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永遠の謎

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8部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその二


第一話 冬の嵐は過ぎ去りその二

「だがな」
「だが、か」
「そこでも言うのだな」
「どうもそれが過ぎるのだ」
「度がか」
「そうなのか」
「そうだ。どうもな」
 難しい顔で話す。
「それがよからぬ方に向かわなければいいのだが」
「しかしお人柄はいいのだろう?」
「それは」
「素直ではある」
 それはあるというのだ。
「そして一途で真面目な方だ」
「ではいいではないか」
「それではだ」
「充分ではないか」
「充分な枠で収まっていればいいのだが」
 ローゼは不安といった面持ちで首を捻って述べる。
「本当にな」
「大丈夫、とはな」
「少し言えないか」
 友人達もここでこう言うのだった。
「ヴィテルスバッハ家の方はな」
「こう言っては何だがな」
 彼等も知っていた。だからこその言葉だった。
 ヴィテルスバッハ家、そして一族のことをだ。だから言うのであった。
「先王陛下もな」
「御心はよいのだが」
「それでもな」
 こうそれぞれ言うのであった。
「ローラ=モンテスのことはだ」
「魔がさしたとは言えないな」
「むしろ。そうした下地があったからこそ」
「ああなってしまったか」
「そう言えるか」
「それにだ」
 ここでもう一人の名前が出るのだった。
「エリザベート様だが」
「あの方もな」
「何か浮世離れしているところがある」
「あれだけの美しさを持ちながら」
 太子の従姉である。その美しさはバイエルンにおいてよく知られている。ヴィテルスバッハ家の中でも際立った微動の持ち主なのだ。
 しかしなのだった。そのエリザベートもだったのだ。
「この世の摂理に何処か馴染まれていないな」
「そこが心配だな」
「そしてか」
「太子もか」
「そうなのだ。御心は確かにいい」
 これはローゼも認めるにやぶさかではなかった。
「邪なものは一切ない方だ」
「だがそれでいいというものではない」
「そういうことだな」
「つまりは」
「そうだ。その浮世離れしたところがだ」
 彼も言うのだった。このことをだ。
「それが殿下にとってよからぬことにならなければいいが」
「そうだな。しかしだ」
「君は殿下を大切に思っているのだな」
「それは事実だな」
「素晴しい資質を持っておられる」
 彼は太子が好きだった。教師として愛情も持っていた。心配をしているがそれも愛情あってのことだ。それも間違いのないことだ。
 しかしなのだった。だからこそだ。彼は太子のことが気になって仕方ないのだ。
 
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