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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第19話:ゴチャゴチャ

瓜二つの2匹のテイルモンの対面。

その他諸々の原因で思考停止を起こしていた一同だが、話を聞くことにした大輔達。

取り敢えずウィザーモン達をバリスタモンMCの中に案内する大輔達。

「…大輔と賢が最初の冒険で一緒に戦った?」

「そうよ、私達の知る大輔達は太一達よりも先にブイモン達との出会いを済ませて、ヒカリを巻き込んで向こうの問題に対処してたのよ。そして私がヴァンデモンと一緒に向こうに行った時にヒカリと大輔達に会った。あの時のブイモンは今でもムカつくわ…何処までも人を小馬鹿にして…!!まあ、色々な違いはあってもこいつが行き倒れていた時に水を飲ませてやったのは変わらないみたいだけど」

「あの時は助かったよテイルモン。」

「はいはい、それでこいつは敵の攻撃から私達を庇って勝手に死んじゃうし…!残された私やヒカリの気持ちを考えなさいよっ!!」

「すまない、でも…君に会わなかったら…僕は意味の無い命を長らえただけ…僕は君を庇ったことに一片の後悔もない」

「…っ、全くあんたって奴は……」

「苦労するわねあんたも…私のとこのウィザーモンもそうだったわ…」

自分のために命を散らしたウィザーモン。

もっと素直になっていればウィザーモンに伝えられたことは沢山あったのに。

今は後悔ばかりだ。

「大丈夫かテイルモン?」

「ごめん、あんたに悪意がないのは分かってるけど、あいつと同じ顔で私の心配するのは止めて。鳥肌が立つから」

「そっちのブイモンとテイルモンは仲が悪いの?何で同じブイモンとテイルモンなのにこんなに仲が悪いんだ…?」

近くで話を聞いていた賢が尋ねるとウィザーモンが頷く。

「何せ顔を合わせる度にブイモンとテイルモンは殴り合いや罵倒の言い合いだったからなあ。デジタルワールドには様々な平行世界があるとも言われている。もしかしたら、君達にも僕達の知る大輔達のような可能性があったかもしれないな」

「平行世界ね…少し不安になってきたな…」

「賢?」

「いや、何でもないよ。取り敢えず、このテイルモンはヒカリさんのテイルモンとは同一人物のようだ。世界の違いで色々違いはあるようだけど」

「見た目はホーリーリングの有無で大輔達にも分かるしね」

賢とワームモンの言葉に一同は頷く。

「それにしても別世界の自分やヒカリと会えるとは思わなかったわ。おまけに大輔やマグナ…じゃなくて見るだけでムカつくクソ犬ブイモンまで」

「ちょ!?何でそこまで言われなきゃいけないんだよおっ!!?」

「俺やブイモン…じゃなくてマグナモンまでいたのか?」

「ええ、色々なことにカタがついた後…死んだこいつのデータをサルベージするために私とヒカリについて来てくれたのよ。大輔と…当時ブイモンだったあいつはね。」

「当時ブイモンだった…?」

「ええ…あいつはマグナモンに進化して、ウィザーモンがデジモンの形を保てるようになった時、実力と信念…今までの冒険の功績を認められて、ロイヤルナイツ入りを果たしたの。今ではロイヤルナイツの守りの要なんて大層な位置にいるわ」

「え?進化したのか?この世界には進化がないんじゃ…」

「…いつの間にか進化の概念がデジタルワールドでは消えていたのよ。私も何故か今では進化出来なくなったし、多分、私が知る限り…ブイモンがマグナモンに進化したのがデジモン最後の進化ね」

「俺達の世界のデジタルワールドにはありふれた力なんだけど…何とか向こうに行けるコードクラウンが見つかればなあ」

「あ、でも…コリドーゾーンのコードクラウンが手には入ったから私達も現実世界に帰れるよ」

ヒカリはコリドーゾーンのコードクラウンは手には入ったから、現実世界に帰り、電車などで帰ればいいと考えている。

ヒカリはタイキ達も自分達と同じように、この自分達の知るデジタルワールドとは違う歴史のデジタルワールドに飛ばされたのだと勘違いしていたのだ。

「お待たせしました。」

「あ、サンキュー。ショートモン」

ウィザーモンとテイルモンにケーキと紅茶を出すショートモンに礼を言う。

「にしても、こっちのブイモンは今どうしてるんだ?」

「知らないわよあんな腐れ蛙、あいつはロイヤルナイツで私はそこら辺にいるデジモンの1体に過ぎないもの。身分に違いがありすぎて昔みたいに会うことも出来ないわ。ふん!!まあ、ムカつくけど実力は高いあいつのことだからバグラ軍とどこかのゾーンで戦ってるんじゃない?噂によればミストゾーンに潜伏して三元士のリリスモンと戦っているらしいわよ」

「リリスモンと!?ブイモンは大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ、あいつの実力だけはそこそこ信頼出来るし、少なくてもロイヤルナイツに入れるくらいの実力があるんだから1対1ならリリスモンにだって簡単に負けないわよ」

「ブイモンのこと信じてるんだねテイルモン。」

「まあね、喧嘩ばかりだったけどあいつがいなかったら、ウィザーモンのデータ集めもまだ終わっていなかったかもしれないし」

「こっちの世界のブイモンかあ…会ってみたいなあ」

「あいつの身分が身分だしね。正直姿をチラッと見れればラッキーってとこじゃない?」

「いやあ、俺ってそこまで凄いのか~」

「お前じゃないぞ、こっちのお前だぞ」

鼻高々と言いたげなブイモンの表情を見て、大輔がツッコむ。

テイルモンはケーキを一口食べてぽややんとしている。

「やあ!待たせちゃって悪いね!疲れちゃってさっきまで休んでてさ…君達が俺に用があるって人?」

すまなそうに笑いながらこちらにアカリとシャウトモンと共に向かうタイキ。

「こちらこそ忙しい時に申し訳ない。それどころか食事まで出してもらって感謝している」

「ふ~ん…話題のジェネラルにしちゃ冴えない顔してるわねー」

タイキにしがみつきながら言うテイルモン。

「こら、失礼だぞテイルモン。」

「いやー行く先々で言われます。で、用って?」

「まずは自己紹介させて欲しい。僕はウィザーモン。有り体に言えば学者だ。デジタルワールドの在り方や人間界との関わり合いについて研究している。知っているだろうが、彼女はテイルモン。僕の助手というか、用心棒というか…縁あって一緒に旅をしている」

「よろしくね」

「僕があなたを訪ねた理由は、あなた達の持つXローダーかD-3Xとコードクラウンの力を貸してもらいたいからだ。工藤タイキ…僕達を人間界に連れて行ってもらえないだろうか?」

「人間界に!?」

取り敢えず外に出て、ウィザーモンの話を聞くことにした。

「僕は前々からこのデジタルワールドの有り様に疑問を抱いていた。君達人間から見てこのデジタルワールドはどう見える?物理法則は無視され、魔法や超能力が当たり前のように罷り通る…この世界の住人である僕達デジタルモンスターもそうだ。生物学的な発生論を無視しているばかりか、明らかに生物でも実体を持たない物までが意志を持ち、生まれながらにして言葉すら話す…そして…そんなことが自問出来る程に、我々は人間界の常識に通じているのだ。生まれてから一度もそんな世界に行ったことはないのにね…」

「いえあの…俺、生まれてから一度もそんなこと疑問に思ったことないんですけど」

「不覚ながら俺もだぜ…確かにおかしいことだらけだが、そりゃそういうもんだと割り切って生きてきたからな」

「俺は…何となくだけど、とてもよく出来たバーチャルリアリティのゲームの中に飛ばされちゃったんじゃないかと思ったな。作為的…って言うのかな?誰かがそんな風に作らないとこんなハチャメチャな世界にはならないと思うんだ。」

タイキの言葉に大輔達も顔を見合わせた。

自分達はデジタルワールドはこういう世界だと思っていたから違和感を感じていなかったが…。

「バーチャルリアリティのゲームか…的を射た発想だと思う。だがそうなると、そのゲームのプログラムを演算処理する計算機が必要になるが、何しろこの世界を構成する情報はあまりにも巨大かつ精巧だ。コードクラウンで行くことが出来るということは、人間界…君達の宇宙はデジタルワールドからは1つのゾーンだと認識されていると言うことなのだ。」

「ああ、確かに言われてみれば…」

今まで意識していなかったが、コードクラウンを使えば現実世界に帰れると言うことは、デジタルワールドからは一部のような扱いを受けているのだろう。

「寧ろデジタルワールドの方が君達の宇宙を包括する更に上位の構造である可能性が高い…仮に君達の宇宙全てを演算処理のリソースとして用いても処理出来る情報量ではないということだ。」

「な…何か言ってること難しくてよく分かんないんですけど!」

「まあ、流して流して、私もよく分かってないし、要点は後でちゃんと纏めてくれるわ。」

アカリが冷や汗を流してテイルモンに尋ねるが自分にもさっぱりとのこと。

「それでお前さん、人間界に行って何しようってんだ?」

「僕はこの世界がデジタルワールドと呼ばれていること自体にこの不思議のヒントがあると思っている。この世界が人間のイメージや想像力の影響を強く受けているのは間違いないのだ。いや寧ろ…有り様全てを定められていると言っても過言ではない。僕は是非一度、実際に人間界に行ってこのことを調査してみたい!このことは単に学術て意味だけでなく、この世界が多くのゾーンに分裂してしまった理由やそこから起こった戦乱を解決するヒントを得るチャンスなのだ!」

「…成る程ねえ…確かにそのうち一度様子を見に行こうと思ってたけど…」

「けどバグラ軍のことはどうすんだよ!人間界を調べる間、ジェネラルがいなくなるのはまずいんじゃねえのか?」

「でちたらあたちが残りましゅ!」

「コトネ!」

シャウトモンの尤もな発言に応えたのは最年少のコトネである。

「そんな…コトネちゃんこそ先に人間界に帰るべきよ!!」

「そうよコトネちゃん!!」

「姉しゃまを助け出すまであたちは帰りましぇん!!」

アカリとヒカリの言葉にコトネはネネを助け出すまで帰らないと拒否する。

「…確かにクロスハートのメンバーは充実してきている。ジェネラルが1人いればこの戦線を維持するくらいは何とかなると思うがな…」

「でもこの子1人残していくなんて…」

「ん!それじゃ俺も残るよ!」

コトネを心配するアカリにゼンジロウは自分も残ると言い出す。

「ゼンジロウ?」

「こいつに怪我でもさせたらそれこそネネさんに申し訳も立たないしな…タイキ達は久しぶりに羽を伸ばしてくりゃいいさ!…いでででででで!!」

頭に押し付けるようにしていたゼンジロウの手にコトネが噛み付き、ゼンジロウが悲鳴を上げる。

「おい、コトネちゃん。止めなさい」

「はいでしゅ、だいしゅけしゃん」

大輔に言われてすぐに噛みつくのを止めるコトネ。

そして大輔が膝の上をポンポンと叩くとちょこんと納まる。

「(くっ…何て可愛げのない……)」

「(コトネちゃん、大輔に懐いちゃってるなあ…)」

ゼンジロウと賢が大輔を見遣りながら胸中で呟く。

「でも、本当にいいのか?」

「はいでしゅ、だいしゅけしゃんとヒカリしゃんはデートでもして来て下しゃい」

「デッ…!?」

「は…はは…(ませてるなあ…)」

コトネの爆弾発言にヒカリは肩を震わせ、大輔は苦笑した。

「どうするよタイキ!行くってんなら俺もついて行くぜ?お前さんの故郷ってのを一度見てみたいしな!」

「(確かに…俺達はこの世界について知らなすぎる。この世界がいくつものゾーンに分かれた理由や皇帝バグラモンがどうしてこんな戦争を起こしたのかが分かれば…ただ戦って勝つ以外の戦争の終わらせ方も見つかるんじゃないのか…!?)…うん…デジタルワールドの戦乱を終わらせるヒントが人間界にあるかもなんて考えてなかったな…一度人間界に帰ってみるか!」

「じゃあ、明日の朝に一度帰りましょうか」

賢がそう言うと全員が頷き、現実世界に一旦帰還することにしたのである。

「ところで大輔、その布袋の中身は一体?」

「ああ、これか?デジタル空間で手に入れたデジメンタルだよ。もうバラバラで使い物にならないけど」

「あら?これ、奇跡のデジメンタルじゃない」

テイルモンが懐かしそうにデジメンタルの破片を摘まみながら呟く。

「奇跡のデジメンタル…知ってんのか?」

「当然よ、私からしてもかなり縁のあるアイテムだもの…何処で手に入れたのよこれ?」

「デジタル空間の破片にあったんだよ。ボロボロだったけどな」

「凄いな…こんな破片だと言うのに凄まじいエネルギーを感じる…これなら修理出来るかもしれない」

「本当か!?」

ウィザーモンの言葉に表情が輝く大輔。

「ああ、だが時間をくれないか?少し時間がかかりそうだ」

「頼むよ」

奇跡のデジメンタルの修理をウィザーモンに任せて、明日に備える大輔達であった。 
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