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永遠の謎

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90部分:第六話 森のささやきその十三


第六話 森のささやきその十三

「それに越したことはない」
「わかりました。それでは」
「陛下がそこまで仰るのなら」
 周りの者も王の決意を知ってだ。遂に頷くのだった。そのうえでだ。彼等はまた王に話すのだった。
「赤十字については」
「支持を」
「私から言おう。いいな」
「はい」
「ではその様に」
「夢は現実のものになる」
 王は言い切った。
「必ずだ」
「夢がですか」
「現実に」
「そうした意味でもだ」
 熱い言葉もだ。そのままだった。
「彼は助けたい」
「では赤十字に対してはすぐに」
「支持をですね」
「その考えが広まることを願う」
 実際にそうだとも話す王だった。
「戦いで傷つく者は少ないに限る」
 モーツァルトを聴きながらだ。王は話す。
「戦いは続くだろうがな」
「続くとは」
「それはどういうことでしょうか」
「オーストリアとプロイセンの戦いは避けられない」
 王はそれはもうわかっていた。しかし見ているものはそれだけではないのだ。それからのこともだ。みていたのである。
「それからだ」
「二国の戦争だけではないのですか」
「まだありますか」
「そうだ。次はだ」
 両国の戦争の後に起こる戦争は何か。王はまた話した。
「プロイセンと」
「またあの国ですか」
「プロイセンですか」
「プロイセンの目的は小ドイツ主義によるドイツ帝国の建国だ」
 まさにそれだというのである。
「その為にまずオーストリアを排除し」
「戦争に勝ちですか」
「そのうえで、ですか」
「次の相手と戦う」
 王は今は遠くを見ていた。そのうえでの言葉であった。
「その次の相手はだ」
「どの国ですか、それは」
「考えられるのは」
 周りの者達も欧州の情勢は把握している。それならばだ。プロイセンと戦う可能性のある国が何処か。考えることができたのだ。
 そしてだ。彼等はその国を挙げていくのだった。
「ロシアでしょうか」
「オランダ」
「イギリス」
 そうした国が挙げられていく。
「イギリスはさし当たっては動きはありませんね」
「オランダはプロイセンには対しない」
 それだけの力がないということでもあった。イギリスについて植民地統治で多忙であった。この時代のイギリスは欧州で、世界で随一の国であり多くの植民地を持っていたのだ。
「ではロシアか」
「若しくは」
「ロシアはない」
 王が考える彼等にここで言ってみせた。
「プロイセンはあの国とは絶対に揉めようとはしない」
「あまりにも強いからですか」
「あの国は」
「あの国は熊だ」
 この時代でもだ。ロシアは熊に例えられていた。
「まともに戦って勝てる相手ではない」
「確かに。あまりにも強大です」
「あのナポレオンですら勝てませんでした」
「ではプロイセンといえど」
「ビスマルク卿は賢明な人物だ」
 このことは間違いなかった。誰が見てもだ。
 
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