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この世の最後に

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第一章

                この世の最後に
 室生由紀夫と坂口雄大は今室生の神託があった津軽の大間にいた、そしてその大間の岸辺から二人で海を観ていたが。
 周りの雪も見てだ、室生は坂口に言った。
「北陸育ちの私でもな」
「ああ、寒いだぎゃな」 
 坂口はこう室生に言葉を返した。
「そうだぎゃな」
「それもかなりな」
「陸奥でもここは北の北だがや」
「しかも真冬だ」
「それならだがや」
「寒い筈だな」
「そうだがや、それでだがや」
 坂口は室生に寒さの中で提案した。
「これからだがや」
「早く宿に帰ってだな」
「鍋を囲んで酒を飲んでだぎゃ」
「風呂に入ってな」
「ゆっくりするだがや」
 これが坂口の提案だった。
「そうするだがや」
「それが出来ないのはわかっているな」
「それは夜の話だがや」
「昼はだ」
「おみゃあさんの神託が何かを聞くだがや」
「神託はこの街だ」 
 大間、二人が今いるこの街だというのだ。
「だからこそここまで来た」
「モンスターを倒しながらだがや」
「そうしてきた、ならばだ」
「これからだがや」
「共にだ」
「大間の街を歩くだぎゃな」
「雪が積もっている」
 浜辺も既に雪に覆われている、砂ではなく雪で白くなっている。
「それでもだ」
「歩くだぎゃな」
「滑りそうなら浮遊の術を使うことだ」
「ああ、雪の上を歩くから滑るだぎゃ」
「ならばだ」
「浮かんでいると滑らないぎゃ」
「そうすれば雪の上を歩くよりも速く進めるしな」
 このこともあってというのだ。
「いい、どうだ」
「わかったぎゃ、では厚着をして傘もさしてぎゃ」
 そうしてとだ、坂口は室生に応えた。
「街を歩いていくぎゃ」
「ではな」
 こう話してだ、そしてだった。
 二人で街を歩き回っていた、するとだった。
 街の病院で一人のホビットの少女が入院していた、少女は胸の病で入院していたが医師が言うにはだった。
「治るのですが」
「それでもか」
「はい、いつも病の為落ち込んでいて」
「病は気からという」
 室生は病院の中で医師に答えた。
「治る病でもな」
「そうです、心が弱っていますと」
「治るものも治らない」
「実際にです」
 まさにというのだ。
「病は少しずつ悪くなっていて」
「このままだとだな」
「助かる病だというのに」
「ならだ」 
 それならとだ、室生は医師に答えた。彼の隣には坂口がいる。
「ここは心をだ」
「彼女のですね」
「それを好転させる」
 落ち込んでいるそれをというのだ。
「そうしてだ」
「助けて頂けますか」
「そうする、落ち込んでいるのならだ」
 室生はさらに言った。
「笑顔にすればいい。笑う門には福来たるだ」 
 室生はこの言葉も出した。 
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