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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第20話:並行世界

現実世界に帰還するため、デジタル空間を通るタイキ達。

「これが次元の回廊か…やはり凄いものだな、ジェネラルとXローダー、D-3Xの力というのは。」

「そうそう!こんな状態になってからの私達の旅の苦労は何だったのって感じ!!」

大輔のD-3Xに入れられたウィザーモンとテイルモンの言葉に全員が反応する。

「普通はたまたまゾーン同士が接近して時空の壁が薄くなるのを狙って移動するしかないからなぁ」

「何処ニ時空ノ通リ道ガ現レルカ予測スルノハカナリ難シイシ…ドノゾーンニ辿リ着ケルカモ殆ド運次第ダ」

「へえ、それだと俺達が今までしていたゲート移動やコードクラウンを使ったゲート移動は滅茶苦茶便利だったんだな」

「私達はこれが当たり前だったから実感が沸かないけど、凄く不便だね」

大輔とヒカリは今までのゲート移動がどれだけ便利だったかを知る。

「ああ、ヒカリ。バグラ軍ではデジタル空間の研究が進んでいて比較的自由にゾーンを移動出来るらしいが…その技術やデジモンを吸収合体させる技術などの殆どは皇帝バグラモン自身によって齎されたものらしい…。荒野の賢人と謳われる程のその知識をどうやって得たのか…全く得体の知れないデジモンだよ。」

「けど俺ら全員ついて来ちまって良かったのかぁ?」

「行きたいって言っといて何だが、ジェネラルの護衛にしちゃ大所帯過ぎねえか?」

タイキのXローダーからのスターモンとシャウトモンの言葉にタイキは笑みを浮かべる。

「うん…確かにそうなんだけどさ、最初から一緒に戦ってきたみんなにも、一度俺達の世界を見て欲しかったんだ…!お前らがどう人間界を感じるかが、デジタルワールドの今を知る手掛かりになるような気がしてさ!さあ…もうすぐ出口だ!デジタル空間を抜けるぞっ!!」

デジタル空間を抜け、全員が着地…というか落下する。

「ここは…?」

「現実世界の…どこ…?」

「随分と発展しているね…」

大輔達が辺りを見回しながら呟く。

「「…と…東京だ…」」

「「「(東京!?)」」」

タイキとアカリの言葉に大輔達が振り返る。

「ちょ、タイキさん…それってどういう…」

「大輔ぇ!!」

「な、何だブイモ…ンーーーーっ!!?」

向こうを見遣れば勝手に出て来ているシャウトモン達の姿があった。

「(ウィザーモンまで出てる…!!)」

「ヒューッ!馬鹿でけえ建物だなぁ!!」

「あれ全部人間がおっ建てたのかあ!!?」

「寧ろこの辺り一帯が公園として造成された場所のようだ。凄まじい規模の治水工事だな…」

シャウトモン達に集中する視線に大輔達は危機感を抱き始める。

「「「まずい…!!」」」

大輔、ヒカリ、賢がでかい布を取り出してシャウトモン達にかぶせると抗議の声が聞こえようと無視して演技をした。

「はい、皆さん!この布の下には沢山の人形があります!!しかあし!!」

「ワン・ツー・スリー!!」

「はい!!」

賢が布を取っ払うと、シャウトモン達が消えていた。

【おおー!?】

「はい、俺達の手品を見てくれてありがとうございました。それじゃあさいならー!!」

「お兄ちゃん、手品またやってー!!」

「ごめんな!!この手品は1回しか使えないんだ!!」

D-3Xにシャウトモン達を入れた大輔達は即座に逃走。

「ウィザーモン…」

「すまないヒカリ、うっかりしていた…!」

「何だよいきなり…」

「人間界にはね、デジモンみたいな知的生命体は人間しかいないのよ。あんたらみたいな常識外れのモンスターがウロウロしてたらそりゃみんなビックリするわ!私やブイモンは猫や犬のフリ出来るからいいけどねー」

シャウトモンの愚痴にテイルモンが説明した。

「げげっ!不便だなそりゃ!」

「テイルモンは人間界のこと詳しいキュ!?」

「テイルモンは昔、人間界で過ごしたことがあるんだ」

「その時、今で言う私のジェネラルの人間の女の子と腐れ縁のブイモンのジェネラルの男の子とその他の仲間とデジタルワールドを冒険したこともあるわよ!!」

【ええ!!?】

「…言ってなかったの?」

「「「す、すみません…」」」

テイルモンがジト目で見遣ると、大輔とヒカリと賢が顔を逸らした。

「て…テイルモン!君は一体…!?」

「まあ、長生きしてると色々あんのよ!ついて来て!隠れやすい場所知ってるから」

こうしてテイルモンに案内された場所はヒカリとヒカリのテイルモンからすれば懐かしい場所である。

「ここは…懐かしいわ。私がヒカリのことを思い出した場所…」

「確かにここなら大丈夫そうだな。」

「にしても、随分と古くなったな……俺達…もしかして…」

「大輔君……」

「……」

「…?あんた達、どうしたのよ?」

表情が暗くなる大輔達にテイルモンが疑問符を浮かべている。

「なあ、そろそろ出してくれよ大輔~!俺達も人間の街を見て歩きてえよお~!!」

「おい……さっきのテイルモンの言葉を思い出せよ。この世界の人間にお前らが姿を見せると大パニックになるから」

「お願いだから我慢してよシャウトモン…」

「ええ~っ!!そんなのテレビで見んのと同じじゃねえか!!俺達に人間界のことをちゃんと見て触れて欲しかったんじゃないのかよ~!!」

「う~ん、そりゃそうなんだけど…」

「ふっふっふ、まっかせなさい♪こんなこともあろうかとちゃんと準備してたんだから!」

「したのは僕だけどな」

【?】

ウィザーモンが詠唱し、魔法陣を展開すると、テイルモンが人間の女性の姿になった。

「おおおおお!!?」

「じゃあん!どう?決まってるでしょ」

「うおおおお凄えーっ!!」

「格好良い~~!!」

「変身の魔術だ。彼女に無理矢理習わされた時は何かと思ったが…これは有意義だったな」

「何かヒカリちゃんに似てるな」

「当たり前でしょ?この姿のモデルはヒカリなんだから。服は私のオリジナルだけど…ブイモンとそっちの私は…」

「うおっ!?これ、大輔かあ!?」

「懐かしい…!!小さい頃のヒカリだわ…!!」

ブイモンとヒカリのテイルモンは小学2年生時代の大輔とヒカリをモデルにした姿と服装となった。

髪や目の色は当然ブイモン達の色になっている。

「ってことはあれか!?俺達もそいつで人間の姿になれるってことか!!?」

「モチ!!さあ、その辺歩いている人を参考にあんた達の格好を考えるわよお!」

【YEAH!!】

「生き生きしているなぁ」

「あまり難しいデザインは止めてくれよ」

「何かあっちのテイルモン、滅茶苦茶元気だな」

「ブイモン達ともっと早く会っていたらあんな感じだったのかな?」

大輔とヒカリが向こうとこっちのテイルモンの性格の違いに苦笑する。

双子でも育つ環境が違えばと言うことなのだろうか。

しばらくしてシャウトモン達の姿が決まった。

「おおーっ!!?」

「へえ、悪くないな!」

「キューッ!!」

「フンガ!」

「えへへ、昔の賢ちゃん!!」

皆、それぞれのお似合いの姿になる。

因みにワームモンは一緒に初めてデジタルワールドを旅した時の賢…つまり小学3年生時の姿となっていた。

「ちょおおっと待てコラーーーっ!!何で俺らだけアヒルなんだぁーーっ!!」

ダーーーーーックス!!!!!!

…何故かスターモンズはアヒル姿だった。

「あはははは!似合ってる!超似合ってるよ!!」

「似合いすぎて腹が…腹が痛い!!」

アカリやブイモン、シャウトモン達が腹を抱えて爆笑する。

「クェーッ!!納得いかねぇーっ!!!」

「さて…僕も何か適当な姿にならないとな。うん、彼の姿を借りるとしよう」

「ん?誰に…」

「では行こうか諸君」

大輔が聞く前にウィザーモンが姿を変えた。

その姿は何処からどう見てもオタクと呼べる姿であった。

「「「「ぶうううう!?」」」」

「「待て待てーい!!」」

大輔とブイモン、ヒカリとヒカリのテイルモンが吹き出し、アカリとテイルモンが止める。

「あんたそんな格好で私の隣を歩く気!?」

「そんな格好って…本人に失礼だろ」

「駄目駄目!折角だからうんとカッコ良くしようよ!!」

「生き生きしてるなぁ」

「ていうか、ウィザーモン。流石にそれはねえわ」

「僕もそう思う」

「もう少し見た目に拘ろうよ?」

「むう…」

大輔達にも駄目出しを喰らい、オタクから元の姿に戻り、アカリとテイルモンを見遣る。

「(女心ってよく分からない…)」

「あ!あのジャケットイケてない!?」

「悪くはないけど派手すぎてイメージがねえ…あいつなら似合いそうだけど」

アカリとテイルモンがウィザーモンの相応しい姿を探しまくっている。

「にしても…どうしてこんなに古いんだ?まるで未来に来ちまったような…ん?」

「大輔君、どうしたの?」

「あそこ、ヒカリちゃんの…」

指差した先はヒカリ達八神一家が暮らすマンションの一室にいる女性は…。

「あれは…何かヒカリに似てないか?」

デジモン故に視力がいいブイモンが呟く。

向こうではウィザーモンの人間の姿が決まり、人間の姿となったウィザーモンを見てテイルモンが誉めていたが…。

「何ですって?ちょっと見せてみなさい…何か持ってる…ウィザーモン。少し拡大出来ない?」

「分かった」

ウィザーモンが魔法で水晶なような物を作り出すと、女性のいる一室を映し出した。

「ヒカリさん…?」

賢が呟いたようにその女性はヒカリにそっくりであった。

ヒカリが成長すればこのような姿になるだろうと思えるくらいにそっくりである。

女性の持つ物を見たテイルモンは目を見開く。

「ヒカリのDー3…!!間違いない…あれは私のパートナーのヒカリよ!!」

久しぶりにパートナーの姿を見たからか、テイルモンの表情が綻ぶ。

しかし大輔達からすれば自分達の置かれている状況を知ってしまうことになる。

「「………」」

「まさか、ここは僕達からすれば未来…しかもこっちの大輔達とは違う歴史を歩んだ世界なのかも…」

「え?え??どういうこと?」

「未来とか違う歴史って何のことだ?」

「タイキさん、今…平成何年でしょうか?」

「え?今は201X年だろ?」

「つまり…約10年後…僕達は2002年の夏にデジタルワールドに来たんですよシャウトモン達のいる」

「2002年~!?10年以上も違うじゃない!?じゃあここはヒカリちゃん達からすれば未来ってこと~!?」

アカリが大輔達が約10年前の人間であることに驚愕している。

「ただの未来ならまだ受け入れようがあるんですけど、ここの大輔とヒカリさんのDー3はDー3Xに変化してるから…多分、この世界は僕達からすればパラレルワールドの未来…なんでしょうね…」

「………」

「…大輔、君……」

顔が真っ青なヒカリを見て、大輔は少し重い溜め息を吐いた。

「ヒカリちゃん………すいません。少し別行動にしませんか」

「でも、大輔達だけじゃ…」

心配するタイキ達だが…。

「ただの気分転換です。じゃあ、また後で…さっきの公園で合流しましょう!!」

「ああ、待ってくれ。お金だ…後、そちらのテイルモンには…」

ウィザーモンが差し出したのはテイルモンからすれば見慣れた黄金の輪。

「ホーリーリング!?」

「正確にはホーリーリングのコピーだ。こちらのテイルモンのホーリーリングをコピーした物、君ならもしかしたらある程度力を引き出せるかもしれない…」

「ありがとうウィザーモン。大事にするわ」

「…ところでこの金は?」

いきなり渡された金に大輔は困惑する。

「魔法で作った」

「…大丈夫なのか…?それ…」

「大丈夫…だと思う」

微妙な表情を浮かべる大輔とウィザーモン。

はっきり言って偽札を使おうとしてるようなもんである。

「じゃあ…」

大輔達並行世界組はタイキ達は別行動を取ることに。

「……………」

「にしても10年後か…10年でこれだけ変わるもんなのか」

「いくら僕達の世界とは違う歴史を歩んでるとしてもね…あ、あれは何だろう?見てくる」

「え?こんな時にか?」

「うん、折角10年後に来たんだ。見れるだけ見ておこうと思って。じゃあ、また後で」

それだけ言うと、賢はワームモンと共に電化製品店に向かうのであった。

「あいつタフになったなあ」

再会した時に比べて精神的にタフになった気がする。

「…羨ましいな…私、凄く不安で…大輔君達がいないと多分、不安に押し潰されそうになっていたかもしれない。」

帰れる可能性のある冒険だった最初や、確実に帰れる2回目の冒険とは違って帰れる可能性があるのかどうかさえ分からない。

今でも不安に押し潰されそうになるヒカリ。

「大輔君…私達…帰れるかな…?」

「…分からない。でも…」

「え?」

「諦めたら帰れる可能性さえ掴めないよヒカリちゃん」

「っ!!」

それを聞いたヒカリはハッとなる。

確かにそうだ。

もう駄目だと諦めて何もしなければ帰れる可能性すら掴めない。

「もし冒険が終わって帰れなくてもデジタルワールドを探し回って帰る方法を見つければいい。諦めるなよヒカリちゃん。絶対に帰れる、ていうか帰る」

「うん…そうだね…諦めない限りいつか帰れるよね…」

「うん、今は…10年後の未来を見てみようぜ?ある意味貴重だよなあ、未来世界の見学って、俺達タケルや太一さん達より得してね?」

「ぷっ!そうだね!!」

プラス方向で考えれば未来世界の見学など絶対出来ないため、そういう点では得しているだろう。

ここには自分達の知り合いがいないため、ヒカリは意を決した。

「ね、ねえ…大輔君…」

「ん?何?ヒカリちゃん…?」

顔を赤らめ、言い辛そうにしているヒカリに疑問符を浮かべている大輔。

ブイモンとテイルモンは気を利かせて距離を取った。

何度か口ごもりながらもようやくしっかりとした言葉を大輔に伝えた。

「大輔君さえ良ければなんだけど…私と…その……デ、デート…しよ…?」

「へ?」

一瞬何を言われたのか理解出来なかった大輔。

少し離れた場所でガッツポーズするブイモンとテイルモンであった。 
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