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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第20-1話 新年魔法大会【スピードボード 其の二】

 
前書き
レンside 

 
 台から飛び降りる看守は皆笑って居た。寒いことを隠すためか、本当に楽しいのか。
 ただ、それの所為でシャッター音と黄色い歓声が、耳を劈く様な音量で響き渡っている。

 水面に近付くと、看守達はボードを水面に投げ、上手くそこに着地する。ボードを水面に固定して、一瞬だけ地面のようにしている。

 そして、着地した瞬間、水飛沫が舞った。

「熱い戦いが始まるぜぇええええ!!」


 水飛沫の中から素早く飛び出してきたのは、琴葉と青藍さんだけだった。


「ここで一位候補の二人が一気に飛び出たぁぁあああ!!」

 物凄いスピードで、最初の直線コースを抜ける。
 後ろでは、続々と他の看守達も水飛沫から飛び出して、二人を追っている。が、その間は二十メートル程開いてしまっている。


「まず最初の難関! 五連続カーブだぜぇぇえ!!」

 琴葉と青藍さんが若干速度を落として、カーブを曲がっていく。インサイドとアウトサイドを交代しながら、五連続カーブを軽々と、ミス無く抜けていく。
 琴葉も青藍さんも、ボードと脚を固定し、それを操作魔法と上半身で、上手く操作しているのだろう。前に進んだり、曲がったりする動きを、全て操作魔法のみでやっているとしたら、上手くカーブして、前に速く進む事も出来るはずだ。

「琴葉センパイも、海斗センパイも、難なく抜けたぜぇええ! くぅぅうう! かっこいいぜッ!!」

 琴葉も青藍さんも、綺麗な笑みを浮かべていて、その周りにはキラキラと光を反射する水がある。まるで、絵に描いたような感じ。
 チクリと胸が痛むが、それはスッと消えていった。

 すると、ジャンプ台の様なところの手前まで来る。
 そこで、琴葉と青嵐さんは一瞬、お互いを見た。


「負けないからッ!!」
「負けないかんな!!」


 二人の声が高らかに響き、二人はジャンプ台から飛び降りる。それにより歓声は音量を増す。コースの中で一番盛り上がる所なのだろう。
 特に特別なこと無く着水した二人は、速度を更に上げつつ二周目に入る。

「二周目、四周目は少しコースが変わるぜ! 最初の直線コースに、谷が現れるから、気を付けろよなぁぁぁあああ!!」

 全ての看守がジャンプ台を越えたとき、既に二人は谷の前に差し掛かっていた。
 だが―――


「簡単に抜けさせると思うなよ!!」

 橙条さんが二人に向かって魔法を発動させる。他の看守も同じ様に魔法を発動させる。
 動きを縛るための固定魔法を、しっかりと回避して、飛ばされてきた氷の刃や、風の刃を、プールの水を操り、障壁にして撃ち落とす。

 そして、二人は谷を越える。

「おぉぉおおお!! 阻害を受けながらも簡単に難関を越えていくぅううう!! 超cool!!」

 そう言えば、これは魔法の大会。こうやって魔法で戦う事が、本当の戦い方なのだろう。

 勢いに乗った二人は、更にスピードを上げ、五連続カーブへ突っ込んで行く。
 が―――


「っいしょっと!!」


 琴葉はその直前で壁に少しだけボードを乗せ、勢いのまま前に進む。上手く操作魔法を掛けたのか、ボードと琴葉は宙を舞い、カーブを全てショートカットしていく。
 会場がシンと静まり返り、そして一瞬で盛り上がった。
 ……チートだ。普通に跳んだだけでは、いくら直線コースからカーブに入るところと、カーブから出た後の直線コースが、見えるところにあったとしても、絶対に届かない。固定魔法で、ボードを体の一部として、操作魔法で、自分の体を操作すれば、もしかしたら行けるかもしれないが、少なくとも二十メートルはある。……チートだ。

「みっ、水についてないからセーフだぁぁああ!! 琴葉センパイすげぇぇええええ!!!!」

 琴葉が先頭に出ると、後ろに居る看守が、一斉に琴葉に魔法の照準を合わせる。
 次の瞬間には、実に様々な魔法が、琴葉の前に迫っていた。

 が、流石琴葉と言ったところか、無意識の内に水で障壁を作っていたのか、魔法は全て撃ち落とされた。
 その後も、何度も魔法は撃ち込まれるが、全て防ぎきり、琴葉は三周目に入っていた。


 
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