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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE180 オズマ・・・豪遊っ!

ネットゲーム依存症治療施設に強制的に入所させられて一週間が経過したオズマ!
一週間の内の6日間……!土曜日と祝日を含めて毎日8時間フルタイムで働き続けて……っ!得られる給料は僅か24000マネー……日本円に換算して2400円!これで30万マネーの一日外出券を得るには13週間……約3カ月ほども溜め続けなくてはならない……っ!

そして、この僅かな給料にオズマの全てか掛かっていた!オズマの未来……行く末が……っ! by立木ナレ

収容者「俺ビールとポテチで!」

収容者「僕はロング缶一本!それと煙草一箱!」

収容者「私はシュークリーム買います!」

全員への今週分の給料が手渡されると早々に、収容者達は早速大月と側近の職員の男――沼崎(ぬまさき)が売る嗜好品や物品を買う為に次々と僅かな給料を使い始めていた。

俺「バカか……っ!?チンケな嗜好品に次々と……っ!ビール一本で4500マネーって事は450円……外の倍以上の値段じゃねぇか!!」

ビールに限らずスナック菓子や煙草、つまみ物、その全てが外のスーパーや百貨店などで売られている値段の倍ほどの価格であるにも関わらず、連中はそれを物ともせずに次々と使いまくる姿を見て俺は揃いも揃って救いようのない連中なんだと思わざるを得なかった。

奴らが売る嗜好品の値段が通常の倍の値段だとすると、俺達に手渡された24000マネー……2400円は実質その半分の1200円の価値に過ぎないと言うわけだ。
あんな調子で使ってたら、こんな端金は一週間も経たないうちにあっという間に吹き飛んじまう。

俺「俺は使わねぇぞ……っ!こんなところで使うかよ……っ!この金を13週間溜めれば、合計で312000マネーだ。そうすりゃ一日外出券を買って外に出られる……っ。そうすりゃ外の連中に助けを求めて……」

そもそも俺は保護者にネットゲーム依存を治療してほしいと頼まれてここにいると言うのが施設側の連中の話らしいが、俺の親父と爺さんが今更俺がネットゲーマーである事をどうこう気にするはずがあるか……っ!

だとしたら考えられるのは離婚して別居してるお袋と姉貴の側だが……それはそれで奴らが俺をこんなところに押し込めて何のメリットがあるんだと言う話になる。

俺「どちらにせよ、外に出て情報を得られない内は何も分からねぇしな……」

どちらにせよこんなところで何時までも施設側の奴らの言う治療なんてのを受けるつもりなんてあるはずがない!
何としても一日外出券を手に入れて、外の連中の手を借りてここから完全に脱出するんだ!


だが……っ!頑なになればなるほど……その反動は大きくなるのが人の性であるっ! by立木ナレ



※ ※ ※


タコ部屋の中はなけなしの給料で酒やらタバコやら摘み物やらを買ってバカ騒ぎしてる連中の楽し気な騒ぎ声が否応でも俺の耳に届く――それを聞けば聞くほど……妙に嫌に、胸がざわついてきやがる……っ!

そして脳裏には酒、たばこ、酒の摘みが頭を次々に過る……っ!

俺「そうだ……買えるっ!今の俺なら帰る……っ!酒!タバコ!ポテチ!チーズちくわ!」

クソォ……っ!ダメだダメだ……っ!考えれば考えるほど欲求が強まってきやがるぞっ!!――そして、俺が必死に物欲の誘惑に抗っていた所に、まるでそんな俺の心中を察したかのように施設長の大月が人の良さそうな笑みを浮かべたまま歩み寄ってきたのだった。

大月「ふふっ……分かるよ弭間君」

俺「あ……?」

いきなり声を掛けてくる大月に対して俺は思わず、不機嫌気味な声を返すが、大月は全く気にする様子を見せずに笑みを崩すことなく答える。

大月「君が狙ってるのは一日外出券だろぉ?考える事は大体みんな一緒さ……来たばっかりの者は大体それを狙うのさ……だったらこんなところで使ってはいられないよねぇ~」

一体このオッサンは何の用で俺に声を掛けてきたんだ?訝し俺に構わず、大月の話は続く。

大月「けどね弭間君――無理はいかんよ、無理は続かない。適度に自分を許す事が大切さ、それが、長続きのコツってもんだと思わないかな?」

と、どうでも良い話を垂れる大月だったが、俺の視線を瞬時に注視させたのは大月が俺の目の前にそっと置いた一本のノンアルコールの缶ビールだった。

俺「はぁ……?」

大月「これは私からのプレゼントさ、弭間君の初給料のお祝いにね……」

俺「…………」

ただでくれるって言うのなら遠慮なく貰うが、どうせならノンアルコールじゃなくて本当のビールを貰いたいもんだ。
ま、俺が未成年である以上、アルコールのある酒を飲ませるわけにはいかねぇって理屈なんだろうけど、中学の頃から一日一本酒を飲んでる俺としては今さらノンアルコールなんて酒を飲んだ気にはなれない。

大月「じっくり味わって飲みなさい……」

そう諭すように言い残し、大月は俺の前から立ち去り、物品売りを続けている沼崎の隣に戻っていた。――まあ、どうせタダだしな、メンドクセェ仕事とパサパサしてる魚だけがおかずの晩飯の後で喉も乾いてた所だったし、水でも飲むような気分で飲むとするか……俺はそんな気分で右手で大月が置いて行ったノンアルコールのビールに手を触れた途端――

俺「―――ッ!!――キ、キンキンに冷えてやがるっ!!」

余りにも冷えたビールの肌触りの良さに俺は思わず声を上げていた。間のプルタブを開けるとシュッと言う炭酸の音が鳴る。
そして俺はノンアルコールのビールを一気に口の中に放り―――


ごくごくごくごくごく……は、犯罪的だっ!!う、美味すぎるっ!!労働後の怠さと、ネット環境から隔離されたストレスに一週間ぶりのビールっ!

俺「これって……本当にノンアルコールなのかよ……?」

本当にノンアルコールのビールを飲んでいるのかどうか分からなくなるくらいの美味に俺は思わずビールの缶を見て確認していた。
ノンアルコールのビールを飲んで美味い美味いと言って騒いでいたリズの気持ちが今なら分かる気がする……解けそうなほど美味いっ!

俺「あっ……」

が、そんな至福の時間はあっという間に終わる。すぐに350mlのビール缶の中は空になり、これでもう終わりなのかと思うと急に侘しい気分が昂ってきた……

俺「…………」

そして、そんな俺にまるで見せつけるかのようなタイミングで、20歳かそこらの収容者の男が上手そうにチーズちくわを食ってやがるときたもんだ。

俺「くっ……あんなの食いながらビール飲めたら……クソっ!」

だが、買おうと思えば買えなくはない……一週間で24000マネーの給料を13週間溜めれば312000マネーだから、一日外出券300000マネーよりも12000マネー多い、つまり余るって事だ……っ!その気になりゃ……っ!

俺「いや、ダメだろ……っ!3カ月でたったの12000マネーだぞ……使うのはよっぽど特別な時だけだっ!」

そう、使うのは特別な日だけ……今は耐えろ……耐えるんだっ!



オズマ、耐える……っ!必死に……だがっ! by立木ナレ



俺はふと――大月と沼崎が物品を販売している車輪付きの荷台の前に近づいていた。

沼崎「お、弭間君。なんか買ってくのかい!?」

俺「…………」

沼崎「ビール?おつまみ?あ、けど弭間君は確かまだ20歳未満だったからビールはノンアルコールだけどね!」

客商売の商人の如く、気合の入った声で俺に購入を進める沼崎を見て俺は小さな声で思わず……

俺「じゃあ……ノンアルコール一本……」

沼崎「はい、弭間君ノンアルコール一本お買い上げぇ~!2600マネーになりま~す!」

一本くらいは良いだろう……今日は初給料日……一週間は我慢したんだ……ノンアルコールの一本程度なら――

沼崎「で、つまみは?」

俺「は――つまみ?」

当たり前のように沼崎が、酒の摘みの注文を聞いてくるので、俺は思わず呆気にとられた様に聞き返していた。
そして沼崎は、含み笑いを浮かべながら――

沼崎「折角のビールなんだよ!けど、それだけって味気ないじゃない!?摘まもうよ何でも良いからさ!」

俺「…………」

沼崎に強く摘まみを勧められ、俺はふと目の前のパックに入った6本入りのチーズちくわに目を向ける。その値段――4200マネー! そしてその一方で安いのは柿ピーだった。こちらは小さな袋に入っている事もあり500マネーで買える。

心情的に買いたいのは当然チーズちくわの方だが……3カ月で12000マネーしか使えないとなるとここでビールと合わせて6800マネーの出費は重過ぎる!

俺「じゃ、そっちの柿ピーを――」

大月「ふふふ、下手だね弭間君」

柿ピーを頼もうとした矢先に、割り込む様に大月が微笑みを浮かべながら口を挟んでくる。

大月「へたっぴだよ……欲望の解放のさせ方が下手っ……!弭間君が本当に摘まみたいのはこっちだよね?」

俺「―――ッ!」

俺の深層心理などまるでお見通しと言わんばかりに大月は俺が本当に摘まみたかったパックの6本入りチーズちくわを手に取っていた。

大月「けど、それだと流石に値が張るからさ。こっちの安い柿ピーで我慢しようって事みたいだけどね――それじゃダメなんだよ弭間く~ん!せっかく冷えたビールでスカーっとしようって時にさ、そんなんじゃ却ってストレスが溜まっちゃうよ……食べれなかったチーズちくわが頭をチラついてさぁ、ちっともスッキリしないんだ、心の毒は残ったままなんだよぉ。贅沢ってのはね、小出しじゃダメだ……出すときはバッサリと出してさ、それでこそ次の節制の励みになるのさ」

大月の言葉を聞いていると――確かに、言われて見りゃそう言う風に考えられなくもない。何故だか大月の言っている言葉に妙な説得力を感じ――そして俺は……

俺「じゃ、チーズちくわ……」

沼崎「はい、チーズちくわお買い上げぇ~!」

俺「後、するめも一袋」

沼崎「はいはいっ!良いよ良いよっ!――となると、ビール一本じゃ全然足りないよねぇ~?」

気が付けば俺は、値段もロクに見ずに欲しいつまみ物を次々と手に取って買っていた……そしてその数分後には――

俺「美味いっ……!」

酒が美味いっ!ノンアルコールのビールが信じられねぇくらいに美味いっ!そんでもってつまみのチーズちくわとするめがとにかく合う!一本目のビールを飲み干しても更にもう一本のビールを開けてゴクゴクと喉に流しこむっ!

俺「最高だっ!やっぱりやる時は思いっきりやるのが一番だなぁぁぁ!!」

何時もの食事が貧しいだけに、ノンアルコールのビールも安っぽいつまみも最高に感じるっ!!染みる……染みる……っ!そしてビールが……

俺「くぁぁぁぁっ!!」


そして、オズマ……豪遊っ!!給料日初日に11000マネーの散財!! by立木ナレ


※ ※ ※


沼崎「あ~あ、馬鹿丸出しっすね」

大月「ふふ、馬鹿だからね。あんなもんさ、最近の若いもんなんて……食べ終わったら取りあえず奴はこう考えるんだろう……明日から節約……明日から節約だが…その考え方がダメ…!明日からじゃない、今日だけ頑張るんだ…!今日頑張った者…今日頑張り始めた者にのみ明日が来るんだよ…!」

沼崎「また一人確保って事ですね」

大月「ああ、ここにはこの嗜好品以外の快楽が無い……っ!だからこそその誘惑は凶悪……一度知ったらもう抗えない……結局のところちょっと一杯が大甘……ちょっと一杯がこの底辺の中の更に底辺……底なし沼の入口さ……」 
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