!!!」

「…っ!…」

旅する以前から、シャウトモンを慕い、共に戦ってきた友の言葉。

その言葉にシャウトモンの前に立つ、旅の間に出来た仲間達。

「…ああ…そうだぜシャウトモン…!!お前さえ諦めなけりゃ俺達は何度でも立ち上がれるんだ…!!」

「私達だってシャウトモンの夢の続きが見たいよっ…!!」

「男なら信じた道を貫き通すでーーーち!!」

「(此奴等っ…!?)」

ゼンジロウにバリスタモン。

アカリにドルルモン。

コトネにスパロウモン。

大魔殿にいるウィザーモンのブランクだったXローダーが淡く色付き始める。

片方は薄桃色、もう片方は薄緑色。

クロス・コードに反応しているわけではない。

ただ純粋に仲間を想う熱き想いに応えるかのように、更なる力を与える。

「バリスタモン!!」

「ドルルモン!!」

「スパロウモン!!」

「「「進化ーっ!!」」」

進化の光を突き破って現れたのは新たな戦士達。

「アトラーバリスタモン!!」

「イエーガードルルモン!!」

「ラプタースパロウモン!!」

バリスタモンは全身がより大型化しカブトムシに近い姿となり、ドルルモンは全身をマント付きの鎧で覆い、ドリルの槍、巨大な爪のような盾を装備した騎士のような姿に、スパロウモンは腕はなくなったが巨大な脚が生え、名前に違わず猛禽類を思わせる姿になった。

そして一方、インペリアルドラモンHDMはディアボロモンの猛攻によって限界を迎えようとしていた。

「メガデス…!!」

口と背中の大砲から暗黒物質を同時に放つ。

放たれた2つの暗黒物質は1つとなってより強大な破壊力を誇る一撃へと変化し、前方のディアボロモンを10000体近く粉砕した。

しかしディアボロモンはインペリアルドラモンHDMの必死の反撃を嘲笑うかのように増殖していく。

ここまでインペリアルドラモンHDMとの相性が最悪なデジモンに大輔は歯軋りした時である。

「大輔君!!」

「大輔!!」

「賢、ヒカリちゃん!?」

ディアボロモンが道を塞ぐ前に何とか大輔とインペリアルドラモンHDMに駆け寄ることが出来た。

「大丈夫!?」

「ヒカリちゃん…賢…どうして…」

「大輔君と一緒に戦うために来たの!!」

「インペリアルドラモンは僕とヒカリさんのパートナーでもあるんだよ?」

「大輔君、頑張ろう?私達が3人がインペリアルドラモンと力を合わせれば絶対に負けないよ!!」

「…ああ!!まだ負けるわけにはいかねえよな!!こんな所でよ!!俺達はどんな時でも、最後まで戦ってきたんだ!!」

2人の言葉に大輔の目に闘志が戻る。

「そうだぜ大輔!!」

「それでこそ大輔よ!!」

「「「マグナモン!!それにテイルモンも!!」」」

ディアボロモンを弾き飛ばして大輔達に駆け寄るのはマグナモンとテイルモン。

「大輔、お前は最後までどんな時も諦めたりはしなかった」

「だから私もヒカリもみんなも最後まで戦えたのよ!!」

「マグナモン…テイルモン…ありがとう、お前達の力を貸してくれ!!」

「「当然だ(よ)!!生きる世界が違っても、並行世界だろうと俺(私)達は、仲間だ(よ)!!」」
例え、世界が違っても大輔とヒカリであることに変わりはない。

ならば、彼らもまた自分達が守るべき存在なのだ。

「よおし、気合い入れていくぞ!ヒカリちゃん!!賢!!」

「「うん!!」」

「「「インペリアルドラモンHDM!!マグナモン!!テイルモン!!パラレルクロス!!」」」

本来交わるはずのない平行世界の自分自身との合体。

同一人物同士のデジクロスが通常のデジクロスよりも強大な力と奇跡を生み、インペリアルドラモンHDMが大きく力を変えた。

「インペリアルドラモンHDM、モードチェンジ!HFM(ホーリーファイターモード)!!」

人型形態となったことでより、以前よりも小回りの利く動きが可能となり、攻撃力も竜形態時よりも大幅に増している。

インペリアルドラモンHFMを見たロイヤルナイツの面々はその神々しい姿に目を見開いた。

「お…おお…!!」

「何という美しい姿のなのでしょう、ララ~♪」

「まるで我らがロイヤルナイツ始祖、インペリアルドラモンPM(パラディンモード)のようだ…!!」

ドゥフトモン、ロードナイトモン、アルフォースブイドラモンが呟く。

インペリアルドラモンHFMはロイヤルナイツの始祖、インペリアルドラモンPMに似ていたのだ。

強いて違いを言うなら、インペリアルドラモンPMが持つ聖剣、オメガブレードを持たないことだろうか。

「本当の戦いはこれからだぜ!!」

インペリアルドラモンHFMが無数のディアボロモンを睨み据えた。 
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