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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第18話:数ヶ月間の変化

今から数ヶ月前、ミストゾーンの一角にて、リリスモンと黄金の鎧を纏ったデジモンが激闘を繰り広げていた。

「マグナムキック!!」

「くうっ!!」

強烈な蹴りを受け、魔法盾を粉砕されたリリスモンは岩盤へと勢いよく叩き付けられた。

「はあっ…はあっ…最弱とは言え腐っても三元士か…まさか俺が片腕を失うことになるなんてな…!!」

マグナモンには左腕がなかった。

戦いの最中に毒爪を受けたことで腐食し始めた腕を即座に斬り落としたことで命を繋いだのだ。

「くっ、ロイヤルナイツ・マグナモン…ここまでやるなんて…」

相性が最悪のマグナモンの熾烈な攻撃を受けたことでリリスモンもボロボロであった。

片腕を失ったことを除けば、マグナモンのダメージはリリスモンより小さい。

おまけに毒爪の脅威を再認識したことでマグナモンには隙が無くなっている。

共にいた配下はマグナモンによって殲滅されたことで完全にリリスモンは劣勢であった。

「リリスモン…三元士のお前もここでお終いだ!!」

「終わるのは…あんたよ!!エンプレス・エンブレイズ!!」

異形の腕をマグナモンに繰り出すリリスモン。

マグナモンは目を見開くと、周囲の空間を急速圧縮・瞬間膨張させた。

「シャイニングゴールドソーラーストーム!!!」

レーザー光は異形の腕を容易く粉砕し、リリスモンに直撃した。

「やったか…」

煙が晴れると、ボロボロとなったリリスモンが傷だらけとなった自分の体を見つめて震えていた。

「か、か…体に…私の体に…よくも…よくも傷をおおおおおおっ!!!!」

スイーツゾーンの時のように爆発したリリスモン。

しかも今回は全身に凄まじいダメージを受けたこともあり、爆発の規模もまた凄まじかった。

「なっ!?ぐ…うわあああああ!!!」

マグナモンは歪みに吸い込まれ、デジタル空間に放り出されてしまうのであった。
 
そして数ヶ月後の現在。

アカリはバリスタモンMCの中で、医薬品と食料の遣り繰りをしていた。

「(レインゾーンでのダークナイトモンとの戦いから数ヶ月…ダーク・クリスタルパレスに捕らわれていた多くのデジモン達を解放したことをきっかけに、私達のクロスハートとキリハ君のブルーフレアは大きくその勢力を拡大しました。)」

「ほーい、みんなー。ごっはーん!ご飯の時間だよ~♪」

外ではリリモンがお玉でフライパンを叩いて食事の時間を伝え、サンフラウモン達が全員に料理を運んでいく。

「(今や小さな伝説などではなく…バグラ軍に対抗出来る現実的な希望として、デジタルワールド全体から期待を寄せられつつあります。)」

「よう来て下されたジェネラル・タイキ殿、大輔殿…!!このコリドーゾーンのコードクラウンをお預けしましょう…微力ながら、我々もお力添えさせて下され!」

そしてクロスハートのNo.1であるタイキとNo.2の大輔はゴツモンの長老からコードクラウンを受け取っていた。

「ありがとう、ゴツモンの長老様!」

「期待に応えられるように頑張るぜ!」

「(けれど…何とか、デジタル空間に追い出すことに成功したミレニアモンは行方不明で…巻き込まれたデジモン達を助け出す目処は全く立たず…取り逃がしてしまったダークナイトモンも何か悪いことを企んでいないはずがなく…何よりシェイドモンと融合して連れ去られてしまったネネさんのことも心配で…タイキの放っとけないの種は増える一方です。そうそう!あの戦いの後、ようやく助け出されたネネさんの妹…コトネちゃんの正体には驚きました…)」

それはミレニアモンをデジタル空間に押し込み、少し落ち着いた時である。

『コトネ…!しっかりしてコトネ!』

『んみゅうううう…ぽえ?』

『コトネッ!僕だよ!分かる!』

スパロウモンがコトネに自分のことが分かるのかどうかを尋ねる。

『あー、スパロウモンしゃん。もう朝でちか?オッスオッス。あり?ここどこでちか?姉しゃまは?』

『あっ…コ…コトネ!ネネはね…』

スパロウモンがネネのことをコトネに伝えようとしたのだが、大輔達に気付いた。

『おやおや、何だか知らない顔が大勢いましゅねえ!オッスオッス!』

『コトネ…びっくりさせちゃうかもしれないけど』

『あいや!ここはデジタルワールド!明日隕石が降ってきても盆と正月が一緒に来てももうあたちは驚きましぇん!始めまちて皆しゃん!!あたちの名前は天野コトネ!!』

『何そのポーズ?』

謎のポーズを取りながら自己紹介したコトネに思わず大輔はツッコんでしまう。

『混迷のデジタルワールドに迷い込んだ花も恥じらう17歳!!』

『嘘を吐くなよ、嘘を。ネネさんの歳を越えてるだろ』

それを聞いた大輔が思わずツッコむ。

『…マイナス120ヶ月!!』

『マイナス120ヶ月…マイナス10年…つまり7歳ね』

『はいここ笑う所っ!!何でちか、アメリカンジョークの通じない人達でちねー!!…で?スパロウモンしゃん、姉しゃまは!?姉しゃまはどこでちか!?』

戸惑う全員から目を逸らしてスパロウモンに向き直るコトネだが、ネネの身に起こった残酷な真実を聞くことになるのであった。

「(どうも無防備な状態で大量のクロスコードを吸われたのが逆に良かったらしく、体への負担が減って数年ぶりに目覚めることが出来たのです!執念と言うか…結局ネネさんは最初に願っていた彼女の目的をほぼ果たしたことになります。けれどその結末はコトネちゃんにとってはとても辛いことで…普段は気丈に振る舞ってネネさんを助けるため、私達に強力してくれていますが、時々私達に見えないところで落ち込んでいる時もあるみたいです。でも…)」

出された料理に手をつけず、ただ見つめているコトネ。

「コトネ…食欲ない…?」

食事に手をつけないコトネにスパロウモンが心配そうにしている。

そんな大輔はスパロウモンを少し離し、コトネの頭に手を置いた。

「だいしゅけしゃ…」

「………」←とても面白い顔をしてます。

「…ぶふっ!?だいしゅけしゃん、変な顔!!」

吹き出し、笑い出すコトネに大輔は優しく頭を撫でてやる。

「笑ったなコトネちゃん。ネネさんのことがあったから仕方ないけど…ネネさんを助けた時、ネネさんの傷付いた心の傷の一番の薬はコトネちゃんの笑顔なんだから、コトネちゃんは笑顔でいないと。大丈夫、ネネさんは必ず助け出すし、それまでの間は俺がコトネちゃんを守る。ネネさんとの約束だからな、ほらコトネちゃん。ネネさんが好きなクレープをショートモン達に作ってもらったんだ。一緒に食べよう」

「……はいでち!!」

「チョコと苺、どっちがいい?」

「苺がいいでち!!」

「ほい。」

コトネに苺クレープを手渡し、一緒に食べる。

それを見たヒカリはミルクティーとコーヒーを淹れたカップを持って行く。

数ヶ月の間に、ヒカリの髪は伸びており、そして使っていた髪留めはボロボロになってしまったので無くなっている。

髪留めがなくなっているため、小学2年生時の髪型に近くなっていた。

「大輔君、コトネちゃん」

「ん?あ、ヒカリちゃん」

「ヒカリしゃん?」

ヒカリの声にクレープを頬張っていた大輔とコトネが振り返る。

「コーヒーとミルクティー淹れてきたの。飲んで」

「ありがとうヒカリちゃん」

「ありがとうでち、ヒカリしゃん」

ヒカリからそれぞれコーヒーとミルクティーを貰い、一口啜る。

うん、美味い。

ヒカリも自身のクレープとミルクティーをテーブルに置いて一緒に食べ始めた。

「(大輔君とヒカリちゃんがコトネちゃんの面倒を見てくれているから、コトネちゃんは元気にやっています。やっぱり弟と妹だからか、コトネちゃんの気持ちが分かるようです。特に大輔君はネネさんとコトネちゃんと同じ年の差のお姉さんがいるから他人事と思えないらしいです。以前、大輔君がコトネちゃんの面倒を見ていた時に、大輔君のお姉さんはどんな人なのかを聞いてみたんですが…)」

その時、アカリに尋ねられた大輔は何故か遠い目をしながら語った。

『正直言って姉貴にネネさんとアカリさんの爪の垢煎じて飲ませてやりたいって感じですかね?料理をすれば空間を歪ませる暗黒物質を生成し、家を火事にしかけた回数は数知れず。はっきり言って俺は母さんにコトネちゃんくらいの時から家事とか習い始めましたね。他にも洗濯をすれば洗濯物を滅茶苦茶にし、掃除をすれば何故かする前より汚れていると言う始末。家事が壊滅的な癖して何故か偉そうだし、自分の部屋の後片付けまで俺に押し付けて…何であんなに偉そうなんだよ…あいつは何様だ?姉様か?あ、な~んか胃が痛くなってきた…』

『そう言えば、前にも大量の暗黒物質を作ってたよな大輔の姉ちゃん。この前なんかどんな化学反応を起こしたのか鍋の底に穴が開いて、湯気のせいでゴム手袋が溶けて無くな…』

『あ、それ以上は言わなくて良いわブイモン』

腹を押さえて膝をついた大輔。

後に大輔に謝罪するヒカリ(以前の大輔に対する発言に対しての物だと思われる)と、冷や汗を流しながら大輔を見つめるタイキ達の姿があったと言う。

「(大輔君とヒカリちゃんの関係は時間経過と共に親密になっていきます。ヒカリちゃんはあれ以来髪を伸ばしています。何でも“アカリさんみたいに支えられる人になりたいから、まずは形から入ってアカリさんくらいに髪を伸ばす”って…いやー、照れるな~。あれ以来ヒカリちゃんが大輔君に好意を抱いているのは確実なんですが、今想いを伝えても、ネネさんを助けるために必死に頑張っている大輔君の迷惑になるかもしれないと言っていました。)」

それを聞いたアカリとリリモン達は思わず呆れかえってしまった。

寧ろ迷惑どころか、喜んでヒカリを受け入れてくれるだろうに。

「(そんなことあるはずないのにねえ…正直大輔君が可哀想だわ全くもう、ヒカリちゃんもさっさと素直に告白して大輔君と付き合っちゃえばいいのにと何度思ったか…)」←自分のこと棚に上げる奴。

一方、外ではウィザーモンとテイルモンはクロスハートの面子を見渡していた。

「噂には聞いていたが…やはり凄いな。長いことデジタルワールドを旅してきたが…これだけの面子が揃っているのは初めてだ!」

「そして妙に食料事情が充実している…」

「見ろ!サンドゾーンの女神の戦士、ベルゼブモンだ!三元士の1人、リリスモンを仇として狙っているという」

茸クリームスパゲティを食べているベルゼブモン。

「あれはコロシアムゾーンの若きチャンピオン、アグニモンだ…まさか彼がクロスハートに参加しているとはな…」

「隣の無茶苦茶食べてるのは誰?」

茸炊き込みご飯、しめじ汁、茸コロッケ、茸サラダ、茸春巻きを食べているアグニモン。

そして隣で大盛茸カレーを無茶苦茶食べているフェアリモン。

「あそこにいるのはスタディゾーンの伝説の総番、バンチョーレオモンじゃないか!?彼が歴史の表舞台に姿を現すなど何百年ぶりだろう…?」

茸ラーメンと茸餃子を食べているバンチョーレオモン。

その隣ではペックモンが茶を啜っている。

「打倒、バグラ軍を掲げるに相応しい壮々たるメンバーだな」

「にしちゃ、何か威厳ってもんが…みんな何か食べてるし」

「現在ファクトリーゾーンに侵攻中の蒼沼キリハ率いるチーム・ブルーフレアも同程度の戦力を保有しているらしい…この二大勢力がどう連携を取ってバグラ軍と戦っていくかがこのデジタルワールドの戦国時代の行く末を決めると言われているが…今のところ、この2人のジェネラルに表立った協力の意志はないらしい…」

「感慨深げに語ってるのは良いけどさ。私達、その工藤タイキに用があってこんな田舎のゾーンにやってきたんでしょ?」

「あぁ、そうだったな。忙しい身の上だろうが…会ってもらえるといいが。」

「それに少し気になることがあるわ。クロスハートのNo.2とその補佐がね」

「本宮大輔と八神ヒカリ…君にとって縁深い名前だからな」

「…ええ、あの子達も今では大人になってるはずだし……っ!!この気配は…」

何かを感じたテイルモンはそちらに向かって駆け出す。

「テイルモン!?」

ウィザーモンが目を見開いて呼ぶが、構わずそちらに向かう。

「この気配は…あいつだわ!!」

ある物を探していた時、自分と共にいてくれた存在の気配。

何度も喧嘩することがあったが、ウィザーモンといられるようになるまでは嫌味混じりながら常に傍にいてくれた存在の気配。

「この気配は…あいつの…あいつもクロスハートにいたのね!!マグナモ…」

黄金の鎧を纏ったデジモンの姿が脳裏を過ぎり、テイルモンが近くまで近付くと思わず叫んだ。

コトネ達と共に食べていた大輔達が振り返り、ヒカリのテイルモンは食べていたクレープを落とし、ブイモンは目を見開いた。

「「わ…たし…?」」

「テイルモンが…2人ーーーっ!!?」

2匹のテイルモンが顔を見合わせ、呆然となりながら言う。

ブイモンは異常事態に思わず叫んだ。

「テイルモン、どうしたと言うんだ?…君は!?」

「ウィザーモン!?」

テイルモンを追いかけてきたウィザーモンを見たヒカリのテイルモンは目を見開く。

ウィザーモンもウィザーモンで瓜二つのテイルモン2匹を見て目を見開くのであった。 
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