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許されない罪、救われる心

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104部分:第十話 襲撃の後でその三


第十話 襲撃の後でその三

 投げ付けた彼はだ。そのグラウンドに転がっているマイクを見下ろしながらだ。四人に対して言い捨てるのだった。
「拾えよ」
「そうよ、拾いなさいよ」
「それで言いなさいよ」
「自分達でな」 
 また周りから冷たい声で告げられる。何十人に囲まれてだ。そのうえで言わされていた。
 四人はそのマイクを受けてだ。自分達が何をしてきたか細かく言わされた。それは校内にあまねく伝わった。しかしである。
 岩清水はここでまた、だった。携帯で四人がやってきたことの映像を流す。そのうえで皆に対して訴えるのだった。
「皆もこれを見て」
「ああ、これだよな」
「これよね」
「いつも見てるよ」
 それぞれの携帯にもうその映像はあった。岩清水はその映像を彼等に見るように勧めたのである。そうしてそのうえで、だった。
「こんなことをしてきたんだよね」
「本当に許せないよな」
「こんな連中」
「何を言っても何をしてもね」
 こう話してであった。四人を責め続ける。こうしたことが続いていた。
 そんな中でだ。葉月は学校の屋上で弥生と話していた。それは如月達についてだった。
「最近だけれど」
「如月達よね」
「もうどうしようもないんじゃないかな」
 こう弥生に話すのだった。
「あれじゃあね」
「どうしようもないって?」
「責められ過ぎて。気力とかもうないんじゃないかな」
「やり過ぎよね」
 如月は言った。
「やっぱり」
「そう思うよね、やっぱり」
「ええ、確かに四人共許されないことをしてきたけれど」
 弥生はまずこう前提して話した。
「けれど。もうあれは」
「糾弾にしても酷過ぎるよ。もう止めた方がいい」
 葉月はこう話す。
「幾ら何でも限度があるよ」
「そうよね、もうね」
「何か家までも来ているらしいけれど」
 葉月は弥生にこのことも話した。
「それで家の中で暴れ回ったらしいよ」
「そんなことまでしていたの」
「そうみたいだよ。これって」
「家族の人にだって迷惑がかかるし」
 困った顔で話す彼等だった。
「もう。そんなことまでしたら」
「絶対にいけないことだよ。どうする?」
「どうするって」
「正直僕はまだ許せないよ」
 葉月は深刻な顔で弥生に述べた。フェンスに背をもたれかけさせていたがそこから身体を起こしてだ。そのうえで話すのだった。
「それでも。君はさ」
「ええ、幼稚園の頃からよ」
 弥生はこうその葉月に答えた。
「如月のこと知ってるわ」
「親友だったよね」
「ええ」
「今でも許せない?」
 こう彼女に問う。
「まだ。許せない?」
「それは」
「確かに四人共許されないことをしたよ」
 それはその通りだった。
「けれどね」
「けれど、なのね」
「救いはあるべきじゃないかな」
 葉月は歩きながらこんなことを話した。彼の話を聞く弥生はずっとフェンスに背をもたれかけさせている。そのフェンスの向こうにもう一重フェンスがある。
 
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