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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第14話:激突

ネネから全ての話を聞いた大輔は思わず膝をついていた。

「…ネネさん、ごめんなさい…ネネさんの気持ちも考えないで、俺達…色々と酷いこと言っちゃいましたよね?」

「何を謝っているの…今まで多くのデジモン達を騙し…傷つけて、悪女魔女と言われるだけのことは充分にして来たわ。そのことに何一つ責任を取ろうともせず、素知らぬ顔で消えようとしている。恨まれる理由はあっても同情される理由なんてないわ…」

「でも…っ!!ネネさんだけが悪いんじゃねえよ…俺にもネネさん達と同じくらい年が離れた姉貴がいる…ネネさんと違って家事洗濯は駄目駄目で、理不尽で部屋の片付けすら俺に押し付けて、文句ばかりで嫁の貰い手がいるのかなって俺に心配させるくらいで、ネネさんの爪の垢煎じて飲ませてやりたいくらいの超絶駄姉ですけど…」

「(ひ、酷い言われよう…)」

「でも、そんな駄姉でも…もし姉貴がそんなことになったら…俺もネネさんと同じことしてた。だって…どんなにムカついても姉貴は…俺のたった1人の姉ちゃんだから…!!」

涙を流しながら言う大輔に、ネネは立ち上がって上着を脱いで、ハンカチを取り出した。

「優しいのね大輔君。口は悪くてもきっと大輔君のお姉さんも大輔君のことを大事にしていると思うわ。だってこんなに優しい子なんだもの。きっとお姉さんも素直になれてないだけよ…。再会したら素直にお姉ちゃんって言ってみなさい?きっと喜んでもらえるわ」

上着を大輔に着せて、ハンカチで涙と額の血を拭く。

「痛っ…ネネさん、上着…」

「冷えたでしょう?さっき少し雨にも濡れたしね…」

「でもそれはネネさんだって…」

「いいの…心も体も全部取り引きの材料にしてしまって、あなたにしてあげられることがもうこれくらいしかないのよ…その上で厚かましくも…あなたの優しさに甘えたい…!!コトネと…スパロウモン達のことをお願い…!!あの子達は誰かに私の罪を擦り付けられるかもしれない…!!それにスパロウモンには…私に懐いてくれるのをいいことに嘘ばかり教えてしまったわ…!あの子がこれ以上道を踏み外さないように導いてあげて欲しいの…!!」

「………分かったよネネさん…しばらくの間、スパロウモンもコトネちゃんも俺が守る…」

「ありがとう…大輔君…」

「そして!!今は無理でもいつかネネさんを助ける!!」

「え?」

「ネネさんがいなくなったらスパロウモンやコトネちゃん達は悲しむ。だから何が何でも絶対に助け出す。」

大輔はスパロウモン達を守り、ネネを救うと言い出す。

「ネネさんは全てが終わったら、自分のやったことにケリをつけるんだ!それが辛いなら、俺だって力を貸すから!!」

「だ…大輔君…でもっ…」

「大丈夫、クロス・コードが無くてもデジメンタルとかは使えるだろうし、デジクロスだってまだ賢やヒカリちゃん達もいる。まだまだ戦えるさ!!俺は…ネネさんが罪の意識に囚われたままなのが嫌なんだ!!だから、絶対に助ける!!何が何でも!!」

「ありがとう…大輔君。本当に優しい子…最後にあなたと話せて良かった…。私に希望をくれて…ありがとう」

「あー…少年少女達。」

声に気付いて大輔とネネが見上げると、ダークナイトモンとその腹心…ダスクモンがこちらを見下ろしていた。

「盛り上がっているところ、空気を読まずに悪いのだが…そろそろいいかね?儀式の準備が整ったのだ。」

ダスクモンが腕にかけていた手枷をネネに差し出す。

「…これは?」

「見ての通り手枷だ。着けてもらいたい。君の尊い覚悟を疑うわけではないが…こと自らの命が懸かっている時、人は最後まで何をするか自分でも分からないものだ。僅かな気の迷いが儀式に致命的な影響を与えるかもしれない…君と私…双方にとっての保険と思ってほしい…嫌かね?」

「…いいわ」

「ネネさん…っ…」

ネネは手枷を着け、鎖に繋がれた。

「さて…今ここに、全ての準備が整い…我が積年の願いが叶う時が…いや、全てが始まる時が来たのだ…!!」

ダークナイトモンが指を鳴らすと、コトネが入った水晶が砕け散り、そしてゆっくりとダークナイトモンの隣の椅子に降りた。

「今まで…本当にありがとうネネ…!君の働きによって儚い夢に過ぎなかった我が野望がこうして現実のものとなるのだ…!凍てついた我が魂にも…今は感動を禁じ得ないよ…」

ダークナイトモンは自身の胸に手を翳しながら言う。

「けっ、薄ら寒い芝居しやがって…」

吐き捨てる大輔にダークナイトモンは溜め息を吐いた。

「やれやれ…君もノリが悪いな。ああ…そうだ。礼と言ってはなんだが、1つ面白い小話をしてあげよう」

「小話…?」

ダークナイトモンは小話と言う名の残酷な真実を言う。

「君の妹…コトネが不完全なクロス・コードを持っていたことによって体に負担がかかり、眠りについたという話…あれは実は嘘だ」

「…何?」

「……え…?」

ダークナイトモンの言葉に一瞬思考が止まってしまった大輔とネネ。

「この子は…寧ろ君や大輔君よりも強力なクロス・コードを体に宿している。彼女の体に負担をかけているのは、本当はその強力すぎる力だ。」

「…ど…どうい…う…こと…?」

「まさか…お前が意のままに操るジェネラルってのは…コトネ…ちゃん…じゃねえだろうな…?」

ダークナイトモンの言葉に嫌な予感を覚え始めた2人の声は震えている。

そしてダークナイトモンは大輔の言葉に満足そうに頷いた。

「うむ、正解だ。流石に鋭いな大輔君!我がジェネラルの候補として私が真に求めていたのはネネではなく、彼女…コトネと言うことだよ」

「じゃあ…てめえがネネさんに手枷を着けたのはネネさんが逃げないようにするだけじゃなくて…ネネさんの目の前でお前の操り人形にされるコトネちゃんの姿を見せるためか…っ!!」

「素晴らしい洞察力だ。正にその通りさ…良かったねネネ。君は命も心も失うことはないんだ。生きたまえ、妹のいない世界で…犯した罪と生み出した憎しみの全てを背負ってね」

それを聞いたネネの表情は呆然とした物から徐々に絶望の表情に変わる。

「てめえ…っ!!」

奥歯を噛み砕かんばかりにダークナイトモンを睨み据える大輔。

しかしダークナイトモンは口元を押さえながら肩を震わせていた。

「クッ…!ブフッ…グフッフフフフフ…グワァーーーッはっはっはっはっはっは!!ヒィーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!!!ヒァーーッハッハッハッハッハッハァ!!!!」

「てめえええええ!!」

ネネへの嘲笑にとうとう我慢の限界を超えた大輔が叫ぶが、ダークナイトモンの嘲笑は止まらない。

「本来気高く、慈悲深い君が自らを悪女と任じ…取り返しのつかない罪に手を染め、絶望の淵に堕ちてゆく様は……正直、そそったよ…」

ダークナイトモンはネネの元に歩み寄る。

そして指でネネの顔を上げさせ、ダークナイトモンは醜悪な笑みを浮かべる。

「ああ…!!何と哀れな姫君なのだろう君は…!!ほおら…今正に最後の罪が君の足元から生まれようとしているよ?見たまえ!」

ネネの影に異変が起き、大輔とネネの視線が自然にそちらに向かう。

「なっ…!?」

「な、何だあの化け物は!?」

ネネの影から伸びているのは、複数の眼を持った怪物である。

「おやおや、化け物とは酷いな大輔君。あれも歴としたデジモンだよ。シェイドモンと言ってね、人の影に潜み、宿主の絶望を喰らって羽化する魔界のデジモンだよ…」

「あんなのが…デジモンだってのか…?」

「私の計画の最後の要となる存在だ…かねてより君の影の中に奴の幼生を植え付けておいたのだ…ここまで見事に育つとは!これが3人のクロス・コードを吸収し、依代たるジェネラルに憑依することによって、その者の持つXローダーをダークネスローダーへと変えるのだ…!!さあっ…シェイドモン!!彼らのクロス・コードを喰らえっ!!」

ダークナイトモンが叫んだ瞬間、魔法陣が浮かんだ。

「うあっ!?こ、この模様が…クロス・コード!?」

「きゃあっ!あっ!!あああああ!!」

大輔、ネネ、コトネの体に紋様が浮かび上がり、全身に激痛が走る。

「がああああ!!?畜生…ダーク…ナイトモン…!!」

「フハハハハハ!!化かし合いは私の勝ちだなネネ!!本宮大輔君、私を警戒しすぎてD-3Xとデジモンまで置いてきたのが仇となったな!!見よや兄上っ!!私はっ…私は今こそあなたを越えっ…」

次の瞬間、城が揺れ、大輔達のクロス・コードの吸収が止まった。

「ぐっ、何だ!?」

大輔はバランスを崩して倒れる。

「この揺れは…地震などではないな…」

「だっ…ダークナイトモン様っ!!報告します!!城の南東に中規模の戦闘型デジモンの部隊が展開中!!強力な長距離砲でこの城に狙撃をっ…!!」

来たのだ、彼らが…大輔達以外のデジタルワールドの希望達が…。

外道騎士・ダークナイトモンとの戦いが始まろうとしている。 
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